更年期障害と鬱病の違いは?鬱病との関係性、症状、家族の支え方を解説

鬱病と更年期は密接な関係があります。そして、更年期の鬱は、家族の理解とサポートが不可欠です。

本記事では、更年期と鬱病の関係性や、更年期障害と鬱病の違い、具体的な症状を解説します。合わせて、ご家族の支え方について解説します。大切なパートナーを支えるための参考になれば幸いです。

「これって更年期?それとも鬱病?」見過ごされがちな心のSOS

更年期障害と混同してしまい、見落とされがちな鬱病。

「更年期だから仕方ない」と自己判断してしまい、適切なケアを受けずに過ごしていると、症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたしてしまうこともあります。

更年期障害との違いは?鬱病の症状チェック

まずは、更年期障害と言われる症状について確認しましょう。

ケースとして最も多い順に並べています。

自覚のある更年期症状の内訳

  1. 疲れやすい
  2. 肩こり・腰痛・手足の痛みがある
  3. 汗をかきやすい
  4. 怒りやすく、すぐイライラする
  5. 寝つきが悪い、または眠りが浅い
  6. くよくよしたり憂鬱になったりする
  7. 腰や手足が冷えやすい
  8. 頭痛、めまい、吐き気がよくある
  9. 顔がほてる
  10. 息切れ、動悸がする

引用元:更年期 | 女性特有の健康課題 | 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省委託)

次に、鬱病と思われる症状についてまとめました。参考にしてください。

  1. 何をしていても楽しくない、やる気が出ない
  2. これまで好きだったことにも関心が持てない
  3. イライラ、焦燥感など、些細なことで感情的になる
  4. 自分を責める気持ち、罪悪感が高まる
  5. 自分には価値がないと感じる
  6. 物事を決められない
  7. 不安や絶望感を感じる
  8. 死にたい、消えたいと感じる
  9. 夜眠れない、途中で目が覚める、または一日中眠い
  10. 体がだるい、何をしてもすぐに疲れる
  11. 食欲がない、または食べ過ぎてしまう
  12. 頭痛、めまい、動悸、肩こりなどの症状が続き、検査しても異常がない

これらが複数当てはまる場合、鬱病の可能性が高まっています。

これらの中でも、特に1~8の精神症状が1つでも当てはまる場合は、速やかに受診をおすすめします。まずは婦人科を受診して、症状により心療内科や精神科を受診します。

また、8の場合はかなり緊急です。ご家族は注意して、受診をサポートしてあげてください。

なぜ更年期に鬱病になりやすいの?

なぜ更年期に鬱病になりやすいのか、その理由を確認していきましょう。

更年期に鬱病になりやすい理由1.ホルモンバランスの著しい変化

女性ホルモンであるエストロゲンは、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)の働きに深く関与しています。これらの物質は、私たちの気分や意欲、睡眠、食欲などを調整する上で重要な存在です。

更年期に入り、エストロゲンが大きく変動したり減少したりすると、これらの神経伝達物質のバランスが崩れやすくなります。これにより、気分の落ち込みや不安感が生じやすく、鬱病の発症リスクが高まるのです。

更年期に鬱病になりやすい理由2.身体症状によるストレスの増大

更年期特有の症状である、ホットフラッシュや発汗、動悸、めまい、肩こり、関節痛といった身体症状は、非常に不快であり、日常生活に大きなストレスを与えます。

数年前の若かった自分と違い、身体が思うように動いてくれず、日常生活に支障をきたします。

こうした慢性的な身体の不調は、精神的な負担を増大させ、「眠れない」「体がだるい」といった症状が続くことで、気分の落ち込みがさらに深まり、鬱病へと繋がってしまうことがあります。

更年期に鬱病になりやすい理由3.人生の転換期における心理的要因

更年期は、多くの場合、子育てがひと段落したり、親の介護が始まったり、職場での役割が変化したりと、人生の大きな転換期と重なります。

これらのライフイベントに伴うストレス、役割の変化への戸惑い、将来への不安などが精神的な負担となり、鬱病の発症を促す要因となることも少なくありません。

また、パートナーとの関係性の変化、子どもの思春期や自立などにより、孤独感、焦り、絶望などに繋がりやすいのです。

【ご家族へ】更年期鬱病の回復に必要なこと

更年期鬱の患者にとって、ご家族の理解とサポートはとても重要です。ここでは、家族がとるべき行動、支え方について解説します。参考になれば幸いです。

更年期と鬱病を理解する

更年期によるホルモンの変化が、身体的な不調や精神的な不調を引き起こすこと、そしてそれが鬱病という病気につながる可能性があることを理解しましょう。決して「気の持ちよう」や「わがまま」ではありません。

「ヒステリックにウンザリ」「また家事をさぼって寝てたのか」などと、理解を示さないことが一番良くないことです。

家族の態度が更年期鬱病の患者を追い詰めることは避けましょう。

変化にいち早く気づき、寄り添う

上記のチェックリストを参考に、症状をよく見ていち早く気付いてあげましょう。

  • 以前と比べて元気がない、口数が減った
  • 趣味や好きなことに関心がなさそうに見える
  • イライラしやすくなった、怒りっぽい
  • 「疲れた」「だるい」と頻繁に口にする

大切なご家族にこのような変化が見られたら、「どうしたの?」「何か辛いことはない?」と優しく声をかけ、話を聞いてあげてください。

家族間のコミュニケーションは何より重要です。

家事や役割分担を見直す

家事や育児・介護の分担や見直しをしましょう。

鬱病の症状がある中で、従来の家事や役割を全てこなすことは非常に困難です。家族で協力し、家事の分担を見直したり、患者の負担を軽減できる方法を一緒に考えたりすることも、大切なサポートです。子どもたちや父母・義父母に協力してもらうのも良いでしょう。

また、体調が悪そうなのに当たり前のように家事を強要せず、手伝うか家事を変わり、休ませてあげましょう。

無理に励まさない、焦らせない

更年期鬱病の患者に対し、早く治ってほしいと思うあまり「頑張って!」「早く元気出して!」といった声かけをしてしまいがちです。しかし、このような言葉は、かえって患者を追い詰めてしまうことがあります。

鬱病患者は、すでに充分頑張っています。「辛いんだね」「しんどいんだね」といった言葉をかけ、まずはその気持ちをそのまま受け止めて、「大丈夫だよ」と安心させてあげることが大切です。

専門機関への受診をサポートする

更年期鬱病の患者が、ご自身の不調を訴えたり、ご家族が変化に気づいたりした時は、更年期に詳しい婦人科、あるいは心療内科、精神科の受診を検討してください。

もし本人が受診をためらうようであれば、一緒に病院に行く、付き添って話を聞いてあげるなど、具体的な通院のサポートをしましょう。外に出ることが難しければ、オンラインクリニックも検討します。

専門医による適切な診断と治療が、回復への第一歩となります。

更年期鬱病を乗り切る「栄養」の話

鬱病の回復には、心身のバランスを整えてくれる食事が非常に重要です。ここでは、回復をサポートしてくれる栄養について解説します。

食欲がない時は、サプリメントから補うのもおすすめです。サプリメントは市販品ではなく、医師へ相談して処方してもらえる医療用サプリメントが安心です。

更年期鬱病の改善をサポートする栄養素リスト

積極的に取り入れてほしい栄養素を表にまとめました。ぜひ参考にしてください。

栄養素役割期待される効果多く含む食べ物
トリプトファン・幸せホルモン「セロトニン」の材料・睡眠ホルモン「メラトニン」にも関与・精神の安定・リラックス・睡眠の質の改善肉類、マグロ、カツオ、サケ、イワシ、大豆製品、乳製品 バナナ、ナッツ類、卵など
ビタミンB群トリプトファンからセロトニンを合成する過程で不可欠な補酵素・神経機能の維持・精神の安定・疲労感の軽減・鬱病症状の改善ビタミンB6:マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、にんにく、レバーなど
ビタミンB12:魚介類(アサリ、カキ、サンマ)、レバー、卵、乳製品など
葉酸:海藻類、レバー、ほうれん草、小松菜、豆類、ブロッコリーなど
オメガ3脂肪酸・神経細胞間の情報伝達をスムーズする・抗炎症作用や神経保護作用がある・精神の安定・不安の軽減・認知機能の改善・鬱病症状の緩和サバ、イワシ、サンマ、アジ、マグロ、サケ、えごま油、亜麻仁油など
鉄分酸素を運ぶヘモグロビンの材料・精神の安定・気分の向上・貧血の改善レバー、赤身肉、カツオ、アサリ、ほうれん草、小松菜、ひじきなど
ミネラルホルモンバランスを整え、神経伝達物質の合成に関わる・精神の安定・脳の健康維持・ストレス軽減・不安の緩和・睡眠の質の改善マグネシウム:ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、ほうれん草、海藻類、豆類、玄米など
亜鉛:牡蠣、牛肉、豚肉、卵黄、チーズ、ナッツ類など
ビタミンD骨や筋肉の健康維持、カルシウム吸収の促進、免疫機能の調整、脳内の神経伝達物質や脳の働きを高める・健康維持・精神の安定・鬱病症状の緩和鮭、サンマ、キノコ類(きくらげ、しいたけなど)、卵など※日光浴でも体内で生成
大豆イソフラボン女性ホルモン「エストロゲン」と似た働きをする・更年期症状の緩和大豆製品(納豆、豆腐、味噌、豆乳、油揚げ、きなこなど)

一人で悩まないで!コミュニティの活用で更年期鬱病を乗り越えよう

更年期と鬱病は、密接な関係にあり、多くの女性が経験する可能性があります。

また、男性の更年期鬱もありえます。

適切な知識を持ち、早期に専門家へ相談することで、症状は改善します。

しかし、大切な家族が更年期鬱を発症したら・・・支えるのは困難を極めるでしょう。

鬱病をサポートする家族も、一人で悩まないで、同じ悩みを持った人と励まし合い相談し合う環境が大切です。鬱病ケアに関する情報交換もでき、あなたの支えとなってくれるかもしれません。

オンライン疾患コミュニティは、気軽でプライバシーが守られるので、おすすめです。

更年期鬱病の回復には家族の温かいサポートが不可欠

更年期鬱病の回復には、家族の温かいサポートが不可欠です。更年期と鬱病を正しく理解して、患者に寄り添ってあげてください。

身体と心を整え、健康な体へとサポートしてくれる栄養をしっかり取るのも重要です。食欲がない時には医療用サプリメントも効果的です。

ささえるあなたが潰れないよう、同じ悩みを持った人と励まし合う、相談し合う、情報交換、といった環境がとても大切です。

1人で悩まないで、ぜひ、オンライン疾患コミュニティをご活用ください。