アトピー性皮膚炎の塗り薬とは?飲み薬との違いや使用方法

アトピー性皮膚炎と診断された際は、治療方針を確認のうえで使用する塗り薬について理解することが大切です。中でもステロイド外用剤は、アトピー性皮膚炎の治療の中心となる塗り薬のため、正しい知識を習得しておく必要があります。 本記事では、アトピー性皮膚炎で使用する塗り薬の種類や飲み薬との違い、使用方法などについて詳しく解説します。

目次

アトピー性皮膚炎と診断された際は、治療方針を確認のうえで使用する塗り薬について理解することが大切です。中でもステロイド外用剤は、アトピー性皮膚炎の治療の中心となる塗り薬のため、正しい知識を習得しておく必要があります。

本記事では、アトピー性皮膚炎で使用する塗り薬の種類や飲み薬との違い、使用方法などについて詳しく解説します。

アトピー性皮膚炎の治療で使用する塗り薬

アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用剤を中心としつつ必要に応じて複数の塗り薬を使用します。それぞれの薬に期待できる効果やメカニズム、副作用などについて詳しく見ていきましょう。

ステロイド外用剤

アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用剤で炎症をいかに早く抑えるかが重要です。炎症を放置すると悪化し、長期的に症状が続く可能性が高まります。ステロイド外用剤には、炎症を促す物質の生産を抑えたり、炎症反応に関わる細胞の増殖を抑えたりすることで、炎症を鎮める効果が期待できます。

ステロイド外用薬にはⅠからⅤまでの5つのランクがあり、症状の重さや箇所に応じて使い分けます。

ステロイドの強さの分類は以下のとおりです。

・Ⅰ:Weak(弱い)

・Ⅱ:Medium(普通)

・Ⅲ:Strong(強い)

・Ⅳ:Very strong(とても強い)

・Ⅴ:Strongest(最も強い)

ステロイド外用剤の副作用は、塗ったところの毛が太くなる、毛細血管が広がって赤くなる、皮膚感染症のリスク増加などです。強いステロイド外用剤でも、医師の指示に従って使用すれば、副作用の心配はほとんどありません。

タクロリムス軟膏

タクロリムス軟膏は、アレルギーによる免疫反応を抑える抗炎症作用を持つ塗り薬です。アトピー性皮膚炎による赤みやかゆみを軽減します。ステロイド外用剤は、皮膚が薄い顔や首に使用すると副作用が現れやすい一方で、タクロリムス軟膏はそのような副作用はありません。

ステロイド外用剤と比べて改善に時間がかかることに加え、塗った後は3~4日ほどほてりや軽いかゆみなどが現れます。

非ステロイド系抗炎症剤

非ステロイド系抗炎症剤とは、ステロイドを使用しない抗炎症剤のことです。ステロイド外用剤とタクロリムス軟膏を中心としつつ、さまざまな非ステロイド外用剤が選択肢となります。

日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」では、以下に該当する薬を非ステロイド系抗炎症剤と定めています。

「アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジン産生を抑制することで抗炎症作用を示す薬剤」

ステロイド外用剤と比べて抗炎症効果が低く、欧米においてはガイドラインで治療薬として定められていません。そのため、特段の事情がある場合を除き、タクロリムス軟膏を除く非ステロイド系抗炎症剤は使用しないとされています。

ホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4阻害薬)

ホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4阻害薬)は、PDE4と呼ばれる酵素の活性を阻害することで、炎症を鎮める効果が現れる塗り薬です。ステロイド外用剤は特定の部位や長期使用に制約がありますが、PDE4阻害薬は特に制約がありません。

PDE4阻害薬のジファミラスト(モイゼルト軟膏)は、軽症(軽度の赤みや乾燥、フケのようなものがみられる)から中等症(強い炎症を伴う赤みや乾燥、フケのようなものなどが体表面積の10%未満)のアトピー性皮膚炎の患者に対する有効性と安全性が確認されています。副作用は、毛穴の炎症やかゆみなどです。

保湿剤

保湿剤は、肌に水分や油分を与えたり水分や油分の蒸発を防いだりするものです。アトピー性皮膚炎の患者は肌のバリア機能が低いため、保湿剤でバリア機能を補って炎症の再燃を防ぐ必要があります。

ステロイド外用剤をはじめとする抗炎症剤によって炎症を改善し、保湿剤で炎症の再燃や新たな炎症を防ぐのがアトピー性皮膚炎の基本的な治療方針です。保湿剤には、医師の処方が必要なものと市販薬があります。有効成分は共通しているものの、添加物に違いがみられる場合もあるため、市販薬を自分で選ぶのが不安な場合は医師に処方してもらうのが確実です。

また、バリア機能が低下している状態では、香料やアルコール、着色料などが刺激になることがあるため、なるべくこれらが含まれていないものを選びましょう。

アトピー性皮膚炎の塗り薬と飲み薬の違い

アトピー性皮膚炎では、塗り薬を中心に使用します。飲み薬を使用するのは、かゆみによってかきむしることで症状が悪化する恐れがあるときです。

かゆみを抑える飲み薬には、抗ヒスタミン剤があります。かゆみを引き起こすヒスタミンを抑えることで、かゆみの改善や予防ができます。ヒスタミン剤にはさまざまな種類があり、全く効果が現れないものもあるため、いくつか試すことになるケースが多いでしょう。

また、重症(強い炎症を伴う赤みや乾燥、フケのようなものなどが体表面積の30%以上)のアトピー性皮膚炎には、シクロスポリンという免疫抑制剤を使用する場合があります。免疫反応を抑えることで、かゆみを速やかに抑えます。ただし、長期間の使用は腎機能低下や高血圧など重篤な副作用のリスクが高まるため、通常は8~12週間程度のみ服用します。

アトピー性皮膚炎における塗り薬の使用のポイント

アトピー性皮膚炎は、塗り薬を正しく使用することで改善が期待できます。次のポイントを押さえて正しく使いましょう。

ステロイド外用剤で炎症を抑えることが基本

アトピー性皮膚炎の症状がある箇所には、ステロイド外用剤を使用します。副作用を懸念して薄く塗ったり、塗る頻度を独断で減らしたりする人もいますが、炎症が鎮まらないことでかえって長期間使用せざるを得なくなり、副作用のリスクが高まります。

正しく使用することで副作用を最小限に抑えることが可能です。

保湿剤で皮膚のバリア機能を高めて刺激を抑える

アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能が低下していることで、ハウスダストや花粉、その他のアレルゲンなどによって炎症が起こりやすくなっている状態です。そのため、どれだけステロイド外用剤で炎症を抑えても、またすぐに新たな炎症が起きてしまいます。

ステロイド外用剤で炎症を抑えた後は、保湿剤で肌のバリア機能を高めて新たな炎症を防ぎましょう。

必要に応じて飲み薬を併用する

アトピー性皮膚炎は、塗り薬だけでコントロールできる場合もあります。しかし、かゆみが起きている場合は無意識にかきむしって症状を悪化させる恐れがあるため、抗ヒスタミン剤を飲むことが大切です。

症状に応じて飲み薬を使用する必要があるかどうかが異なるため、主治医の指示に従いましょう。

アトピー性皮膚炎の塗り薬の塗り方

ステロイド外用剤を正しく塗らなければ、十分な効果は期待できません。ステロイド外用剤は、人差し指の先端から第一関節ぐらいまでの量をとり、Strong以上の強さのものは1日1回、Medium以下のものは1日2回を目安にたっぷりと塗りましょう。

主治医から、処方されたステロイド外用剤に応じて、正しい塗り方を教えてもらうことをおすすめします。

忙しくて受診できない方には、おうち病院「オンライン診療」がおすすめ

アトピー性皮膚炎の疑いがあるものの、忙しくて受診できない方には、おうち病院「オンライン診療」がおすすめです。アトピー性皮膚炎の診察をオンラインで受けることができます。さらに、塗り薬や飲み薬を自宅から近い薬局で受け取ることも可能です。

アトピー性皮膚炎は放置すると悪化する恐れがあるため、「オンライン診療」をうまく活用しましょう。