乳がん月間とは?乳がんの概要から症状、チェック方法まで解説

日本では1994年から、10月を乳がん月間として定め、乳がん検診が推奨されるようになりました。
2022年の乳がん月間(10月1日~31日)は終わりましたが、あなたは乳がん検診受けられましたか?

乳がんは30代~50代の女性のがん死亡原因のトップとなる病気です。
しかし、乳がんがどのような症状を引き起こし、早期発見によってどうなるのか具体的に把握していない方もいるのではないでしょうか。そこで、本記事では、乳がん月間と乳がんの概要、チェック方法などを解説していきます。
定期的な検診が受けられていない方や不安な方は参考にしてみてください。

「ピンクリボン運動」「乳がん月間」とは

まず、ピンクリボン運動は、乳がんの撲滅や早期発見のために行う世界単位の乳がんの啓発運動を意味します。
1980年代のアメリカでは、乳がんで亡くなる女性患者が増加したことから、“このような悲劇が繰り返されないように”といった願いを込めてスタートしました。

1980年代のアメリカでは、乳がん患者が増えつつあり、死亡率も高かったといえます。
しかし、早期発見によって死亡を防げるという事実は今と大きく変わりません。
そのため、次のような取り組みを行い、市民や政府の意識をかえました。

  • 行政・市民団体・企業が乳がんの早期発見の啓発イベントを展開する
  • ピンクリボンをあしらった商品を頒布する
  • 売り上げの一部を財団や研究団体に寄附する

次に、日本でもアメリカでのピンクリボン運動の流れを受け、1994年以来、毎年10/1~10/31の1か月を「ピンクリボン月間」「乳がん月間」に設定し、乳がん早期発見啓発運動を展開している状況です。
2000年に東京タワーをピンク色にライトアップしたイベントによって一般的に広がりました。

現在は、10月1日を「ピンクリボンデー」「乳がん検診の日」と定め、団体ごとに積極的に検診を受けるよう広報活動を行っています。
奨学金や正しい乳がんの知識の情報提供、数百施設での乳がん検診の実施なども実施されている状況です。

そもそも乳がんってどんな病気?

乳房は乳腺と脂肪組織で構成されており、乳腺は20ほどの乳腺葉で出来ています。そのうえで、乳腺葉は乳汁を運搬する乳管と小葉で作られている点を知っておきましょう。

乳がんは乳腺で発生する全てのがんの総称であり、細かく分類すると次のように分けられます。

・乳がんの多くは乳管から発生し、「乳管がん」と呼ばれる

・小葉から発生する乳がんは、「小葉がん」と呼ばれる

人の目では判別は難しいものの、乳がん組織を顕微鏡で検査(病理検査)すると区別が可能です。その他にも特殊な型の乳がんもありますが、それほど多くはなく、「乳管がん」および「小葉がん」のどちらかと考えてよいでしょう。

乳がんの罹患率と死亡率

乳がんは、日本女性がかかる割合(罹患率)がトップであり、その罹患率は年々増加し続けています。
罹患数の増加に伴って死亡率も上昇傾向にあるものの、早期発見によって、生存率は9割以上となっている点も知っておきましょう。

女性が一生のうちに、乳がんになる割合は、50年前までは50人に1人とそれほど多くありませんでした。
しかし、現在は9人に1人 の割合になっており、年間で9万人以上の女性が乳がんと診断されています。

乳がんが原因で死亡する女性の割合は年々増加の傾向にあり、年間約1万5,000人もの方が亡くなっています。
乳がんを新たに発症した人の実に約16%にあたり、非常に高い致死率といえるでしょう。

(図が入る)

<出典>独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(2008年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(2012年)より、「乳房再建ナビ」作成が作成したものを引用

年代別でみると、乳がんの罹患率は30歳後半から増加し始め、45~55歳でピークになります。また、20代前半で乳がんに罹患することもあるため、年代に関係なく定期的な検診やチェックが大切な病気です。

乳がんは女性の働き盛りを襲う疾患であることを示しており、閉経後の65歳前後で再びピークを迎える傾向があります。
かつて日本の乳がんは、欧米と異なり閉経前に罹患するケースが多いことが特徴でした。
しかし、現在は欧米のように閉経後も増加しています。

(図が入る)

<出典>独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(2008年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(2012年)より、「乳房再建ナビ」作成が作成したものを引用

乳がんの発生原因

乳がん月間では、乳がんに焦点をあてた検診が推奨されています。
あくまで、情報提供や検診の推奨にとどめているのは、乳がんの根本的な理由がはっきりと示されていないためです。

しかし、乳がんの原因となりうる要素は次のような項目であることは把握できています。

  • 飲酒、喫煙の習慣がある
  • 過剰なエストロゲン(女性)の分泌がある
  • 遺伝
  • 過剰にHRE2(タンパク質)の分泌がある
  • 免疫力が低下している

肥満の防止のための運動やアルコールの摂取をやめるなど、患者の努力によってリスクを軽減できる面もあります。
ただし、乳がんによる死亡を防ぐためには、定期的な検診によって乳腺の状態を確認していくことが大切です。

乳がんの検査方法

乳がん月間でも検診が推奨されているように、検診によって乳がんは発見可能です。
検診で実施する検査には次のような方法があります。

  • 触診
  • マンモグラフィ
  • 超音波検査
  • CT検査
  • PET検査

どの検査を実施するのかは、医療機関によって異なります。診断結果次第では、次の検査を実施するケースもあるものの、しこりや皮膚の病変、細胞の病変などは検診で知ることができます。

乳がんはどんな症状?

乳がんに気付くきっかけは、乳がん月間でも実施している検診以外だと、自分自身で違和感を感じる場合も多いといえます。
以下のような症状を自覚した場合は、早急に医療機関かチェックを行いましょう。

1)乳房に今まで感じなかったしこりを感じる

乳がんが進行した場合、腫瘍が大きくなるため、注意深く触るとしこりがわかるようになります。
硬いだけでなく、触ってもあまり動ない場合は、乳がんによるしこりだと判断できるでしょう。

ただし、しこりがあるといっても乳腺症、線維腺腫、葉状腫瘍などの病気でもしこりの症状はあらわれます。
そのため、気になるしこりを発見した場合は、専門医に診てもらうことが大切です。

また、乳頭からの分泌物が出ている場合も乳がんの可能性があります。
この場合は、血が混じっている・片方からしか出ないといった特徴があることから、早めの検診を推奨します。

2)乳房にエクボができるなど皮膚の変化がみられる

乳がんが進行し乳房の皮膚の近くに達すると次のような症状が表れます。

  • エクボのようなひきつれができたる
  • 乳頭や乳輪部分に湿疹(しっしん)やただれができる
  • オレンジの皮のように皮膚がむくんだように赤くなる

乳房のしこりがはっきりせず、乳房の皮膚が赤く、痛みや熱をもつ乳がんは「炎症性乳がん」と呼ばれます。炎症性乳がんは、がん細胞が皮膚に近いリンパ管の中で増殖してリンパ管に炎症を引き起こしているために起こります。

また、痛み・むくみや腫れといった症状は、乳腺症、細菌感染が原因の乳腺炎や蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの乳がん以外の病気でも起こるケースもある点は知っておきましょう。

乳房の形が乳がんによって変わる場合もあります。

3)乳房周辺のリンパ節に腫れを感じる

乳がんは、乳房の近くにあるわきの下のリンパ節(腋窩[えきか]リンパ節)や胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)、鎖骨上のリンパ節に転移しやすい性質があります。
転移しやすいリンパ節は、総じて乳がんの「領域リンパ節」と呼ばれています。

腋窩リンパ節が大きくなると、リンパ液の流れがせき止められてしまうため、次のような症状が表れます。

  • わきの下などにしこりができたる
  • 腕がむくむ
  • 腕に向かう神経を圧迫して腕がしびれる

腕のむくみやしびれは、必ずしも乳がんだけの症状ではないため、気になった場合は総合的な検診を受けましょう。

乳がんリスクが高い人とはどんな人?

乳がんを発症する原因は不明です。
しかし、発症リスクが高い・高いと想定される傾向はわかっています。

次のような条件に当てはまる場合は、定期健診を受診してみましょう。

  • 乳がんにかかった血縁者がいる
  • 出産経験がない、出産回数が少ない
  • 初産年齢が高い人
  • 授乳経験がない、授乳期間が短かった人
  • ホルモン補充療法を受けた人
  • 太っている人や背の高い人
  • マンモグラフィ高濃度乳腺がある人

とくに女性ホルモンのバランスに関して、ピルなどの処方せんを専門医から貰っている場合は相談しつつ、処方を続けましょう。

乳がんの早期発見のためにはどんな方法がある?

乳がんは早期発見により適切な治療が行われた場合、良好な経過が期待できます。

仮に、乳がんが見つかって早期に治療を行えば約90%の方が生存している状況です。

乳がん月間を利用して、検診を受けるという方法も検討できるでしょう。

例えば、検診を受ける場合は次のような検査方法があります。

  • マンモグラフィ検査
  • 超音波検査
  • 触診

この中でも、視覚や触覚ではわからないケースを避けるため、マンモグラフィか超音波検査が実施されるケースが多いといえます。

少しでも変化や異変に気づいたら、すぐに専門の医療機関(乳腺外科、乳腺科、乳腺内分泌外科などの表示のある病院やクリニック)を受診しましょう。

無症状の場合でも、乳がん検診により乳がんが見つかるケースもあるため、定期的に専門の医療機関を受診することが大切です。

20歳以上の女性であれば、定期的な検査がおすすめ

乳がんに限らず、20代後半に差し掛かると、女性ホルモンの増加など本人に自覚症状がなくても様々な体調の変化が起こっているケースがあります。

仮に、定期的に病院での検診を受けていない場合は、定期的に婦人科を受診を検討してみましょう。

月経が長い、出血量が多いといった症状を引き起こす子宮筋腫などの疾患にも早めに対処できる可能性が高まります。

また、乳房に違和感がある場合は乳腺外科、乳腺科、乳腺内分泌外科などを持つ専門の医療機関を受診することが大切です。