栄養不足が鬱病を悪化させる?知っておきたい「脳と心に良い食べ物」

食事が心身の健康に深く関わっているというのはご存知でしょうか。

健康な成人でも、多忙でしっかり食事がとれない日が続くと、心身に不調を来たす人がいるのは広く知られていますが、脳においても同じことです。

健康な体も、脳も、バランスのとれた栄養から成り立っているのです。逆に、適切な栄養をとることで回復を助けることがあります。

本記事では、鬱病の家族のサポートで悩んでいる方へ、鬱病治療と並行しておすすめしたい脳と心に良い食べ物について解説します。

鬱病治療と食べ物の関係性

まずは、鬱病治療と食べ物の関係性について、考えてみましょう。

鬱病は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで発症すると考えられています。

これらの神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)は、感情、意欲、睡眠などをコントロールする上で非常に重要です。そして、これらの神経伝達物質の合成には、様々な栄養素が不可欠であることが明らかになっています。

したがって、バランスの取れた食事は、心身の健康を維持し、鬱病の症状を軽減する助けとなります。

「これを食べると鬱病が治る」というものはありませんが、適切な栄養摂取は治療効果を高め、再発予防にも繋がる可能性があります。

鬱病患者の食事のポイント

鬱病患者の食事の、全体的なポイントをお伝えします。まずはここをおさえておきましょう。

1.腸内環境を整える

腸は「第二の脳」と呼ばれ、腸内細菌がセロトニンなどの神経伝達物質の合成に影響を与えます。発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌、漬物など)や食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、きのこ類、海藻類)を積極的に摂り、腸内環境を整えましょう。

2.規則正しい食事時間

決まった時間に食事を摂ることで、体内時計が整い睡眠の質の向上にも繋がります。無理のない範囲で、朝食、昼食、夕食を規則正しく摂ることを目指しましょう。

3.家族で一緒に食事を楽しむ

一緒に食卓を囲み、美味しい食事を共有することは、心の安定にも繋がります。また、家族でなるべく決まった時間に食事ができると良いでしょう。

4.鬱病に良い食べ物以外もバランスよく

特定の栄養素だけでなく、食事全体のバランスも非常に重要です。

鬱病の回復をサポートしてくれる食べ物リスト

鬱病の治療と並行して、鬱病の症状改善をサポートしてくれる食事が非常に重要になってきます。

鬱病に良いとされる食べ物を栄養素別に詳しく解説します。食品選びの参考にしてください。

気分を安定させてくれる「トリプトファン」を含む食べ物

必須アミノ酸の一つで、幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の分泌の材料となります。

セロトニンは、気分、睡眠、食欲、衝動性などを調整する役割を担っています。メラトニン(睡眠ホルモン)にも関与し、体内時計(概日リズム)を整える役目もあります。

多く含む食べ物

乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)、大豆製品(豆腐、納豆)、ナッツ類、種実類(カシューナッツ、アーモンド、ひまわりの種)、肉類(鶏むね肉、赤身肉)、バナナなど。

疲労感を軽減させてくれる「ビタミンB群」を含む食べ物

脳内の神経伝達物質の合成や代謝に不可欠な補酵素として働きます。セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの生成に直接関与しています。そのため、神経機能の維持、気分の安定、疲労感の軽減、うつ病症状の改善が期待されます。

栄養素多く含む食べ物
ビタミンB6マグロ、カツオなどの魚、鶏肉、バナナ、にんにく、パプリカなど
ビタミンB12貝類(しじみ、あさりなど)、魚類、肉類、乳製品など
葉酸緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス)、豆類、レバーなど

不安を軽減する「オメガ3脂肪酸」を含む食べ物

脳の細胞膜の主要な構成要素であり、神経細胞間の情報伝達をスムーズにします。特にDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、抗炎症作用や神経保護作用があり、気分の安定や不安の軽減、認知機能の改善、うつ病症状の緩和に役立つとされています。

鬱病の患者は脳内で炎症が起きているケースがあるため、この炎症を抑えることが症状緩和に繋がると考えられています。

多く含む食べ物

サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚、亜麻仁油、えごま油、チアシードなど

脳と心の健康を作る「ビタミンD」を含む食べ物

骨や筋肉の健康維持、カルシウム吸収の促進、免疫機能の調整を担い、感染症やアレルギー反応を抑制してくれます。脳の働きや気分の安定などにも関与しています。カルシウムと合わせてバランスよく取り入れたい栄養素です。

ビタミンDは、食べ物の他、日光を浴びることでも体内で作られます。

多く含む食品

きのこ類(しいたけ、きくらげ)、魚介類(サケ、イワシ、カツオ、サンマ)、魚卵(いくら・すじこ)、卵など

心を落ち着かせてくれる「ミネラル」を含む食べ物

神経の興奮を抑え、筋肉のリラックス効果をもたらしてくれるミネラル。マグネシウムはストレス軽減や不安の緩和、睡眠の質の改善に繋がり、うつ病や不安障害リスクの低減をサポートしてくれます。

亜鉛は神経伝達物質の代謝や免疫機能に関与し、脳の健康維持にも重要な役割を果たしています。亜鉛不足はうつ病のリスクを高める可能性が指摘されています。

栄養素多く含む食べ物
マグネシウム豆類、ナッツ類、種実類、緑黄色野菜(ほうれん草など)、海藻類、玄米など
亜鉛牡蠣、牛肉、豚肉、レバー、卵、ナッツ類など

意欲や活力を生み出す「鉄分」を含む食べ物

赤血球に含まれる、酸素を体中に運ぶヘモグロビンの構成要素「鉄分」。脳への酸素供給に不可欠です。

また、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成にも関与しています。

鉄分が不足することで、ヘモグロビンの活動が鈍くなり、全身に酸素が行き渡りづらくなり、様々な弊害をもたらします。

鉄分摂取は、疲労感の軽減、集中力の向上、意欲の改善が期待できます。また、鉄欠乏性貧血は、うつ病と似た症状(倦怠感、集中力低下など)を引き起こすことがあります。

多く含む食べ物

赤身肉、レバー、魚(カツオ、マグロなど)、ほうれん草、小松菜、大豆製品など

鬱病患者が避けるべき食べ物リスト

鬱病患者が避けるべき食べ物もあります。

体や脳に良い影響があまりないばかりか、悪い影響があるものもありますので、注意しましょう。

避けるべき食べ物リスト

避けるべき食べ物具体的な食品おすすめの食品
高GI値食品白米、白いパン、砂糖を多く含むお菓子玄米、全粒粉パンなど、血糖値が緩やかに上昇する低GI値食品
加工食品・ジャンクフードハンバーガー、フライドポテト、ピザ、スナック菓子、カップ麺、インスタント食品、揚げ物、過度な添加物食品、刺激物(激辛など)できるだけ、タンパク質やビタミン・ミネラル・食物繊維等が豊富な、加工されていない食材を選び、手作りの食事を心がける

※1:食後の血糖値を急激に上昇させるため、健康への影響が懸念される食品

不必要な添加物や不健康な油は、心身の不調を引き起こす原因となることがあります。できるだけ、自宅で自炊するのがおすすめです。

毎日の食事の支度は大変ですから、ある程度の加工食品を上手に取り入れても良いですが、毎日油っこいものや添加物たっぷりのものでは、鬱病の家族の心の安定には繋がりにくいです。

【ご家族へ】鬱病患者の食事で注意するポイント

鬱病患者の食事については、ご家族の協力なしには難しい面もあります。ぜひ以下の点に気を付けてください。

1.プレッシャーを与えない

「これを食べなさい」と強制するのではなく、「一緒に選んでみようか」「こんなものもあるよ」といった形で、選択肢を提示し患者の意思を尊重しましょう。無理に食べさせるのは禁物です。

2.小さな変化を褒める

食事に対する前向きな変化が見られたら、どんな小さなことでも褒めてあげましょう。それが鬱病患者の自信とモチベーションに繋がります。

3.専門家への相談

食事内容について疑問や不安があれば、医師や管理栄養士に相談しましょう。個々の状態に合わせたアドバイスを受けることができます。

食欲がなくても大丈夫!無理なく栄養を摂るヒント

鬱病の方によくみられる食欲不振。食欲がない時はどうすればよいか悩みますよね。ここではそのヒントをお伝えします。

調理の工夫や環境の工夫

手軽に摂れる食品を用意しておきましょう。食欲がない時は、無理せず手軽に摂れるもの(例えば、スムージー、スープ、ヨーグルトなどのど越しの良いもの、さっぱりしたもの)を勧めるのも良いでしょう。これらは調理が難しい時にも助かるアイテムです。

少しでも食べられるほうがいいですが、大事なことは食事が億劫で嫌な時間と思われないことです。食事は楽しくて安心できる時間と思ってもらう事が重要です。食卓や食事室の雰囲気や家族との団らんで、食べる喜びを感じられるような雰囲気作りを心がけましょう。

医師が処方する医療用サプリメントがおすすめ

どうしても食欲がない時に、栄養素を補給したい場合、サプリメントで補うのがおすすめです。

サプリメントは、ドラッグストアやネットショップで手に入る市販品ではなく、医師へ相談して処方してもらう医療用サプリメントがおすすめです。

医療用サプリメントであれば、患者の症状や体質に応じて、より適切に治療をサポートしてくれる栄養素を選択して処方してくれます。

医療用サプリメントは、サプリメント外来やサプリメント相談で手に入ります。

1人で抱え込まずに、鬱病患者を支える家族のコミュニティで情報交換を

鬱病患者をささえる家族も、日々大変な思いをされていることと思います。本人との関わり方など、悩むことが多いでしょう。

そんな時、一人で悩まずに、同じ悩みを持った人と励まし合い、相談し合う環境へ飛び込んでみてはいかがでしょうか。

日常の関わりや、困った事、食べ物の話、治療の話などなど、様々な情報交換ができて、悩んでいるのは自分一人ではないと知ることができて安心すると思います。

お住まいの地域での、自治体によるサポートや、鬱病患者家族の会もありますが、なかなか自宅から出られない方や、顔が見えるとかえって話しづらい方は、プライバシーが守られるオンライン疾患コミュニティがおすすめです。

鬱病の回復に、心と体を元気にしてくれる食べ物を積極的に摂ろう

鬱病と食べ物は密接に関係しています。

鬱病に良いとされる栄養素を、治療と並行してぜひ積極的に取り入れてほしいと思います。また、全体的にバランスの良い食事を意識し、食事時間を安心できて楽しい時間になるような雰囲気作りをしてみてください。

鬱病患者は、食欲不振に陥りがちです。食欲がない場合は、無理せず進めていきましょう。医療用サプリメントという選択肢もおすすめです。

とはいっても、鬱病患者をサポートする家族も、これらをプレッシャーに感じておしつぶされてしまっては、元も子もありません。

そういった情報交換ができて、アドバイスをもらったり励まし合ったりできる、コミュニティの利用はおすすめです。

1人で悩まないで、ぜひ、オンライン疾患コミュニティをご活用ください。