焦りは禁物!鬱病「回復期」の症状と期間は?乗り切る心と体の整え方

鬱病の回復期は、つらいですが焦りは禁物です。

急に治るのではなく、症状の波など特徴があり、そこを乗り越えていく必要があります。寒い日と温かい日を繰り返しながら春が来るように、三寒四温のイメージで徐々に回復します。

この記事では、鬱病の回復期の特徴と、過ごし方について解説します。

鬱病のご本人も、ささえる家族も、焦らずこの時期を乗り切っていきましょう。

鬱病の急性期・回復期・維持期

鬱病の経過として急性期・回復期・維持期の3つの時期に分類されます。

さらに回復期のなかでも症状の揺らぎがありますが、徐々に安定していき維持期になります。

それぞれの時期について詳細は下記の通りです。

急性期

抑うつ気分、不眠、食欲不振など、最もつらい症状が顕著に現れる時期です。まずは症状を和らげ、心身を休めることが最優先されます。

回復期

急性期の症状が改善し、徐々に日常生活を送れるようになる時期です。しかし、まだ完全に元の状態に戻ったわけではなく、心身ともに不安定な状態が続くことがあります。この時期に「治った!」と誤解したり焦ったりせず、段階的に社会復帰を目指す大切な時期です。

維持期(再発予防期)

回復期を経て、症状が安定し、再発の予防に努める時期です。社会生活を送りながら、心身の健康を維持していくための工夫が求められます。

参照元:日本うつ病学会治療ガイドライン

鬱病の回復期の特徴・症状

鬱病の回復期には、どのような特徴や症状があるのかを理解しておきましょう。

特徴1.気分や体調に波がある

気分や症状はまだムラがあり、一進一退です。

気分や調子が良いと感じる日もあれば、翌日には何もやる気が出ないなど沈んでしまう日もあります。これは回復期によく見られる特徴で、決して後戻りしているわけではありません。

回復をグラフで表すと直線的ではなく、波を打ちながら少しずつ上向きに進んでいきます。

気分が良い日が続くと、治ったと錯覚しがちですが、「もう大丈夫だ!」と自己判断で無理をしてしまいがちです。しかし、これがぶり返しの原因になることがあります。

特徴2.疲れやすさが残る

急性期よりは動けるようになりますが、以前のように長時間集中できなかったり、すぐに疲れてしまったりすることが多いです。脳も体も完全に回復するには時間がかかります。

また、少し活動しただけでグッタリしてしまったり、睡眠を充分とっても疲れが取れにくいと感じたりすることがあります。これも、少し調子が良くて、無理をしてしまった結果かもしれません。回復のペースはゆっくりです。

特徴3.興味や意欲が完全には戻らない

趣味や好きなことに対しても、「やってみようかな」とは思うものの、実際にやってみると「そこまで楽しくないな…」と感じたり、すぐに飽きてしまったりすることがあります。以前楽しめたことでも楽しめないことがあります。

以前は簡単にできたことでも、始めるまでに時間がかかったり、億劫に感じたりすることがあります。

鬱病をわずらう以前のように好奇心がわいたり、快活な行動ができたりするまでには、いたっていない場合が多いです。

特徴4.眠りの質がまだ不安定

睡眠の質はまだ不安定で、だいぶ回復したとはいえ、まだ良質な睡眠とまではいかないことがあります。

急性期のようなひどい不眠は減るかもしれませんが、まだ寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めてしまったり、朝早く目が覚めてしまうなど、睡眠のリズムや質が完全には安定しない場合が多いです。

精神的にもまだ不安定なことが関与しています。まだあまりよく眠れていないため、「昼間とにかく眠い」という場合もあります

特徴5.感情のコントロールが不安定

感情のコントロールがまだ不安定です。感情の揺れ幅がまだ大きい状態にあります。ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだり、将来に対して漠然とした不安を感じたりすることがあります。

再発への不安や、社会復帰への焦りが影響していることもあります。「またあの辛い状態に戻ってしまうのではないか」という不安を抱えることも少なくありません。

社会復帰は無理せず段階的に進めていく必要があります。

特徴6.食欲が完全に安定しない

食欲が戻ってきても、まだ偏りがあったり食べすぎたり、反対に食べる気がしなかったりと、食欲の波がある場合があります。

しかし回復期には、体と心を整えるためにも栄養は大切です。心身の健康や幸福感を促してくれる栄養もありますので、治療と回復をサポートしてくれます。無理せず摂取できるところから栄養をとっていく事が大切です。

家族がサポートし、栄養のバランスを配慮した食事をとると良いでしょう。この時、ジャンクフードや刺激の強いものは避けます。

【患者さんへ】鬱病の回復期に大切な心と体の整え方

鬱病の回復期に、鬱病の患者はどのような心がまえでどう過ごせばよいか、考え方や過ごし方をお伝えします。

焦らない・無理をしない

焦らずゆっくり、無理は禁物。何よりもこれが大切です。

回復はマラソンのようなもので、時間をかけて着実に進む必要があります。一進一退を繰り返しながら、少しずつ回復していくものです。

「疲れたな」「もうやめようかな」と感じたら、素直に休む勇気を持ちましょう。休むことは決して悪いことではありません。

調子が良いからといって、もう大丈夫と過信して無理をしないよう、注意しましょう。

規則正しい生活リズムの維持と食生活 

規則正しい生活リズムを維持することは、心身の安定に非常に重要です。

できるだけ決まった時間に起床し、決まった時間に就寝しましょう。夜更かしは禁物です。まだ不眠傾向が治らない方は、昼間異常に眠いなど生活リズムに影響します。医師に相談しましょう。

食事もできるだけ決まった時間にとり、栄養バランスの取れた食事を心がけます。無理のない範囲で、食事もしっかりとることが、健康な心と体へと繋がります。

食欲が戻らない、極端にムラがあるなどの場合は、主治医に相談しましょう。

少しずつ社会参加、活動量を増やす

少しずつ社会参加をして、活動量を増やしていきましょう。軽い運動もおすすめです。

最初は短時間の散歩や買い物から始め、徐々に友人との交流や趣味の活動など、活動量を増やしていくことが望ましいです。ただし、負担に感じる場合は無理せず中止しましょう。

また、完璧主義は手放します。 「すべてを完璧にこなさなければ」という考えは、回復を妨げる要因になります。7割できたらOK、という気持ちで、自分に優しくなりましょう。

不安や困りごとを共有する

気分の落ち込みや再発への不安、日常生活での困りごとなど、一人で抱え込まずに、主治医や家族、信頼できる人に話しましょう。共有するだけで心が軽くなることがあります。

この時期は、気分や体調にもムラがあり、「せっかく良くなってもまたぶり返すのでは」という不安や、社会復帰への焦りなど、様々な不安を抱えがちです。これらを1人で抱えてはいけません。

社会復帰に関しては、段階的に徐々に進めていく事が望ましいです。

服薬の継続

服薬の継続はしっかり行いましょう。

 症状が改善しても、自己判断で薬を減薬、または中断することは絶対に避けてください。これらは再発のリスクが非常に高まります。

薬によっては離脱症状(禁断症状)といった重篤な副作用が生じる場合があります。

必ず主治医の指示に従いましょう。

また、用法用量を守ることも継続します。自己判断で少し多めに飲むなどすると命に関わる危険を伴う可能性があります。

【ご家族へ】鬱病の回復期に大切な過ごし方

鬱病の回復期に、どのような心がまえでどう過ごせばよいか、鬱病患者をささえるご家族の考え方や過ごし方をお伝えします。ぜひ参考にしてください。

根気強く見守る

 根気強く見守ることが大切です。回復期は、良くなったり悪くなったりと症状に波があるものです。一喜一憂せずに、長い目で見守ってください。

焦らせたり、プレッシャーをかけたりしてはいけません。

「早く良くなってほしい」「もっと頑張ってほしい」という気持ちはあると思いますが、それが患者にとって大きなプレッシャーになることがあります。

「ゆっくりでいいよ」「焦らなくていいよ」というメッセージを伝え続けてください。

小さな変化を認め、褒める

小さな変化を認め、褒めてあげましょう。

「今日は少し気分が良さそうだね」「散歩に行けたんだね」など、患者の小さな変化や努力を認め、言葉にして伝えてあげてください。自己肯定感を高めることにつながります。そのさいプレッシャーになる言葉ではなく、安心させることが重要です。

また、患者の話に耳を傾け、気持ちに寄り添ってあげましょう。アドバイスをするよりも、ただ聞いてもらうだけで心が楽になることもあります。

生活リズム・食生活のサポート

患者が規則正しい生活を送れるよう、ご家族も協力して生活リズムを整えましょう。

規則正しい生活リズムは、心と体を整えて、回復へと良い方向に導いてくれます。

例えば朝の気性の手助けをしてあげたり、食事を一緒にとるようにして声をかけたりします。食事は栄養バランスの良い食事をとれるようサポートしましょう。

しかし、無理をさせてはいけません。患者が「しんどい」と訴える時や、食欲がない時は、無理強いせずに休ませてあげてください。

正しい知識を持つ

鬱病について正しい知識を持つことで、患者への理解が深まり、適切な対応ができるようになります。

主治医とも連携します。定期的な受診に付き添ったり、主治医に気になることを伝えたりするなど、積極的に連携を取ることで、より良い治療につながります。

以前の症状が出てきた、気分が沈む日が続く、不眠になるなど、再発のサインに注意し、異変を感じたら速やかに主治医に相談しましょう。

自身のケアも大切にする 

ご自身のケアも大切にしましょう。ささえる家族の皆様も、患者のサポートで疲弊してしまうことがあります。

無理をしてしまったり、誰にも相談できずに抱え込んでしまったりすると、ご家族が潰れてしまいます。

ご自身の休息やリラックスできる時間も大切にし、必要であれば地域のサポート機関や相談窓口を利用することも検討してください。

オンラインのコミュニティなどで、知らない人だからこそ言える、ということもあります。心が楽になるのでおすすめです。

鬱病の回復期をサポートしてくれる!心と体が整う「栄養」

鬱病の回復期には、身体から健康になれるよう、症状改善をサポートしてくれる食事が非常に重要になってきます。

しかし、まだ食欲にムラがあるこの時期では、食事だけでは難しい部分もあるので、サプリメントから補うのもおすすめです。サプリメントで補うには医師が処方する医療用サプリメントがおすすめです。

ここでは、うつ病治療をサポートするサプリメントの栄養成分について解説します。

幸せホルモンの材料「トリプトファン」

気分を安定させる「幸せホルモン」セロトニンの材料になるアミノ酸です。トリプトファンの分泌により、多幸感を味わうことができ、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌にも良い影響をもたらします。

体内で作ることができないので、食事から摂る必要があります。

トリプトファンを多く含む食品:

大豆製品(豆腐、納豆、味噌)、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、バナナ、鶏肉、マグロ、卵など

脳の働きをサポート「ビタミンB群」

セロトニンなどの脳の神経伝達物質を作る過程で、重要な役割を果たす栄養素です。

特にビタミンB6はトリプトファンからセロトニンを作るのを助けます。

ビタミンの種類多く含む食品
ビタミンB6鶏肉、マグロ、カツオ、バナナ、にんにく、納豆、じゃがいもなど
ビタミンB12貝類(しじみ、あさり)、魚介類(サバ、サンマ)、レバーなど
葉酸緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー・キャベツ)、レバー、大豆製品、海藻類、緑茶など

脳の炎症を抑える「オメガ3脂肪酸」

脳の神経細胞の健康を保ち、炎症を抑える働きがある良質な油です。気分を安定させる効果も期待されているため、鬱病の回復をサポートしてくれます。

体内で生成できず、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。えごま油やアマニ油をほんの少し料理にプラスするなど、無理なく摂取しましょう。

オメガ3脂肪酸を多く含む食品:

青魚(サバ、イワシ、サンマ、マグロ)、魚卵(いくら・たらこ)、えごま油、アマニ油、ナッツ類(くるみ)、チアシードなど

心身の活力を支える「鉄分」

赤血球の材料になり、全身に酸素を運ぶ役割を担うミネラルです。脳内の神経伝達物質の生成に大きく関わっており、精神の安定や気分の向上にも深い影響を及ぼします。

不足すると疲れやすさや集中力の低下、めまい、貧血などを引き起こすことがあります。特に女性は、月経による出血や妊娠・授乳によって鉄分が不足しがちです。

鉄分を多く含む食品:

レバー、赤身肉、海藻類、豆類、ほうれん草、魚介類、貝類(あさり、しじみ)など

骨と心の健康に「ビタミンD」

骨や筋肉の健康維持、カルシウム吸収の促進、免疫機能の調整、脳の働きや気分の安定など、重要な役割を担っている栄養素です。感染症やアレルギー反応も抑制する役割があります。不足すると、骨が弱くなったり、免疫力が低下したりする可能性があります。

日光を浴びることでも体内で作られます。

ビタミンDを多く含む食品:

きのこ類(しいたけ、きくらげ)、魚介類(サケ、イワシ、カツオ、サンマ)、魚卵(いくら・すじこ)、卵黄など

心の安定を助ける「ミネラル」

心の安定を助ける栄養素、必須ミネラルには、主に亜鉛とマグネシウムがあります。

亜鉛

脳の働きや免疫機能の調節など、様々な生命活動に関与しています。不足すると免疫力低下や気分の落ち込みにつながることがあります。

亜鉛を多く含む食品

牡蠣、牛肉、豚肉、鶏肉、レバー、卵、大豆製品、ナッツ類、海藻類など

マグネシウム

骨や歯の形成、筋肉の収縮、神経伝達、血圧調整などのほか、精神的な安定に役立つミネラルで、リラックス効果も期待されます。不足すると不眠やイライラに繋がる恐れがあります。

マグネシウムを多く含む食品

海藻類、ナッツ類、豆類、イワシ、緑黄色野菜(ほうれん草)など

ミネラルの種類栄養素の役割多く含まれる食品
亜鉛・脳の働きや免疫機能の調節など、様々な生命活動に関与・不足すると免疫力低下や気分の落ち込みにつながる牡蠣、牛肉、豚肉、鶏肉、レバー、卵、大豆製品、ナッツ類、海藻類など
マグネシウム・骨や歯の形成、筋肉の収縮、神経伝達、血圧調整・精神的な安定、リラックス効果・不足すると不眠やイライラに繋がる藻類、ナッツ類、豆類、イワシ、緑黄色野菜(ほうれん草)など

一人で悩まないで!鬱病の回復期を乗り越えるために、コミュニティの活用を

うつ病をサポートする家族も、一人で悩まないで、抱え込まないでください。

近所や身内になかなか相談できないと、一人で悩んでいる方もいるでしょう。専門機関への相談も良いですが、同じ悩みを持った人がいる、と知るだけで心が軽くなることがあります。

同じような境遇の人と情報交換や話ができると救われることがあります。知らない人の方が話しやすい事もあります。オンラインコミュニティは、そのような意味では地域コミュニティよりも試しやすいかもしれません。

また、オンラインなら自宅から参加可能で、時間を作ってわざわざ外出する手間はありません。専門家の意見やアドバイスも聞けて、登録料無料です。

ぜひ、一度のぞいてみてください。

鬱病の回復期は、無理のない範囲で心と体を整えていこう

鬱病の回復期はとても重要だが焦らず無理のない範囲ですすめていきましょう。

本人のペースで少しずつ、根気よく見守ることが大切です。

身体と心を整え、健康な体へとサポートしてくれる栄養をしっかり取る事も重要です。

食欲にもまだムラがあるこの時期にはサプリメントも効果的です。。

そして、ささえる家族が潰れてしまわないよう、同じ悩みを持った人と励まし合う、相談し合う、といった環境がとても大切です。
1人で悩まないで、ぜひ、疾患コミュニティをご活用ください。