【漢方コラム】習慣性流産とは?リスク要因や治療方法なども解説

妊娠22週前に妊娠が終わった場合、全て流産と定義されています。妊娠しても流産してしまう、流産を繰り返している私の体はおかしい?と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで、本記事では習慣性流産の概要、検査方法や治療方法を詳しくみていきます。

目次

1.習慣性流産とは

流産を2回繰り返すと反復流産、3回以上繰り返すと習慣性流産と呼ばれます。最近は、反復流産を対象として検査・治療をする医師が増加傾向です。習慣性流産となる前に治療を開始することで、不安の解消を行えるためです。

流産は妊娠に伴う合併症の1つとされており、全ての妊娠で10~15%の確率で起きるものとされています。そして、流産の回数が増加するほど、その後の流産の確率が高まっていく点は知っておくとよいでしょう。

2.習慣性流産のリスクを高める要因とは

妊娠初期の流産の要因は、胎児の染色体異常と考えられ、繰り返す場合には、リスクを高める因子を有しているケースもあります。そのため、凝固異常や子宮形態異常などのリスク要因をみていきましょう。

・凝固異常
血液中の凝固因子に異常があると、血栓ができやすくなります。また、妊娠中に胎盤の中に血栓ができた場合、胎児に栄養が運ばれず、流産や死産を招く恐れがあるため、定期的な検査を行うことで対策しましょう。

代表的な疾患は、抗リン脂質抗体症候群となります。抗体が自分の体を攻撃してしまう症状を引き起こす自己免疫疾患の1つで、胎児の死亡や習慣性流産などを引き起こすことが特徴です。

・子宮形態異常
子宮の形の異常に関しては、先天的な子宮奇形と後天的異常の2つに分けられます。双角子宮、中隔子宮などの形態異常は、注意すべきリスク因子とされています。

しかし、子宮の形が違った場合でも必ずしも治療が必要とは限らないため、相談しつつ様子をみていきましょう。

・内分泌異常
甲状腺の機能の低下、糖尿病などに罹っている場合、流産の可能性が高まります。検査によって、血糖や甲状腺ホルモンに異常がないかどうか調べ、治療していくことが大切です。

・夫婦染色体異常
流産を繰り返す場合、夫婦のどちらかに染色体の異常がある可能性があります。その場合、卵や精子ができる際に、一定の頻度で染色体の異常が起こる点は知っておきましょう。検査を通して異常があるかどうかを確認できます。

3.習慣性流産で病院を受診するタイミング

一般的には、1回の流産で検査は必要ありません。しかし、2回以上繰り返すのであれば、検査を行うことをおすすめします。1回でも死産などの場合は、母体の要因が大きくなる可能性が高いため検査を行いましょう。

4.習慣性流産の検査

流産を繰り返す場合には、以下の検査が推奨されています。

・抗リン物質検査
抗リン物質検査では、血栓を起こしやすくなる、抗リン脂質抗体の有無について検査します。抗リン脂質抗体は、人体のすべての細胞膜表面にあるリン脂質、結合した血漿中のタンパク質に反応する自己抗体です。

健康な人の血液中にも微量ながら存在する抗体で、常に多く産生されている状態を抗リン脂質抗体陽性といいます。抗リン脂質抗体が増加すると妊娠中の子宮内で血栓を生じ、血管新生を妨げるなど流産のリスクを高めるため注意が必要です。

以下の4つのリン脂質抗体のいずれか1つ以上が陽性である場合、12週間以上の間隔をあけてから再検査を行います。

  • ループス アンチコアグラント
  • 抗カルジオリピン(CL)IgG 抗体
  • 抗カルジオリピン(CL)IgM 抗体
  • 抗カルジオリピンβ2 グリコプロテイン I(CLβ2GPI)複合体抗体

陽性が続くようであれば抗リン脂質抗体症候群として管理が必要です。

・子宮形態検査
子宮形態検査では、以下のように複数の検査を実施します。

  • 経腟超音波検査:子宮や卵巣の中の状態を観察する検査
  • 子宮卵管造影検査:子宮の中に造影剤を入れて子宮の内腔の形を確認
  • 子宮鏡検査:内視鏡を使用し子宮の内部を直接観察する
  • 復腔鏡検査:腹部に小さい穴をあけて復腔鏡を入れて腹部内腔を観察

検査の所見や結果を組み合わせて判断を行います。

・内分泌検査
甲状腺機能の低下は不育症の原因の1つです。そのため、血液検査で甲状腺ホルモンを測定し、同時に糖尿病検査も実施します。

・夫婦染色体検査
習慣性流産では、夫婦の染色体の異常が原因となる場合があります。検査の実施を通して、夫婦の染色体に対する異常の有無を確認可能です。

それぞれの検査を通して原因を明確にし、適切な治療を行っていくことが大切といえます。

5.習慣性流産の治療

リスク要因ごとに異なる治療を行う必要があることから、その内容をみていきましょう。

・抗リン脂質抗体症候群、血液凝固障害
発症が確認されている場合、血栓症のリスクが高まります。予防するために、低用量アスピリンを排卵の直後から服用します。血液検査の程度によっては、妊娠判定後にヘパリンの自己注射を行うケースもあります。

・子宮形態異常
子宮形態異常には症状がないことが殆どです。健康に影響を及ぼす可能性が低いため、一般的には治療の必要はありません。しかし、先天的な子宮の形の異常や子宮筋腫などがあれば、手術療法が必要になります。

手術療法を行う場合には、形態以上の内容で手術の有効性や術式が異なってくるため、検査によって形態異常のタイプを正確に診断しましょう。

・内分泌異常
甲状腺の機能に異常がある場合は、ライフスタイル改善や食事療法、内分泌代謝内科との併診を行います。適切な治療を受け、機能が回復してからの妊娠が大切といえます。妊娠中や妊娠後も治療を継続するなど十分なケアが必要です。

糖尿病についても、治療を行ってから妊娠することが大切です。妊娠中や出産後も血糖を適切にコントロールしましょう。

・夫婦染色体異常
夫婦のどちらかに染色体異常が発見された場合、遺伝カウンセリングを十分に受けることが重要です。染色体異常の種類に応じて、染色体正常児を妊娠する確率、着床前診断などの長所・短所などを知っておくことで今後の対策が立てやすくなります。

6.中医学からみた習慣性流産

中医学において、習慣性流産の原因は多岐にわたっているものの、特に気圧不足や腎虚、瘀血が関係しているものとされています。それぞれの要因を詳しくみていきましょう。

・気圧不足
中医学では、胎児の子宮の中での安定、子宮内膜を固定するのは「気」の固摂と言う作用によるものです。卵子の成熟や子宮内膜を増殖する際に必要で、妊娠後に胎盤や胎児に栄養や酸素を届けるのは「血」の働きとされています。

「気」「血」の充実は、胎児の成長と子宮内膜の安定、妊娠維持に不可欠だといえるでしょう。

食物から「気血」を作り出す「脾」の臓、皮膚や粘膜の力を支えるなど免疫の作用を司る「肺」の臓の気の力が弱まった場合、妊娠に関連する流れの力が不足します。

・腎虚
「腎」の臓は、卵や内膜などの作り込みを行うものです。臓は女性は28歳、男性は32歳をピークに、その後は緩やかに衰えていきます。「腎」の力不足で「腎虚」状態になっている場合、卵子の質や内膜の厚さや質などに影響が出てきます。

・瘀血
瘀血とは、血の巡りが悪くなっている状態です。血流が悪くなった場合、内膜の厚さや柔らかさに影響し、着床のしづらさにつながることに加え、胎児の成長に必要な血の輸送がしづらくなります。

7.漢方は体へのアプローチに活用できる

中医学では、流産を繰り返しやすいなど、今の身体の状態や体質などを考慮し、漢方薬の服用によってアプローチを行っていくこともあります。漢方は妊娠前の身体や妊娠後の安胎にアプローチできる点や内服のみであるため時間や手間がかからない点はメリットです。

8.まとめ

習慣性流産と判断された場合、リスク因子を有する場合があるため、検査が必要です。不育症は、因子ごとに適した治療を行います。中医学では、習慣性流産の原因はさまざまであるものの、特に気圧不足や腎虚、瘀血が関係しているとされています。

中医学で用いられる漢方では、体の現在の状態に対するアプローチが可能です。

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