アトピー性皮膚炎は治らないのか?症状管理の最新ガイド

アトピー性皮膚炎の治療は、以前は症状に対する対症療法と、アレルゲンを遠ざけ保湿ケアをするといった治療方法でしたが、最近では症状をおさえる薬が開発されており、画期的に進歩しています。

本記事では、現代のアトピー性皮膚炎の治療は、炎症の原因にアプローチして、ほとんど症状が出ない状況も目指せることを解説します。

適切な治療で、生活向上を目指しましょう。

アトピー性皮膚炎は治らない?

アトピー性皮膚炎はそもそも治らないのでしょうか?

実は、症状が出ないように抑える治療で、ほぼ症状が出なくなり完全に克服する例もあります。

アトピー性皮膚炎の特徴

アトピー性皮膚炎とは、慢性的な炎症性皮膚疾患のことを言います。痒みを伴う発疹や乾燥肌が特徴です。

症状は顔、首、肘・膝の内側などに現れやすく、繰り返し発症します。皮膚が赤く腫れ、かさぶたやひび割れができることもあります。痒みが強く、掻くことで症状が悪化し、患部からの感染リスクが増します。

年齢によって湿疹の場所や特徴に違いがあります。年代別の特徴的な部位については、下記の表に示しています。

時期表れる部位
乳児期(2歳未満)ほお、ひたい、頭皮、耳や首の後ろなど。
次第に体や手足に降りていく
幼・小児期(2歳~12歳)肘や膝の内側、手首、足首など関節の曲がる部分
思春期・成人期(12歳以上)肘や膝の内側、首や顔、手、足

アトピー性皮膚炎を引き起こす原因

アトピー性皮膚炎を引き起こす原因は、完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています。

1.遺伝的要因

家族にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患がある場合、アトピー性皮膚炎を発症しやすい傾向があります。

2.免疫系の異常

免疫系が過剰に反応し、皮膚に炎症を引き起こします。特定のアレルゲンや刺激に対して、免疫系が過敏に反応することが原因とされています。

3.皮膚バリア機能の低下

皮膚のバリア機能が弱くなることで、外部からのアレルゲンや刺激物が皮膚に入りやすくなり、炎症を引き起こします。皮膚が乾燥しやすく、湿疹が起こりやすいです。

4.環境要因

乾燥した気候、温度の変化、汚染、ダニやペットの毛などの環境要因が、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させることがあります。

5.ストレス

精神的なストレスがアトピー性皮膚炎の症状を悪化させることがあります。ストレスが免疫系に影響を与え、炎症を起こします。

6.食生活

特定の食品がアトピー性皮膚炎の悪化に関与することがあります。食物アレルギーもしくは栄養バランスや食習慣等が関与している可能性があります。

これらの要因が複合的に作用してアトピー性皮膚炎を引き起こすと考えられています。

アトピー性皮膚炎の治療は日進月歩

一昔前は、症状を緩和させる対処療法と保湿ケアしか治療方法はありませんでした。一時的に症状が治まっても、また何かのきっかけで症状を繰り返しました。

しかし10年程前から、症状がいったん治まっても治療を続ける「プロアクティブ療法」が主流となっています。間隔を空けて量を減らしながらステロイド薬などを用います。

これにより、症状が再び現れるのを未然に防ぐことが可能です。

症状が落ち着いて安定している状態の維持が出来ているという研究報告もあるようです。

現代の医療では、様々な新薬も開発され、炎症の原因に直接アプローチする方法もあり、アトピー性皮膚炎は治る、という希望があります。

アトピー性皮膚炎の症状を繰り返す理由

アトピー性皮膚炎が、症状がいったん良くなってもまた繰り返したり、悪化したりする主な理由をおさえておきましょう。

皮膚バリアの機能低下

人間の体は、皮膚のバリア機能によって、多くの刺激から守られています。このバリア機能が低下すると、外部からの刺激物やアレルゲン、微生物が皮膚に侵入しやすくなります。

アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚のバリア機能が弱いため、外部からの刺激物やアレルゲンが皮膚に侵入しやすくなり、炎症やかゆみを引き起こします。

また、皮膚の水分が蒸発しやすくなり、乾燥やひび割れをおこしアトピー性皮膚炎の症状を繰り返します。

アレルゲンとの接触

アレルゲンや刺激物との接触を避けることが難しい場合、再発のリスクが高まります。

特定のアレルゲン(ダニ、ペットの毛、花粉、カビ、特定の食品など)が引き金となって免疫反応を引き起こし、炎症を促進させます。

なるべくアレルゲンの接触をさける、除去するなどの努力をしますが、例えば香水やスプレー、化学物質などに反応する場合等、集団生活の中で予期せず接触を避けられない場合があります。

不適切なスキンケアと生活習慣

皮膚を適切に保湿・保護しないことや、生活習慣が再発の原因になることがあります。

適切でないスキンケアや生活習慣が、皮膚の状態を悪化させ、アトピー性皮膚炎の症状を繰り返し引き起こす原因となります。

具体的には、以下のようなことが考えられます。

・強い洗剤や刺激のある化粧品など、肌に合わないものを使用することで皮膚にダメージを与えます。

・保湿ケア不足で、肌が乾燥して皮膚のバリア機能を低下させます。

・長時間の入浴、一日に何度もお風呂に入る、何度も洗う等の過度な入浴が、皮膚の天然の保湿成分や油分を失い、皮膚の乾燥を招きます。

・生活環境(湿度、温度)が皮膚にストレスを与えます。

・不適切な衣類(化学繊維系など)が皮膚の乾燥や炎症を引き起こします。

ストレス

精神的なストレスや不安が、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる要因となります。ストレスはホルモンバランスを乱し、免疫系に影響を与え、炎症反応を促進します。

また、睡眠不足や生活リズムの乱れも症状を悪化させます。

強い痒みにより、掻き壊しのリスクが高まるとともに、さらに痒くて眠れない等悪循環に陥ります。

不安やストレスを軽減させるためには、リラックスできる時間を持つことも大切ですが、悪循環を断ち切るために、痒みを抑える工夫と治療がいかに大切かということです。

アトピー性皮膚炎の主な治療方法

アトピー性皮膚炎の治療は、症状を静める対処療法と、症状を起こさないための治療、そしてアレルゲンの接触を避け、肌を保湿する3本柱が非常に大切です。

症状の重さや患者の年齢、ライフスタイルに応じて異なりますが、一般的な治療方法は下記の通りです。

アトピー性皮膚炎の症状を鎮める治療

強い痒み、炎症を鎮める対処療法です。

ステロイド外用薬:

ステロイドは、炎症や痒みを素早く抑える効果があります。強さに応じてランクがあり、症状に応じて医師が適切な強度の薬を選択します。長期間常用することで心配されるリスクは、医師の指導のもと症状を管理し、適切なランクの薬を適切な頻度や量で使用していくことで減少できます。

きちんと用法用量を守って使用することが重要です。

カルシニューリン阻害薬(タクロリムス軟膏):

ステロイド外用薬と同様に、炎症を抑える効果があります。改善に時間がかかることから、ステロイドと併用する場合が多く、ステロイドの副作用が気になる部位や顔・首などのデリケートな部位に適しています。長期間の使用が可能で、副作用が少ないです。

抗ヒスタミン薬:

痒みを抑えるために使用されます。飲み薬または外用薬として処方されます。主に強い痒みがある場合に、掻き壊しを防ぐことを目的として用いられます。

アトピー性皮膚炎の症状が出ないように抑える治療

痒みや皮膚の炎症が生じる前に抑えこむ治療です。

前述した「プロアクティブ療法」が、症状が出ないように抑える治療にあたります。

長期的な低用量ステロイド外用薬:

症状が落ち着いた後も、再発予防のために低用量のステロイド外用薬を週に数回使用します。経過を見ながら頻度や用量を減らします。

抗体医薬品(⽣物学的製剤):

痒みや炎症が生じる前に抑えこむ薬と言えます。皮膚の痒みや炎症を発生・悪化させる物質(炎症性サイトカイン)に直接作用します。

医療機関で注射してもらいます。または、医師の指導により⾃宅で⾃⼰注射することも可能です。

スキンケアに関する治療

自宅でしっかり保湿ケアをすることは、アトピー性皮膚炎の重要な治療のひとつです。

乾燥を防ぐための保湿剤が処方され、定期的に使用します。入浴後や肌が乾燥しやすい季節には特に重要です。

軟膏・クリーム・ローション・乳液・ジェルのタイプがあり、成分はセラミド・ヒアルロン酸・尿素・グリセリンなどを含む保湿剤が多いです。

市販品は、石油系などの刺激物が多く含まれており、肌に合わない場合が多いので、処方薬を使用しましょう。

治らないアトピー性皮膚炎の症状を緩和する自宅でのケア方法

治らないアトピー性皮膚炎の症状を和らげるために、自宅でできるセルフケアの方法を解説します。ぜひ実践してみてください。

皮膚を清潔に保ち、保湿する

皮膚を清潔に保つため、毎日しっかり入浴またはシャワーをします。汗ばむ季節は朝と夜の2回でも良いでしょう。体温があがると痒くなるため、熱いお湯よりぬるま湯がおすすめです。

入浴やシャワーで汗や汚れを落とした後は、すぐに保湿剤を塗りましょう。

石けんはよく泡立てて、泡で優しく包むようにします。強くこすったり、過度に洗ったりすると、皮膚が持つ自然の油分やバリアが失われるからです。

また、石鹸が残っていると刺激になり悪化することがあるため、しっかりすすぎます。

石鹸やボディーソープは、肌に優しいものを選びます。ボディーソープよりも石鹸の方が刺激は弱いのでおすすめです。

つらい痒みや掻き壊しへの対処法

痒みは、体が温まった時に生じやすいので、お風呂の温度をぬるま湯に保つ、夏場はシャワーのみにするなどの工夫が必要です。

また、強い痒みは、冷たいタオルや冷却ジェルなどを使って冷やすと和らぎます。

掻き壊しを防ぐためには爪のケアも大切です。爪を短く切り丸めて整えることで、寝ている時などに無意識に掻いてしまっても、掻き壊しによる皮膚の傷を最小限に抑えることが出来ます。

アレルゲンを遠ざける

原因となっているアレルゲンを極力避けます。

食物アレルギーが関与している場合は、その食品は除去します。

ハウスダスト・ダニ・カビ・花粉・化学物質などが原因と考えられる場合は極力それらと接触しないようにします。

石油系化学物質等が関与している場合、洗剤やシャンプー・ボディーソープ等は、成分を確認しなるべく低刺激のものを選びます。

化学繊維が刺激となる場合もあるので、寝具や服の素材にも気をつけます。

日常生活と食習慣の見直し

規則正しい生活リズムと、栄養バランスのとれた食事が重要です。

睡眠不足は、症状を悪化させる恐れがあります。しかし痒くて眠れないからストレスになる、そのため症状がさらに悪化するという悪循環もあります。強い痒みを抑える薬等に頼りながら、寝る時は室温や湿度に気を配ります。加湿器や除湿器を使って室内の湿度を40-60%程度に保ち、乾燥を防ぎます。

食事は、健やかな皮膚を作る成分(ビタミン)等を積極的に摂取し、添加物や残農薬の疑わしいものをできる限り避けましょう。

アトピー性皮膚炎はどこを受診すればいいの? 

アトピー性皮膚炎の場合、何科を受診すれば良いのか、おさえておきましょう。

皮膚科、または内科、アレルギー科を受診する

皮膚科だけでなく、内科・アレルギー科でも対応します。お子様の場合は小児科でも良いでしょう。

まずは主治医やすぐに受診できそうな医療機関へ受診し、必要であればアレルギー科を受診するのも方法のひとつです。

アトピー性皮膚炎は、一時的な対処だけでなく、症状を起こさないように継続的な治療をしていくうえで、アレルギーの専門医師が安心だと考える方も少なくないでしょう。

オンラインクリニックを受診する

通常の病院・クリニックのオンライン診療窓口か、またはオンライン専用クリニックの皮膚科やアレルギー科に対応しているところで受診できます。なかなか通院できない事情がある時はこちらが便利です。

処方薬はご自宅へ郵送か、お住まいの近くの薬局薬店で、お受け取りいただけます。

オンラインクリニックは、ビデオ通話で受診しますが、患部をあらかじめスマホ等で撮影しておくと症状が良くわかり、スムーズでしょう。

治らないアトピー性皮膚炎がつらいなら、おうち病院「オンライン診療」

治らないアトピー性皮膚炎はとてもつらいでしょう。しかし最近の治療では、症状を静めた後、症状を起こさないようにする治療も進みました。

医師によってはステロイド以外の方法を使うなど、様々な考えがあります。現在の治療で満足な結果を得られない場合、別のアプローチを検討しても良いかもしれません。

セカンドオピニオンとしてお気軽にご相談ください。

治らないアトピー性皮膚炎がつらいなら、おうち病院「オンライン診療」でご相談ください。

症状がつらいのに、多忙で時間が取れない時や近所に受診できる病院がない時、オンラインなら、スキマ時間で自宅から受診できます。そのため薬が切れてしまう心配もありません。

アトピー性皮膚炎が治らない時は、1人で悩まず適切な医療サポートを

アトピー性皮膚炎は、ほとんど症状が出ない状態も目指せます。

症状がなかなか治らないなら、1人で悩まず適切な治療を受けましょう。

アトピー性皮膚炎は、一見良くなっても炎症が収まっているだけで、治っていない場合が多く、また何かの刺激でぶり返します。

再び症状が出て悪化するのを防ぐには、継続的な治療をしましょう。