認知症の方が言うことを聞かない場合はどうすべき?原因や対処法を解説

認知症の方が言うことを聞かないことには理由があります。理由を知って適切に対処することで、円滑にコミュニケーションを取れるようになるでしょう。本記事では、認知症の方が言うことを聞かない原因や対処法について詳しく紹介します。

目次

認知症の方が言うことを聞かない場合、どうすればよいかわからず大きなストレスを感じるでしょう。しかし、言うことを聞かないからといって叱ったりストレスを与えたりしても、問題は解決しません。

そこで本記事では、認知症の方が言うことを聞かない原因や対処法について詳しく紹介します。

認知症の方が言うことを聞かない原因

認知症の方が言うことを聞かない原因がわからないうちは、悩みは解消しません。

もちろん原因を解消できるわけではありませんが、原因を知り当てはめることで、「認知症だから仕方がない」という心の余裕を少なからず持てるようになる可能性があります。

主に以下のような原因がありますので、把握しておきましょう。

・記憶障害

・見当識障害

・実行機能障害

・失行

・失認

・理解力・判断力の低下

・体調不良

それぞれについて解説します。

記憶障害

認知症の方が言うことを聞かない原因の1つは、記憶障害です。認知症の症状が進むと、過去の経験や出来事に関する記憶が次第に薄れていきます。自分の予定やルーティンを思い出せなかったり、指示や指導を理解できなかったりすることで、言うことを聞かないように見えるかもしれません。

しかし、認知症の方はその場面や状況に応じて対応する能力を持っているため、カレンダーやスケジュール帳を使って日常の予定を確認するように促すことで、状況が改善する可能性があります。

見当識障害

見当識障害は、時間や場所など、自分が置かれている状況を正確に認識することが難しくなるものです。そのため、自分が若かった頃の出来事を現在のものと勘違いして話すことがあります。

また、子どもはまだ幼いと思っているために、成長した子どもを見ても誰だかわからない場合もあるでしょう。

見当識障害によって、認知症の方は時間や場所などの状況を正確に認識することが難しくなるため、言われた指示や要求が現在の状況や状態に合っていないと認識し、それに従わないことがあります。

実行機能障害

実行機能障害は、複数の情報を処理する能力が低下し、料理や買い物、洗濯機の操作などを計画どおりに行うことが困難になるものです。

情報を適切に処理し、目標に向かって計画的に行動する能力が低下するため、言われた指示や要求を理解することが難しくなり、それに従うことが困難になる場合があります。

失行

失行とは、機能障害がないにもかかわらず、日常的に行っていた動作や物の操作が困難になることです。例えば、お茶を入れる際の手順や服を着る際の順序など、以前は自然に行っていた行動がうまくできなくなります。

そのため、言われたことを実行することが難しくなり、介護者が言うことを聞かないと感じる場合があります。

失認

失認とは、自分の身体の状態や周囲の物の認識が困難になることです。例えば、自分の身体の半分や周囲の空間の一部を認識できなくなることで、物事を適切に認識したり理解したりすることが難しくなります。

言われたことを適切に理解できないために、介護者が言うことを聞かなくなったと感じる場合があります。

理解力・判断力の低下

認知症による理解力・判断力の低下によって、複雑な話や情報の処理が困難になります。抽象的や複雑な指示に対して適切な理解や判断ができなくなるため、介護者が言うことを聞かないと感じることがあります。

体調不良

認知症の方が体調不良の場合、痛みや不快な感覚、倦怠感などによって集中力が低下し、指示を正確に捉えることが難しくなります。

そのため、介護者は言うことを聞かなくなったと感じることがあります。

認知症の方が言うことを聞かない場合のNG対応

認知症の方が言うことを聞かなくなったと感じたとき、つい叱ったり罰を与えたりしがちではないでしょうか。このような行為によって本人との信頼関係が崩れたり、認知症が悪化したりする可能性があります。

認知症の方が言うことを聞かない場合のNGな対応は以下の3点です。

・叱る

・罰を与える

・介護をしない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

叱る

認知症の方を頭ごなしに叱りつけてはいけません。 認知症の方は、叱られると怒りや悲しみなどのネガティブな感情を抱くことがあります。叱られたことや誤った叱り方に対する不満は、介護者との信頼関係に悪影響を与えます。

信頼関係が損なわれると、コミュニケーションが困難になったり介護に対して非協力的になったりして、介護の質の悪化や介護者の負担増加につながる可能性があります。

罰を与える

罰を与えると、本人に大きなストレスを与える恐れがあります。認知症が悪化するほか、情緒が安定しづらくなることによってコミュニケーションに支障をきたすことも考えられます。

また、介護者と本人の信頼関係が崩れ、介護に対して非協力的な態度を取るようになる可能性もあります。

介護をしない

認知症の方は、放置や無視されると孤独感を強く感じ、大きなストレスを感じます。また、介護されなければ生きてはいけないと感じ、強い絶望感を覚える可能性もあります。さらに、自己肯定感を失うことでうつ病や不安症状が生じることも考えられます。

言うことを聞かない認知症の方との接し方

認知症の方が言うことを聞かないと感じたときは、次のように接してみましょう。

・相手のペースに合わせてみる

・相手の目を見てしっかりと相づちを打つ

・聞き取りやすい声ではっきりと話す

相手のペースに合わせてみる

まずは、相手のペースに合わせて会話しましょう。認知症の方は、自分のペースで行動や会話を進めることで安心感を覚えるため、結果的にコミュニケーションが円滑になります。

例えば、認知症の方が自分の思いや意見を伝えやすくなるでしょう。介護者としても、本人が何を求めているのかをスムーズに理解できるようになるため、介護の負担軽減につながります。

反対に、本人にとって無理なスピードやタイミングでのコミュニケーションは強いストレスを与えます。ゆっくり話す、一度に多くの情報を伝えない、相手の反応をしっかり見るといったことを心がけましょう。

相手の目を見てしっかりと相づちを打つ

相手の目を見てしっかりと相づちを打つことは、認知症の方とのコミュニケーションにおいて大切なことです。認知症の方は集中力が低下しているため、目を見ずに会話をすると内容をスムーズに理解できません。

相手の目を見ることで話に集中しやすくなり、会話の内容のスムーズな理解につながります。また、目を見て話を聞くことで、本人は自分が大切にされていると感じ、安心感や信頼感を覚えるでしょう。

聞き取りやすい声ではっきりと話す

認知症の方は集中力が低下しているため、言葉をうまく聞き取れない場合があります。はっきりとした声で話すことで、1回で聞き取れるようになります。加齢による聴力の低下もある場合は、なおのこと聞き取りやすい声で伝えることが重要です。

騒々しい環境や多くの人が行き交う場所では、より大きくはっきりと発音しましょう。また、明るいトーンで話すことで、会話の雰囲気が和やかになり、コミュニケーションに対して前向きになれる場合もあります。

介護に大きなストレスを感じているときの対処法

介護者は、言うことを聞かない人に対して大きなストレスを感じるものでしょう。このような場合、放置すると介護を投げ出してしまったり、介護の質が大きく低下したりする恐れがあります。責任感が強い人は、自分1人で何とかしようと思うことで、ストレスを溜めてしまいがちです。

介護に大きなストレスを感じている場合は次のように対処しましょう。

・言うことを聞かないことを重く受け止めすぎない

・周りの人と情報を共有する

・介護サービスを利用して介護者の負担を減らす

言うことを聞かないことを重く受け止めすぎない

認知症の方が言うことを聞かない状況が続く限り、介護者が大きなストレスを受け続けます。ある日急に言うことを聞くようになるとは考えにくいため、このまま介護を続けられるのか不安に感じるでしょう。

認知症の方が言うことを聞かないのは症状によって起きているものであり、個人の性格によるものではありません。介護者は過度に責任を感じないようにするとともに、言うことを聞かない状況を重く受け止めすぎないことが大切です。

周りの人と情報を共有する

介護による精神的な負担を軽減するために、周りの人と情報を共有することが重要です。家族や友人、専門家などに相談するだけでも気持ちが楽になることもあります。専門家から具体的なアドバイスを受けたり、同じ悩みを持つ人と情報交換したりしましょう。

オンラインコミュニティや認知症介護をしている人の集まりなどに参加することも有効です。お互いに励まし合ったり共感し合ったりすると、精神的なストレスが和らぎます。また、経験に基づいた解決策の提案を受けた場合、それによって認知症の方が言うことを聞くようになる可能性もあります。

介護サービスを利用して介護者の負担を減らす

認知症の方が言うことを聞かない場合、強いストレスを感じることで介護の質が落ちる可能性があります。まずは、介護サービスを利用して自身の負担を減らしましょう。

入所せず自宅で介護する場合に利用できるサービスは次のとおりです。

介護サービスの利用は、介護者の負担を軽減するとともに認知症の方のより良い生活を実現するためのものです。他人を頼ってはいけないと思うのではなく、自身と認知症の方のより良い未来のために必要なものと考え、積極的に利用することをおすすめします。

認知症介護の悩みは、同じ悩みを持つ人に相談するのがおすすめ

認知症の方の介護は、ただでさえ大変であるのに、言うことを聞いてくれないようでは強い不安やストレスを感じるでしょう。まずは原因を理解したうえで、適切に対応することが大切です。また、自身のケアも大切にして、積極的に介護サービスを利用してください。

同じ悩みを抱える人との交流や情報交換も積極的に行い、孤独感をなるべく減らすことも重要です。

clilaコミュニティ」は、認知症の方の介護について同じ悩みを持つ人と情報交換したり悩みを共有したりできるネットコミュニティです。また、専門家の投稿もチェックして、認知症介護における知識も習得できます。

介護が忙しくて集まりに参加できない人も、ネットコミュニティであれば都合がよいときに利用できます。「clilaコミュニティ」について、この機会にぜひチェックしてください。