女性の脇汗・脇の臭いの原因は?保険適用の治療と対策方法を紹介

脇汗によって衣服に汗ジミや黄ばみができたり、臭いが気になったりすることはありませんか?脇は汗腺が多く、汗によるお悩みを感じやすい部位です。 本記事では女性の脇汗が増える原因から、自分でできる脇汗や臭いの対策方法を紹介します。また、大量の脇汗が分泌される「腋窩多汗症」の症状や治療法なども解説します。 脇汗にお悩みの方はぜひお役立てください。

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脇汗によって衣服に汗ジミや黄ばみができたり、臭いが気になったりすることはありませんか?脇は汗腺が多く、汗によるお悩みを感じやすい部位です。

本記事では女性の脇汗が増える原因から、自分でできる脇汗や臭いの対策方法を紹介します。また、大量の脇汗が分泌される「腋窩多汗症」の症状や治療法なども解説します。

脇汗にお悩みの方はぜひお役立てください。

女性の脇汗でよくあるお悩み

季節を問わず、衣服のシミや臭いの原因となる脇汗。女性が感じやすい脇汗のお悩みには、下記のようなものがあります。

  • ・衣服に汗ジミができて、人目が気になる
  • ・脇汗の臭いが周囲に漂っていないか心配になる
  • ・冬でも脇汗パッドやタオルが手放せない
  • ・グレーなど脇汗が目立つような服が着られない
  • ・白シャツや下着が脇汗で黄ばんでしまう
  • ・1日に何度も制汗剤を塗り直さないといけない

このように、脇汗によって人目が気になったり、着られる洋服が制限されたりと、脇汗によるお悩みはさまざまでしょう。脇は汗腺が多いので汗が目立ちやすいだけでなく、アポクリン汗腺による発汗によって、臭いを発生することもあります。

女性の脇汗量が増える原因

そもそもどうして汗をかくのかというと、適切な体温を保つためです。汗は皮膚で蒸発する際に周りから熱を吸い取り、皮膚の温度を下げる作用があります。この仕組みから、気温が高い日や運動したあとに汗を分泌することで、身体が熱くなりすぎるのを防ぎます。

しかし、脇汗は体温の上昇以外にも、ストレスや緊張、味覚の刺激などが影響して増えることもあります。また、脇には無臭の汗を流す「エクリン汗腺」と、独特の臭いを発しやすい「アポクリン汗腺」の2種類が存在します。ほとんどの汗がエクリン汗腺からの分泌になりますが、ホルモンバランスが変化する思春期はアポクリン汗腺が刺激されやすくなります。

2種類の汗腺があることをふまえて、脇汗量が増えるさまざまな原因を見ていきましょう。

体温上昇による温熱性発汗

気温が高い日や運動したあと、体温が高くなりすぎないように起こる発汗を温熱性発汗といいます。脇だけでなく、手のひらと足の裏を除く全身のエクリン汗腺から無臭の汗が分泌されます。

ストレス・緊張による精神性発汗

精神性発汗は人前に出て緊張したときや驚いたときなど、感情やストレスによって発汗することです。温熱性発汗と違い、手のひら、足の裏、脇など局所的に汗をかきます。

辛いものを食べたときに起こる味覚性発汗

味覚性発汗は、辛いものを食べたときに起こる発汗のことです。香辛料がきいた辛いものやすっぱいものを食べたとき、味覚の刺激によって反射的に起こります。額や鼻に起こりやすく、エクリン汗腺から分泌されます。食べ終わると汗が自然に引くのが特徴です。

自律神経や女性ホルモンバランスの乱れ

脇汗や手汗が増える原因として、自律神経の乱れが挙げられます。自律神経には、身体の活動性を上げる交感神経と休息やリラックスに働く副交感神経があります。汗腺は交感神経の作用によって発汗を促進する仕組みです。そのため、なんらかの原因で交感神経が過剰に活性化していると、脇汗や手汗の量が増えます。

自律神経が乱れる原因はさまざまですが、主に挙げられるのはストレス、睡眠不足、食生活の隔たりなど、生活習慣によるものです。

また、思春期、月経、妊娠、更年期などの時期によるホルモンバランスのゆらぎも自律神経に影響します。

更年期障害などの病気や薬の副作用

更年期障害、脳梗塞、末梢性神経障害など、病気に合併して汗が増えることがあります。このように病気によって特定の部位(脇、手のひら、足など)の汗が増える症状を「続発性局所多汗症」といいます。

更年期に起こりやすい発汗は、更年期障害の症状である「ホットフラッシュ」に該当します。ホットフラッシュの症状は、発汗、のぼせ、ほてりなどが挙げられます。女性ホルモンの一つ、エストロゲンが急激に減少することにより自律神経が不安定になることが原因です。ホルモンバランスが崩れるとホットフラッシュの発汗で脇汗の臭いが気になることもあります。

ホットフラッシュを含めた更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(内服薬・貼り薬など)や漢方薬などがあります。

続発性局所多汗症は、解熱剤や向精神薬など、薬の副作用で発症することもあります。

腋窩多汗症によるもの

日常生活に支障が出るほど脇汗が多い状態が続いている場合は、「原発性腋窩多汗症」の可能性があります。原発性腋窩多汗症は多汗症の一種で、脇だけに大量の汗が分泌されるのが特徴です。腋窩多汗症の汗はエクリン汗腺から分泌されるので、汗そのものは臭いがしません。

腋窩多汗症の明確な原因はわかっていませんが、上記で挙げられているストレスやホルモンバランスの崩れによる自律神経の乱れが関係していると考えられます。腋窩多汗症の場合、医療機関で保険適用の治療が可能です。

自分でできる女性の脇汗・臭い対策方法

脇汗によるお悩みは、制汗剤や脇汗パッドを使って対策できます。自分でできる脇汗の対策方法を紹介します。

制汗剤・デオドラント剤を使う

脇汗対策として気軽に取り入れられるのが、ドラッグストアなどで購入できる市販の制汗剤です。制汗剤には制汗効果が承認された有効成分が配合されています。高い制汗効果を重視する方は、クロルヒドロキシアルミニウム配合の制汗剤がおすすめです。汗腺を防ぐ作用があり、市販のさまざまな制汗剤に使用されている成分です。

制汗剤にはスプレータイプ、クリームタイプ、スティックタイプ、ロールオンタイプなどさまざまな種類があります。スプレータイプは、一度に広範囲に使用できるので全身の汗対策におすすめです。

クリームタイプは密着力が高く、脇や手のひらに馴染ませやすいです。スティックタイプやロールオンタイプは脇にもムラなく塗りやすく、外出先でも手軽に塗り直せます。このように種類ごとに特徴やメリットがあるので、シーンによって使い分けるのも良いでしょう。

また、臭いが気になる方はデオドラント剤もおすすめです。デオドラント剤は発汗そのものを抑える効果はありませんが、臭いの元となる雑菌を抑えたり、発生した臭いを吸着したりする効果があります。なかには両方の機能を備えているアイテムもあるので、目的に合ったものを選びましょう。

脇汗パッド・脇汗対策インナーを使う

脇汗が衣服に沁みるのを抑えたい方は、脇汗パッドや脇汗対策インナーもおすすめです。

脇汗パッドは手持ちの衣服に貼るだけで汗を吸収できるので、脇汗を気にせずにファッションを楽しめます。脇汗が服に沁みることで残りやすい黄ばみ汚れを防ぐのにも効果的でしょう。

脇汗対策ができるインナーは、脇の部分に汗取りパッドがついていて汗を吸収します。抗菌防臭加工や通気性にこだわった仕様のものが多く、脇汗以外の着心地にもこだわっています。

栄養バランスの整った食生活を意識する

自律神経の乱れは、脇汗が増える原因の一つです。自律神経を整えるには、栄養バランスの整った食生活を意識することも重要です。

たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素を意識して、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を意識しましょう。朝は忙しいという方は、バナナ+ヨーグルトや、おにぎり+野菜ジュースなどの組み合わせでも、不足しやすいカルシウムを摂取できます。

また、動物性脂質は汗の臭いにつながりやすいです。肉類ばかり食べず、緑黄色野菜も積極的に摂取しましょう。アルコールやカフェイン、ニコチンは交感神経を刺激する成分が含まれているため、過剰に摂取すると発汗が促進されます。汗の多さが気になるなら、飲酒や喫煙を控えることも検討しましょう。

参考:ちょうどよいバランスの食生活|農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課

運動や入浴で汗をかく習慣をつける

運動不足で汗をかく習慣がないと、汗腺の機能が衰えてべたつきや臭いが気になる汗になりやすいです。サラサラとした良い汗を流すためには、普段から運動や入浴で汗をかく習慣をつけて、汗腺を働かせるように意識しましょう。

運動は、多汗症の原因となるストレスにも効果的です。運動すると脳の神経伝達物質である「セロトニン」が増えます。セロトニンは精神の安定や安心感などストレスに対して効能があり、自律神経を安定させるのに重要な物質です。

運動のなかでもウォーキング、ランニング、水泳、ヨガなどの有酸素運動は脳とセロトニンを活性化させることから、ストレス解消効果が期待できるでしょう。

女性の脇汗による黄ばみ汚れの対処法

脇汗をかくことによって、衣服に黄ばみ汚れが残ってしまったことはありませんか?衣服の黄ばみは、汗と皮脂の蓄積が原因です。

黄ばみができてしまった場合、重曹でのつけ置きが効果的です。大さじ1くらいの重曹をお湯に溶かしたものに衣服を揉みこんで、30分から1時間ほどつけ置きしてから洗濯機で洗います。頑固な汚れの場合は、漂白剤を溶かしたお湯に30分~1時間ほどつけ置きするのがおすすめです。

また、普段から衣服に脇汗パッドを貼っておくことで、脇汗が衣服に沁みることや黄ばみ汚れができることを予防できます。

脇汗の量や臭いの程度によっては「原発性腋窩多汗症」や「ワキガ」の可能性も

上記のような対策をしても日常生活に支障が出るほど脇汗の量が多かったり、強い臭いを感じたりする場合、原発性腋窩多汗症やワキガ(腋臭症)の可能性があります。その場合、医療機関にて保険適用で治療薬を処方してもらえます。

腋窩多汗症とワキガの症状やメカニズムは異なりますが、腋窩多汗症の場合も臭いが気になることがあります。それぞれの症状や臭いの原因は下記のとおりです。

2つの詳しい特徴を見ていきましょう。

原発性腋窩多汗症とは

多汗症とは、暑いときや運動したあとでなくても、大量の汗をかいてしまう症状のことです。多汗症のなかには全身に汗をかく全身性多汗症と局所多汗症があります。そのなかで、内科的疾患や薬の副作用などによって起こる多汗症を「続発性多汗症」といい、原因がはっきりしない多汗症を「原発性多汗症」といいます。

「原発性腋窩多汗症」は、特に原因となる病気がないのに、脇だけに大量の汗をかく局所多汗症の一種です。脇に存在する汗腺はエクリン汗腺とアポクリン汗腺がありますが、腋窩多汗症はエクリン汗腺から大量の汗が分泌されます。エクリン汗腺から発汗される汗は水分なので、汗そのものは無臭です。

しかし、汗が皮脂や垢と混ざることで雑菌が繁殖し、そこから汗臭さを感じることもあります。

このように腋窩多汗症は臭いの原因になることもあれば、衣服の汗ジミや黄ばみの原因にもなります。学校生活や社会生活にも不自由を感じる方が多い症状です。

原発性腋窩多汗症の診断基準

日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診断ガイドラインでは「明らかな原因がないまま身体の一部分だけ過剰な発汗が6ヶ月以上続いている」ことと、以下の「6つの項目のうち2つ以上当てはまること」で局所多汗症と診断されます。

  1. 最初に症状が現れたのが25歳以下である
  2. 左右対称に発汗が現れる
  3. 睡眠中は発汗が止まっている
  4. 1週間に1回以上、多汗のエピソードがある
  5. 家族歴がある
  6. 多汗によって日常生活に支障をきたしている

さらに、局所多汗症のなかでは4段階の重症度を測る指標があります。

  1. 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
  2. 発汗は我慢できるが、日常生活はたまに支障がある
  3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  4. 発汗は我慢で生きず、日常生活に常に支障がある

上記のなかで3、4に該当する場合、重症と診断されます。

多汗症は日常生活に支障をきたしたり、汗疹から皮膚炎につながったりすることもある症状です。

「腋窩多汗症かもしれない」と感じたら、皮膚科や形成外科に相談することを推奨します。

参考:原発性局所多汗症診療ガイドライン2023改訂版|日本皮膚科学会ガイドライン

ワキガ(腋臭症)とは

ワキガ(腋臭症)とは、アポクリン汗腺から分泌される汗が皮脂や細菌によって分解されて、脇の臭いが強くなる症状のことです。

汗の分泌腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺があります。エクリン汗腺は全身に分布している汗腺で、体温調節のために水分を無臭の汗として流します。アポクリン汗腺は脇や耳、陰部などにある汗腺で、ここから分泌される汗は脂質やたんぱく質を含んでいます。この分泌物や皮脂を細菌が分解することで、ワキガの独特な臭いが発生します。

ワキガのある人はアポクリン汗腺が発達していて、数が多く、大きさも大きいです。アポクリン汗腺が発達する原因は、遺伝によるものが多いです。後天的な要因としては性ホルモンの影響、ストレスや飲酒・喫煙などの生活習慣、肥満などが挙げられます。

ワキガの効果的な治療は、アポクリン汗腺の切除手術です。腋窩を1~2ヶ所切除して、皮膚を捲り上げ、アポクリン汗腺を取り除きます。汗腺そのものを取り除くことから、一度の治療で高い方かが期待できます。


ほかには、電磁波で臭いの元となる汗腺を破壊するミラドライ、一時的に脇汗を抑制するボトックス注射などがあります。塩化アルミニウムローションを塗ることも、発汗の抑制効果からワキガに効果的です。

原発性腋窩多汗症の治療方法

原発性腋窩多汗症の場合、医療機関で外用薬や注射による保険適用の治療を受けられます。治療方法には以下のようなものがあります。

外用薬

原発性腋窩多汗症の代表的な治療は外用薬です。多汗症の外用薬にはさまざまなものがありますが、原発性腋窩多汗症用の治療薬にはラピフォートワイプとエクロックゲルがあります。どちらも保険適用で処方されています。

有効成分は異なりますが、どちらも作用機序は同じです。発汗を促進する神経伝達物質(アセチルコリン)の作用を阻害する抗コリン作用によって、エクリン汗腺が発汗指令を受け取れないようにします。1日1回、使用を継続することで、効果が期待できるでしょう。

抗コリン薬(内服薬)

内服薬では抗コリン薬(プロバンサイン)などが処方されます。抗コリン薬は、発汗の原因となる神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑制します。エクリン汗腺からの発汗を抑制することで多汗症に効果が期待できますが、口の渇きや眠気などの副作用が起こる可能性があるので、服用の際は注意が必要です。

ボトックス注射

ボトックス注射とは、ボツリヌス菌から抽出した成分を注入することで、発汗の原因となる神経伝達物質「アセチルコリン」の作用を抑制します。脇の皮膚に直接注射することで、汗腺の過剰な活動をブロックします。ボトックス注射は腋窩多汗症が重症の場合、保険適用になります。

女性の脇汗治療ならおうち病院「オンライン多汗症外来」がおすすめ

脇汗に悩んでいる女性に向けて、自分でできる脇汗対策方法から、腋窩多汗症の症状や治療法について解説しました。

脇汗は制汗剤や脇汗パッドで対策することも可能ですが、日常生活に支障をきたすほど脇汗が多い場合、多汗症の可能性があります。
もし「脇汗が多くて困っているけど、多汗症かどうか自信がない」「病院に行くのは少し抵抗がある」と迷っているなら、一度「オンライン多汗症外来」を利用してみませんか?

オンライン多汗症外来は、自宅にいながら多汗症の診察やお薬の処方が可能です。腋窩多汗症用の治療薬ラピフォートワイプなども保険適用で取り扱っています。

多汗症を放置していると脇の臭いにつながったり、汗疹によって皮膚炎を起こしたりする可能性もあります。脇汗の多さに困っている方はお気軽にご相談ください