月経困難症・PMSに効果的な漢方|保険適用ピルとの違いも解説

目次

月経時に下腹部や腰痛、吐き気、イライラなどが生じる「月経困難症」に対して、漢方が効果的です。漢方は体質そのものにアプローチしていくので、月経時の症状だけでなく、冷えやのぼせ、PMSなど、さまざまな症状に効果が期待できます。

本記事では月経困難症に保険適用となる漢方の種類や、低用量ピルとの比較を解説します。月経困難症やPMSにお悩みの方は、漢方治療も検討してみてください。

月経困難症に漢方がおすすめの理由

月経困難症とは、月経時に下腹部痛、腰痛、頭痛などの月経痛や、吐き気、疲労感、下痢、憂鬱感、イライラなど心身の不調が現れる病的症状のことをいいます。

月経困難症による症状は市販の鎮痛薬で対処している方が多いですが、鎮痛薬は一時的に痛みを抑える対処療法にすぎません。

根本的な月経困難症治療には低用量ピルが処方されることが多いですが、漢方も効果的です。漢方医学において、月経痛や月経困難症は、血が滞ることで血行不良になる(瘀血)ことが原因と考えられています。そのため、瘀血に効果的な漢方を服用することで、生理期の痛みやPMSの緩和・改善が期待できます。

月経困難症に漢方を服用するメリットは、冷え性や月経過多、子宮内膜症など自分の体質に合ったアプローチができることです。医療機関で医師の診察を受けることで、自身の症状に合った漢方を処方してもらえます。

漢方は長期的に飲むことで体質を整えていくので、鎮痛剤のような対処療法ではありません。

漢方は月経前症候群(PMS)にも効く

月経困難症と合わせて、月経前症候群(PMS)に悩んでいる女性も多いです。PMSとは、生理の1〜7日前くらいに現れる不快症状のことで、月経が始まると治まります。症状としては、むくみ、だるさ、乳房の張り、肩こり、胃の不調、イライラ、憂鬱感、などが挙げられます。

漢方の考え方には「気・血・水」というものがあり、PMSが起こっているときはこのバランスが複合的に乱れている状態だと考えられています。漢方は一人ひとりの気・血・水の異常に合わせて処方するため、PMS症状が複数現れているときにも、1剤で多くの症状の解消に期待できます。

漢方とピル、月経困難症に効果的なのは?

月経困難症の治療には、低用量ピルが処方されることが多いです。

低用量ピルは、プロゲステロンとエストロゲンという女性ホルモンが含まれている薬のことです。

ピルを服用すると排卵が止まり、子宮内膜の増殖が抑制されます。子宮内膜が厚くならないため、生理期に子宮内膜が剥がれるときに起こる子宮収縮の痛みや、出血を抑える効果が期待できます。

ホルモンバランスが一定に保たれることから、月経不順やPMSの改善も期待できます。

避妊薬としても処方されますが、月経移動や避妊目的のみで服用する際は、保険適用外になります。診察や検査の結果から、月経困難症や子宮内膜症の治療を目的として医師が処方する場合は、保険適用内です。

漢方と低用量ピルは、月経困難症へのアプローチ方法が異なります。二つの違いを見てみましょう。

低用量ピル漢方
月経困難症へのアプローチ・ホルモンバランスを一定に保つ・排卵をなくす・気、血、水のバランスを整えて、月経困難症やPMSの諸症状にアプローチする
効果の特徴・症状に直接働きかける・ゆっくり体質を整えていく
メリット・生理日移動や避妊効果もある・月経不順や月経困難症に対して、早く対処できる・冷え性、のぼせ、精神不安など体質や精神不調そのものに働きかける・症状が複数ある場合にも、1剤で多彩な効果が期待できる
デメリット・飲み始めは不正出血、嘔吐、頭痛などの副作用が起こることがある・血栓症や子宮頸がん・乳がんのリスクを上げる可能性がある・服用禁忌がある・即効性はなく、長期的に服用する必要がある・吐き気、嘔吐、発疹など漢方によって副作用のリスクがある

低用量ピルは服用禁忌の方もいるので、医師の診察の元、自分に合った治療を受ける必要があります。月経困難症の症状に悩んでいたら、まずは婦人科を受診しましょう。

漢方とピルは併用OK

漢方と低用量ピルの併用は可能です。漢方は効果が現れるまで期間が必要になるので、ピルで対処しながら漢方でゆっくり体質を整えていく、というような併用の仕方ができます。

または、低用量ピルで月経不順や月経痛を改善しながら、漢方でPMSやのぼせ感などのお悩みにアプローチしていくことも可能です。

【症状別】精神的なPMS症状のセルフケア

PMS症状のうち精神的な症状に対するセルフケアを紹介します。ぜひ取り入れてみてください。

イライラ、攻撃的になりやすい

イライラしたり攻撃的なったりしてしまう時は、自律神経が乱れ神経系が興奮状態にあります。

まずは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせましょう。この時期には意識してリラックス効果の高いものを取り入れてみるのもよいかと思います。

例えば、アロマテラピーやハーブティーがおすすめです。また、グレープフルーツ、ミカンなどの柑橘類、酸味のある食べ物は気持ちを静めてくれます。

軽い運動や趣味に没頭するといった気分転換もおすすめです。

気分が落ち込み不安定になる

気分が落ち込み、不安定になりやすい時は、ヨガやストレッチなど、ゆったりとした運動や入浴・マッサージなどでリラックスし、身体を温めるのがおすすめです。

散歩や軽い運動は気分転換にもなるでしょう。日光浴をあびる事で前向きな気持ちになれるセレトニンの分泌の助けになる、ビタミンDも生成されます。

PMSの悩みは、一人で抱え込まずに相談しましょう。誰かに話を聞いてもらうことで、気持ちが楽になる可能性もあります。

PMSの精神的な症状におすすめの漢方ケア

PMSのケアには、症状により漢方が役立ちます。鎮痛剤やホルモン治療であるピルの服用が出来ない方におすすめです。

PMSの精神的な症状におすすめの漢方薬は、以下の通りです。

イライラしやすい時・気分が落ち込み不安定な時

  • ・加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • ・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  • ・肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

【症状別】身体的なPMS症状のセルフケア

PMS症状のうち身体的な症状に対するセルフケアをご紹介します。ぜひ取り入れてみてください。

疲れやすい、だるくて動けない

疲れやすい、だるくて動けない、などの症状がある時は、体が冷えている、血流が悪いなどの状態になっている可能性が高いです。血流の改善をすると症状が和らぐ可能性があります。

熱めのシャワーなどで交感神経を少し刺激する、浴槽にゆっくりつかる、軽いストレッチやウォーキングといった有酸素運動を取り入れる、などが有効です。好きなことをして気分をリフレッシュさせるのも効果的です。

そのような事も出来ないくらい重い場合は、無理せず安静にしていましょう。

腹痛・腰痛

月経前のPMSの時期から月経中は、特にお腹や腰を冷やさないように意識しましょう。

冷えると痛みが増す恐れがあります。

エアコンや冷たい飲み物で身体を冷やさないことはもちろん、温めるケアも必要です。おすすめは、腹巻きです。

最近では、服に響かない薄手のものやおしゃれなものが増えてきています。また。シルクやオーガニックコットン、温感素材など素材にもこだわった様々な商品がありますので、検討してみてください。

PMSの身体的な症状におすすめの漢方ケア

PMSの身体的症状のケアにも、漢方が役立ちます

PMSの身体的な症状におすすめの漢方は以下の通りです。

疲れやすい、だるくて動けない時

  • ・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • ・香蘇散(こうそさん)
  • ・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

腹痛・腰痛・頭痛の時

  • ・当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
  • ・当帰呉茱萸生姜湯(とうきごしゅゆしょうきょ​​うとう)
  • ・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

浮腫みやすい時

  • ・五苓散料(ごれいさんりょう)

月経困難症・PMSに!保険適用になる漢方一覧

月経困難症やPMSの症状に対して、保険適用で処方される漢方の種類を紹介します。

漢方によって、冷え性、のぼせ、精神不安など効果的な症状が異なります。自分の体質やお悩みに合った漢方があるか、チェックしてみましょう。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

体力が虚弱気味(中等度以下)で、のぼせ感、肩こり、疲れやすさ、精神不安、苛立ち、便秘などの傾向がある方に適応します。冷え性に効果的なので、冷えを伴う月経困難症や月経痛に効果的です。

鬱やイライラ感、不眠など、精神的な症状を伴う方にも処方されます。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

体力虚弱で月経困難症がある女性に頻用される漢方です。冷え性で貧血の傾向があり、疲れやすい方に適しています。

冷え性、腹痛、頭痛、腰痛、めまい、肩こり、むくみ、耳鳴りなどさまざまな症状に効果的です。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせて足が冷える、などの症状がある方に適した漢方です。

月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、肩こり、めまいなどの症状のほか、シミ、湿疹・皮膚炎、にきびなどの症状が気になる方にも適用になります。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

体力中等度異常で、のぼせて便秘しがちな方に向けた漢方です。月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安などあらゆる月経トラブルに効果が期待できます。

腰痛、便秘、高血圧に伴う症状、痔、打撲も対象の症状です。

苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

体力中等度以下で、めまいやふらつき、ときにのぼせや動悸がある方の、立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症などに処方される漢方です。

PMSによるのぼせやめまいのほか、不安やパニックなど精神症状にも有効的といわれています。

五積散(ゴシャクサン)

体力が中等度またはやや虚弱で、冷えがある方に向けた漢方です。

月経痛、胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、頭痛、更年期障害、感冒などさまざまな痛みを伴う方に処方されることがあります。

特に、冷えて胃や下半身が痛むときに適しています。

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

芍薬甘草湯は体力にかかわらず、使用できます。急激な筋肉のけいれんを伴う痛みがある方の筋肉のけいれん、こむらがえり、腹痛、腰痛に効果的です。

月経時の経血の排出時に起こる子宮の収縮を緩和させる働きから、月経痛を軽減させる効果が期待できます。

つらいPMSにおすすめの漢方10選

つらいPMS症状のケアにおすすめの漢方を10個紹介します。取り入れる際の参考にしてください。

イライラや不安感を抑える加味逍遥散(かみしょうようさん)

期待できる効果

自律神経の乱れを整え、気分の変動を緩和する働きがあります。イライラや不安感・ストレスが多く精神的な症状が強い方に、症状を和らげる効果が期待できます。

おすすめの方

ストレスを感じやすく、感情の波が激しい方に適しています。女性の更年期障害やPMSの精神的な症状に効果的です。

注意点

肝臓機能に負荷をかける可能性があるため、継続的な使用には経過観察が必要です。

身体を温める当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)

期待できる効果

身体を温め、痛みを抑える働きがあります。特に月経痛や冷えに対して効果が期待できます。

おすすめの方

血の巡りが悪く、冷えやすい体質の方。特に月経による腹痛がある方に向いています。

注意点

温める効果が強いため、暑がりの方やのぼせやすい方には不向きです。

体内の水分を調整する五苓散料(ごれいさんりょう)

期待される効果

体内の水分のバランスを整える働きがあり、浮腫みや頭痛、めまいを改善する効果が期待できます。利尿作用もあります。

おすすめの方

浮腫みやすい方、頭が重いと感じる方、頭痛がつらい方、水分代謝が悪く体に余分な水分がたまりやすい方におすすめです。

注意点

脱水症状を考慮し、水分を充分に摂取する必要があります。

めまいや吐き気を緩和する夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

期待される効果

めまいや吐き気を緩和し、消化機能を改善する効果が期待できます。 特に平衡感覚を整える効果があり、耳鳴りの治療にも用いられます。

おすすめの方

めまいやふらつきのある方、頭が重いと感じる方、頭痛のある方、胃腸が弱い方、冷え性の方。

注意点

胃腸に負担をかけやすい成分が含まれているため、長期使用には注意が必要です。

体を温め血流を改善する当帰呉茱萸生姜湯(とうきごしゅゆしょうきょうとう)

期待される効果

胃腸や手足を温め、冷えや吐き気、腹痛を緩和します。手足の冷えによる胃腸の不調に効果的です。冷えにより、下腹部痛になる方にも効果が期待できます。

おすすめの方

胃腸が弱く、手足が冷えると腹痛や下腹部痛、吐き気を感じる方。

注意点

温める効果が強いため、ほてりを感じやすい方には不向きです。

頭痛、吐き気、冷え性に効く呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

期待される効果

頭痛、吐き気、冷え、月経に伴う下腹部痛に効果があります。特に偏頭痛が起こり始めた時の治療に使用されることが多いです。お腹を温め、消化機能の改善にも役立ちます。

おすすめの方

偏頭痛持ちの方、月経に伴う下腹部痛の方、胃腸が弱い方、冷え性の方、 特に寒さに敏感な方。

注意点

強い温熱効果があるため、のぼせやすい方には向いていません。

緊張感や不安感を和らげる半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

期待される効果

精神的な緊張感や不安感を緩和し、喉の違和感(つかえ感)を改善する効果が期待できます。咳や喘息の治療にも使われます。

おすすめの方

喉に不安がありストレスを感じやすい方、不安感や緊張から喉につかえ感や違和感のある方、不安神経症の方。

注意点

長期使用は消化機能に負荷をかける可能性があるため、注意が必要です。

体力を補い元気をつける補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

期待される効果

体力を補い、元気をつける効果があります。疲れやすく、食欲がない人に適しています。

おすすめの方

疲労感が強く虚弱体質の方。 特に体力が低下している時期や病状の時におすすめです。

注意点

消化器系に負担がかかるため、胃腸の弱い方には注意が必要です。

精神を安定させ胃腸機能を整える香蘇散(こうそさん)

期待される効果

軽い風邪の初期症状や、頭痛、蕁麻疹、肩こり、胃腸虚弱を改善する働きがあります。気の巡りを良くして、心身をリフレッシュさせ、抑うつ傾向の改善効果も期待できます。

おすすめの方

軽い風邪症状の方、気分が優れない方、虚弱体質の方。

注意点

尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれるなどの副作用の症状があらわれる可能性がまれにあります。

神経を鎮める抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

期待される効果

神経を鎮め、イライラや不安感を緩和します。自律神経の失調を改善する働きがあり、特に精神的なストレスが原因の症状に効果的です。小児の夜泣きや更年期障害でも改善の効果が期待できます。

おすすめの方

強いイライラや不安感など気分が不安定な方、 認知症の方、精神的に不安定な方

注意事項

食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などの副作用がまれにあります。このような症状が表れた場合すぐに服用を中止してください。

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※月経困難症の症状が重く、検査を受けたことがない方はまず婦人科で検査を受けることを推奨します。重篤な病気が隠れている可能性がございます。