認知症の末期はどのような症状・特徴がある?家族が取るべき対応や対策についても解説

家族が認知症になると、「将来どうなってしまうのだろう」と不安になってしまうものです。 認知症には進行段階があり、末期になると日常生活に必要な動作がほとんど行えなくなります。そのため、介護をするご家族の負担も大きくなってしまいます。「認知症の末期はどんな症状がある?」「どういう対応・対策を取るべき?」そうした不安や疑問を感じる方は多いことでしょう。 今回は、末期を含めた認知症の進行段階ごとの症状、認知症末期の特徴、認知症の種類ごとの進行スピード、認知症末期におけるご家族の対応や、事前に取っておきたい対策について解説します。

目次

家族が認知症になると、「将来どうなってしまうのだろう」と不安になってしまうものです。

認知症には進行段階があり、末期になると日常生活に必要な動作がほとんど行えなくなります。そのため、介護をするご家族の負担も大きくなってしまいます。「認知症の末期はどんな症状がある?」「どういう対応・対策を取るべき?」そうした不安や疑問を感じる方は多いことでしょう。

今回は、末期を含めた認知症の進行段階ごとの症状、認知症末期の特徴、認知症の種類ごとの進行スピード、認知症末期におけるご家族の対応や、事前に取っておきたい対策について解説します。

認知症の進行段階と末期の症状

認知症は、その進行具合に応じて、「前兆期」「初期」「中期」「末期」の4段階に分類できます。

それぞれの段階でどのような症状があるのかを理解しておけば、適切な対応をしやすくなります。また、あらかじめ把握しておくことで、ご家族も将来どのようなサポートをしていくべきか考える手助けにもなることでしょう。

以下で、認知症の各進行段階の特徴や症状について解説します。

前兆期

軽度認知障害とも呼ばれる段階で、物忘れしやすくなったり不安になりやすくなったりといった症状がみられるようになります。以降の段階のように、日常生活に支障をきたすほどの明らかな認知障害ではありません。

たとえば、「お父さん、また◯◯忘れているよ」「あぁそうか、ごめん」といったように、ありふれた会話で流れてしまうほど軽微なものです。

前兆である軽度認知障害は、認知症の初期症状が出る10年くらい前からその兆候がみられることもあります。早期に気づいて速やかに治療に移行できれば、進行を緩やかにすることもできます。「最近物忘れが激しい」そんな些細なことでも、気にしてみてください。

初期

認知症の発症から数年経過のタイミングで、初期の症状が出始めます。物忘れだけでなく、見当識障害もみられるようになります。

たとえば、「日時を理解できない」「今いる場所がわからない」といった症状が出始めるのが、認知症初期の特徴です。

認知症の初期に入ると、前兆期よりもできないことが増えて、日常生活に支障が出始めます。見当識障害によって徘徊後に行方不明になるリスクも出始めるタイミングです。できないことが増えることで自信を失ってしまい、うつ状態になってしまうケースもあります。

中期

認知症の中期になると、認知機能の低下がさらに進みます。初期のころよりもできることがさらに少なくなり、1人での生活も難しくなるのがこのタイミングです。

たとえば、着替えや食事ができない、買い物に行けない、入浴が難しいなどの状態になります。

記憶障害もさらに進み、物忘れでは片付けられないような記憶の抜け落ちが起きるようになります。たとえば、お昼を食べたのに「お昼はまだ?」と言ったり、財布をどこにしまったかわからなくなって「財布が盗まれた」と言ったりするのは、中期では起こり得る症状です。

周辺症状もよりみられるようになり、たとえば、妄想や作り話をしたり、急に暴言を言ったりすることもあります。介護をするご家族にとっては、つらく大変な時期です。

末期

認知症の末期になると、失語や運動・歩行障害などの症状が出るようになります。嚥下障害、失禁といった症状も出ることがあり、つきっきりの介護が必要になる時期です。

身体を思うように動かせないことに加え、意欲が低下しやすくなることから、ベッドで過ごす時間が増え始めます。寝たきりになりやすいのもこのタイミングです。

認知機能の低下が著しく、人によっては家族の顔や名前も認識できなくなるかもしれません。意識の混濁も起こりやすく、意思疎通もしにくくなってきます。

認知症末期の特徴

認知症末期になると、記憶障害や判断力の低下などが深刻化して、さまざまな症状が出るようになります。認知症末期にはどのような特徴があり、どのような症状が出るのか解説します。

意思疎通が困難になる

記憶力や判断力が著しく低下し、失語症状もより顕著になります。また、意欲や自発性が薄れることで周囲への関心がなくなってきます。

そのため、話しかけても反応がなく、コミュニケーションを取るのが困難になりやすいです。表情もほとんど出なくなってしまい、どのような気持ちなのか、何をして欲しいのかもわかりにくくなります。

初期から中期では、記憶障害や周辺症状などの影響により、同じことを何度も繰り返して話すことがあります。それはそれで、介護をするご家族には負担になることもありますが、意思疎通がほぼできない状態も、大きな負担とともに不安が強くなるものでしょう。

食欲が低下する

食欲の低下も認知症末期で出やすい症状です。認知症末期になると意欲が低下しやすく、それに伴って食に対する興味・関心も低下することがあります。さらに、判断力が低下することで、食べ物自体を認識できなくなってしまい、食欲低下につながります。

また、認知症末期は運動機能の低下などにより寝たきりになる方も増えます。動くことが減ればお腹も空かなくなりますし、食事量が減ることで消化器官も衰えやすくなることでしょう。さらに、嚥下障害が現れれば、食べ物が飲み込みにくくなってしまい、より食欲がなくなってしまうのです。

排泄がうまくできなくなる

排泄がうまくできなくなるのも末期で起こりやすい認知症の症状です。トイレの場所がわからなくなる、衣服をどう脱いだらいいかわからない、歩行がゆっくりでトイレに間に合わない、といったことが原因です。

また、記憶障害が深刻化して、排泄という行為そのものを理解できず、そのまま排泄してしまうというケースもあります。

身体機能の低下

末期には運動障害や歩行障害など、身体機能の低下も著しくなることが多いです。日常のちょっとした動作も困難になり、食事・入浴・トイレ・着替えなどさまざまな場面で介助が必要となります。身体のバランスをとりにくくなって、歩行時に転倒して骨折するというケースも珍しくありません。

こうした身体機能の低下により、末期になってから寝たきりになる方も多いです。寝たきり状態になると寝返りが難しくなりますし、座位を保つのも困難になります。

免疫力の低下

食欲がなくあまりものを食べず、運動機能低下で動くことが少なくなると、免疫力が低下しやすくなります。そのため、認知症末期の方は、感染症などに注意が必要です。

体力がない状態であることがほとんどであり、感染時には入院することも少なくありません。自宅を離れて入院することで、認知症がさらに進行することもあり、できる限り感染させないことが大切です。

認知症のタイプごとの特徴と末期への進行具合

認知症の進行具合は、認知症の種類によって特徴があります。
以下で、4つの認知症の種類とその特徴、進行具合について解説します。

アルツハイマー型認知症

認知症の中でも最も多くみられるのがアルツハイマー型認知症です。65歳以上で発症することが多い傾向にあります。

アルツハイマー型認知症の原因は、リン酸化タウやアミロイドβといったタンパク質が脳内に蓄積してしまい、その影響で神経細胞の働きが阻害されることにあります。

記憶障害・見当識障害だけでなく、失認・失語・失行といったさまざまな認知機能の低下がみられます。たとえば、物忘れがひどくなる、今いる場所がわからないといった症状が出ます。

時間の経過とともに認知症が進み、他のタイプの認知症と比べると比較的緩やかに進行していくのが特徴です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、女性に比べて男性の方が多く発症しやすい傾向にある認知症です。

αシヌクレインというタンパク質の一種で構成されるレビー小体というかたまりが、大脳皮質や脳幹に蓄積され、その影響により神経細胞が傷つくことが原因で発症します。

レビー小体型認知症は幻視・妄想症状が出る視覚認知障害、身体が震えるなどのパーキンソン症状、鬱症状などがあります。状態が良い時と悪い時が波のように繰り返す特徴があり、介護する上で戸惑うことがあるかもしれません。

初期のころは物忘れなどの症状がほぼないため、認知症であることに気が付きにくい傾向にあります。また、アルツハイマー型認知症と比べると進行速度が速いことがほとんどです。

脳血管型認知症

脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で引き起こされる認知症です。

脳への血流が阻害されることで、脳の神経細胞の一部に酸素や栄養が行き渡らなくなり、認知症の症状が出ます。障害が発生した場所によって症状が異なるのが特徴で、身体の麻痺を伴うケースもあります。

また、同じことができる時とできない時があるように症状に波があり、俗に言うまだら認知症の症状が出るのも脳血管型認知症の特徴です。感情のコントロールが困難になる感情失禁の症状が出ることもあります。

他の認知症タイプと異なり徐々に進行するのではなく、脳血管障害が起きるたびに段階的に進行するのが特徴的です。

前頭側頭型認知症

前頭葉型認知症は、前頭葉と側頭葉が萎縮することが原因で引き起こされる認知症です。

前頭葉は、思考や感情のコントロールや物事を理性的に処理・実行する機能を司る部分です。そのため、前頭葉型認知症では社会性の欠如や感情の鈍化、同じ行動を繰り返すなどの症状が出ます。また、感情をコントロールできなくなり、暴力を振るったり暴言を発したりすることもあります。

他の認知症タイプよりも低年齢で発症しやすく、好発年齢は50~60代と言われています。

認知症末期における介護の対応例

認知症末期になると、認知機能障害や身体機能の低下、失語などの症状がより強く出るようになります。そのため、話すことや身体が不自由になることが多いです。

しかし、被介護者の方の心は常に動いていますし、ご家族の対応の仕方によって心が癒やされるものです。

以下では、認知症末期における介護の対応について解説します。

食事

ご飯を食べることは健康の第一歩です。しかし、認知症でも感情はありますから、「食べたい時に美味しくないものを食べたくない」と感じているかもしれません。

また、無理やり食べさせてしまうと、誤嚥リスクがあります。さらに、栄養価の高いものをと思って、無理に食べさせたり叱りつけるような言い方をしたりすると、余計に食欲が低下してしまいます。

認知症の方はもちろんですが、人はだれでも日によって食べられる量には差があります。食への興味を保つために、ある程度食べたら後は被介護者の好きなもの、食べやすいものを食べてもらうように対応しましょう。たとえば、夏場で甘いものが好きな方であれば、デザートにアイスクリームやゼリーをあげてみてください。

また、食事の介助をする際には、被介護者の口より下の位置から、食べたいものを少しずつあげることを意識してみてください。

会話

認知症末期になると寝たきりになったりコミュニケーションが取りにくくなったりして、会話する機会も減りがちです。だからといって、孤立させてしまうと被介護者は塞ぎ込んでしまって、さらに認知症が悪化することもあります。

言葉のキャッチボールが難しいケースであっても、定期的に笑顔を向けたり優しく語りかけたりしてあげましょう。また、TVを一緒に見ながら感想を言ってみたり、「面白いね」と声をかけてあげたりすることも良いかもしれません。

言葉はほとんど交わせないかもしれませんが、そうした優しい気持ちは伝わりますし、被介護者も孤独を感じにくくなります。

トイレ

認知症末期の方のトイレ問題は、介護する家族にとってかなりの負担となります。認知症でもある程度身体が動き、プライドもあって「おむつは嫌だ、自分でトイレに行く」という方は意外と多くいます。

日常的に間に合わずに失禁してしまったり、トイレを汚く使ったりされるのはつらいものですが、だからといって、おむつを強要することは被介護者のプライドを傷つけるだけでなく、認知症の進行を早めるきっかけになります。

ケアマネジャーや訪問看護師など専門家の意見を聞きつつ、できる限り自立排泄の手助けをしていきましょう。

たとえば、ポータブルトイレを導入するとトイレ問題が解決するかもしれません。ポータブルトイレを嫌がる場合は、ヘルパーの回数を増やして慣れてもらうなどしてみてください。

病気

認知症末期になると、食欲の低下や身体を動かすのが困難になってくることから、免疫力が低下しがちです。そのため、さまざまな感染症に気をつけなければいけません。体力も落ちているため、感染症にかかった場合は点滴などの治療が必要になることから、入院になることも多いです。

しかし、認知症は入院するたびに症状が進行する傾向にあります。これは、住み慣れた自宅とは違う病院へ移ることで、環境の変化があるためです。認知症の進行をできる限り緩やかにするには、できる限り在宅での治療をおすすめします。

感染症に注意を払い、感染症にかかったら速やかに訪問治療できるように、かかりつけの医師に相談するなどの対策をしておきましょう。

認知症末期に備えた対策

認知症末期になると、日常生活での動作がほとんどできなくなり、ご家族の負担が大きくなります。

少しでもその負担を減らす、認知症の進行を和らげる、被介護者にできる限り元気でいてもらうためにも、認知症末期に備えて対策をしておきましょう。

正しい知識を身に着けておく

認知症は人それぞれで進行スピードや症状に個人差があります。そのため、介護をする家族は事前に認知症の症状や特徴などへの理解を深め、正しい知識を深めておくことが大切です。

正しい知識を身に着けておけば、どのように話しかけたり対応したりすればいいのかがわかります。新たな認知症の症状が急に出たとしても、慌てずに対処できる可能性も高まることでしょう。

また、早めに介護計画を立案できますし、生活上のトラブルを未然に防ぐための対策も実施しやすくなります。

施設やサービスの利用

施設やサービス、または相談できる専門家を事前に探しておくことも大切です。

認知症の方を介護することは、ご家族にとって大きな負担となります。介護の不安や悩みを1人で抱え込むと精神的に追い込まれてしまい、結果的に十分な介護ができなくなることもあります。

そうした状態にならないためにも、かかりつけ医はもちろん、地域包括支援センターや医療機関の物忘れ外来といった利用できる施設について調べておきましょう。認知症関連のNPO法人や民間の団体に相談しておくのも良いかもしれません。

認知症保険を検討する

認知症が進行すると介護のためにサービスの利用や介護用品の購入、医療費などさまざまなことにお金がかかるようになります。公的介護保険制度もありますが、自費で適用外の介護サービスを受けるケースもあり得ます。

まずは現時点で、将来的に介護に使える費用がどれくらいあるか簡単に計算してみましょう。その上で、認知症保険についても検討してみてください。

認知症保険とは、認知症介護に備えるための保険であり、うまく活用すれば介護費用を捻出できます。将来的に認知症の心配がある高齢の親がいる場合、事前に保険販売員に相談してみましょう。

親と事前に話しておく

親と将来の希望について話し合っておくことも大切です。

認知症を患い末期の状態になってしまうと、自分の意思を表現するのが難しくなります。被介護者の方は言葉がうまく話せなくても、心は常に動いています。言葉に出なくとも「この介護には不満がある……」と、感じてしまうかもしれません。

そうしたことがないように、事前に親と話し合いを設け、記録に残しておくことをおすすめします。エンディングノートを活用すれば、介護・葬式に関する希望、保有資産、友人や知人の連絡先などが明らかになります。将来的に、ご家族が介護する上で役立つことでしょう。

認知症の家族の悩みや対策を共有し合えるコミュニティ「clila」

認知症末期になると認知機能が大きく低下し、1人では日常生活がままならなくなります。そのため、介護をするご家族の負担はそれまで以上に大きくなるものです。コミュニケーションが取れない、何を考えているかわからない、そういった中で介護を続けるのは本当につらいことでしょう。

しかし、被介護者の方の心は常に動いています。被介護者と真摯に向き合い、本人の意思を尊重しながら介護をすることが大切です。

とはいえ、介護は毎日続くものであり、時には心がくじけてしまいそうになることでしょう。「介護がつらい……」そう感じるようでしたら、「clila」のご利用をおすすめします。

「clila」は疾患別のコミュニティで、認知症の方の介護をするご家族同士が意見交換できる場所です。介護の悩みを共有できれば、つらい気持ちが少しは軽くなることでしょう。また、効果的だった介護対策の共有や、専門家による投稿もあるため、介護のヒントが得られるかもしれません。

認知症末期の介護で疲れたら、「clila」をぜひ覗いてみてください。