単純ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)とは?方法・使用する薬・メリットなどを解説

単純ヘルペスが再発した場合、再発抑制療法(PIT療法)を受けられる可能性があります。単純ヘルペスの再発を抑制することで、悪化の防止や治癒の促進などが期待できます。 今回は、単純ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)の手順や使用する薬、メリットなどについて詳しく解説します。

目次

単純ヘルペスが再発した場合、再発抑制療法(PIT療法)を受けられる可能性があります。単純ヘルペスの再発を抑制することで、悪化の防止や治癒の促進などが期待できます。

今回は、単純ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)の手順や使用する薬、メリットなどについて詳しく解説します。

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)とは

再発抑制療法(PIT療法)は、単純ヘルペスの再発を抑制し、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進することを目的とした手法です。患者が初期症状を認めた際に、あらかじめ処方された薬剤を自己判断で服用します。海外では一般的に「1day treatment(ワンデイ・トリートメント)」と呼ばれています。

再発抑制療法(PIT療法)の対象になる人

再発抑制療法(PIT療法)は、以下すべての条件に当てはまる人を対象としています。

  • ・再発を繰り返すタイプの単純疱疹
  • ・同じ病型の単純疱疹が年3回以上繰り返す
  • ・再発時の初期症状を自己判断できる

それぞれ詳しく解説します。

再発を繰り返すタイプの単純疱疹

再発性単純疱疹は、過去に発症したものが再発を繰り返すタイプの単純疱疹です。再発の頻度や周期は個人差があります。例えば、夏季に紫外線への曝露をきっかけに再発することがあり、日焼け予防や適切なケアを行いながら再発を予防しつつ、初期症状が現れた際に再発抑制療法(PIT療法)を開始します。

同じ病型の単純疱疹が年3回以上繰り返す

単純疱疹は、単純ヘルペスウイルス1型か2型の感染によって発症します。同じ病型の単純疱疹を年3回以上繰り返すことも、再発抑制療法(PIT療法)を受けるための条件です。ただし、アメナリーフによる再発抑制療法(PIT療法)に関しては、再発の頻度は問われません。

再発時の初期症状を自己判断できる

再発抑制療法(PIT療法)は初期症状が現れたときにあらかじめ薬を服用する方法のため、患者が初期症状を自己判断できる必要があります。再発したタイプのヘルペスの初期症状は、約8割の患者が自己判断できるといわれています。

約2割の患者は自己判断ができないため、病型や再発頻度の条件を満たしているからといって、必ず再発抑制療法(PIT療法)を受けられるわけではありません。

単純ヘルペスの初期症状は、ピリピリやムズムズといった違和感です。初期症状について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:ヘルペスの初期症状とは?現れたときの対処法や日常の注意点

PIT療法の対象となる「単純ヘルペス」とは

再発抑制療法(PIT療法)について理解するには、単純ヘルペスについて確認しておくことが大切です。

単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)か単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)によって引き起こされる感染症です。HSV-1は主に口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスを引き起こします。

ただし、口唇ヘルペスの患者が口による性器への接触によって、HSV-1による性器ヘルペスを発症する場合もあります。

厚生労働省によると、世界の単純ヘルペスウイルスの感染者数は、HSV-1が約37億人(67%)、HSV-2が約4,170万人(11%)とされています。

参照元:FORTH|最新ニュース|2017年|単純ヘルペス、性器ヘルペス (ファクトシート)

単純ヘルペスの病型について、さらに詳しく見ていきましょう。

単純ヘルペス1型(HSV-1)

単純ヘルペス1型(HSV-1)は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)による感染症です。

主に口唇ヘルペスを引き起こすものの、性器ヘルペスとして現れる場合もあります。口唇ヘルペス患者からの感染によって発症した性器ヘルペスも、病型としては単純ヘルペス1型(HSV-1)です。

単純ヘルペス1型(HSV-1)の症状や感染経路、治療法などについて詳しく解説します。

症状

口唇ヘルペスの多くは無症状で、大半の人は自身の感染に気づいていないといわれています。症状は、感染したところに痛みを伴う水ぶくれが生じること、また口腔内の場合はただれが現れます。

初期症状は、患部のピリピリやチクチク、ムズムズといった痛みや違和感、かゆみなどです。また、焼け付くような痛みが現れる場合もあります。

一度、発症すると再発を繰り返す傾向があるため警戒が必要です。

感染経路

感染経路は、口と口の接触です。唾液や傷口、皮膚の表面に存在するウイルスと接触することで感染します。また、性器に接触した場合は、HSV-1による性器ヘルペスになる可能性があります。

HSV-1は、無症状のときにも感染する可能性がありますが、最も感染リスクが高くなるのは炎症を伴う傷があるときです。

また、稀ではありますが、HSV-1が性器に感染している母親から生まれた子供にうつる場合があります。

治療法

単純ヘルペスウイルスを体内から完全に除去する治療法は、現時点では存在しません。抗ウイルス薬の使用によって治癒が期待できるものの、単純ヘルペスウイルスは神経節に潜むことで、いずれ再発する可能性があります。

単純ヘルペス2型(HSV-2)

続いて、単純ヘルペス2型(HSV-2)の症状や治療法について詳しく見ていきましょう。

症状

単純ヘルペス2型(HSV-2)は、単純ヘルペスウイルス2型によって引き起こされる感染症で、性器ヘルペスと同義です。性器ヘルペスは無症状、あるいは自覚できない程に軽い症状で済むことがあります。

多くの患者は自身の感染に気づいておらず、パートナーにうつしてしまうケースも少なくありません。

症状は、1つまたは複数箇所の水ぶくれやただれです。初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、発熱や全身の痛み、リンパ節の腫れなどを伴う傾向があります。

HSV-2と同様に、多くのケースでは再発するものの、初発の場合と比べて症状は軽度です。

発症の前兆として、足や腰、お尻などに、痛みやうずきが生じる場合があります。HSV-1による性器ヘルペスは、症状が現れないか自覚ができないほど軽い症状です。また、HSV-2と比べて再発の頻度が低い傾向にあります。

感染経路

HSV-2の感染経路は、性行為です。性器の表面や皮膚、傷口、体液などとの接触によってうつります。また、症状がないときや、症状が現れていない部位との接触によって感染する可能性も否定できません。

稀ではありますが、HSV-1が性器に感染した場合と同じく、HSV-2も分娩時に母親からうつる可能性があります。

治療法

HSV-1と同じく抗ウイルス薬によってウイルスを体から除去する治療を行います。ただし、体から完全に単純ヘルペスウイルスを除去することはできず、神経節に潜むことで再発の原因となります。

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)に使用する薬

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)では、ファムビルとアメナリーフのいずれかを使用します。再発抑制療法の適応となる患者であれば、健康保険が適用されます。

ヘルペスの再発抑制療法で使用する薬の特徴や飲み方などについて詳しく解説します。

ファムビル

ファムビルは抗ウイルス薬です。単純ヘルペスウイルスの増殖を抑えることによる抗ウイルス作用によって、単純ヘルペスの治癒を促進します。初期症状が現れてから6時間以内に服用し、さらに12時間後を目安として2回目を服用します。

服用のタイミングは、食前や食後などの指定はありません。いつでも服用できることはファムビルのメリットです。

アメナリーフ

アメナリーフは、ファムビルとは異なるメカニズムで抗ウイルス作用を発揮する薬です。

初期症状が現れてから6時間以内に、食後30分以内に服用します。食後に服用する必要があることがデメリットですが、ファムビルとは異なり、2回目の服用は不要です。
また、再発頻度が年3回より少なくても、再発する人であれば対象となります。

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)の流れ

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)について、流れを詳しく解説します。

1.薬の処方

ファムビルとアメナリーフはいずれも処方薬であり、薬局やドラッグストアなどでは購入できません。まずは、かかりつけ医に相談しましょう。再発抑制療法(PIT療法)の条件を満たしていれば、薬が処方されます。

2.薬を携帯しておく

処方された薬を携帯し、必要なときにすぐに服用できるようにしましょう。数時間以内に服用する必要があるため、外出時にも服用できるようにバッグに入れておいたり、会社のプライベートボックスに保管しておいたりしましょう。

3.違和感が出た段階で服用

患者は自身の判断で薬を服用します。ピリピリやチクチク、ムズムズといった痛みや違和感、かゆみなどが現れたら、後回しにせずになるべく早く服用しましょう。6時間程度の猶予があるものの、後回しにすると飲み忘れる可能性があります。

4.早めに医療機関を受診する

再発抑制療法(PIT療法)を開始後、早めに医療機関を受診しましょう。必要に応じて追加の治療を受けることで、悪化の防止や治癒の促進が期待できます。

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)を受ける際に医師に伝えること

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)は、次の場合に行えない可能性があるため、事前に医師に伝えましょう。

  • ・ファムビルやアメナリーフに対するアレルギー症状が出たことがある
  • ・腎機能障害がある、血液透析をしている
  • ・妊娠中、または授乳中
  • ・他に何らかの薬を使用している

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)を受けるメリット

ヘルペスの再発抑制療法(PIT療法)を受けなくとも、治療を受ければ早期改善が期待できます。それでは、再発抑制療法(PIT療法)をあえて受けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。各メリットについて詳しく解説します。

再発のリスクを軽減できる

ヘルペス再発抑制療法(PIT療法)の主なメリットは、再発のリスクを軽減できることです。

再発抑制療法(PIT療法)では、初期症状が出始める前に薬を服用することで、症状を予防または緩和し、再発の頻度を減少させることが期待されます。これにより、再発に伴う不快な症状を最小限に抑えられるため、患者は生活の質が向上します。

再発による影響は仕事や社会生活にも及びます。再発すると、治療や療養のために仕事を休む必要が生じることもあり、これが継続すると職場やプライベートに大きな影響が及ぶでしょう。

再発抑制療法(PIT療法)を受けることで再発のリスクを低減し、生活への影響を軽減できます。

ストレスの緩和

再発の不安や心配からくるストレスを緩和できることも、再発抑制療法(PIT療法)を受けるメリットです。ヘルペスは再発することが一般的であり、再発時には症状や不快感が生じます。

再発抑制療法(PIT療法)によって再発の予防や早期治療が可能となれば、患者はストレスを軽減できます。

周りの人にうつすリスクを抑えられる

ヘルペスは感染力が強く、再発時には他者に感染を広げるリスクがあります。再発抑制療法(PIT療法)によって再発の症状を早期に抑制し、感染を予防することで、周りの人への感染リスクを低減できます。

ただし、再発抑制療法(PIT療法)を受ければ人にうつる心配がなくなるわけではないため、食器やタオルの共有や性行為などは完治するまで避ける必要があります。

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単純ヘルペスの再発が気になる場合は、再発抑制療法(PIT療法)を受けましょう。初期症状が現れた段階で薬を服用することで、再発を抑制できる可能性があります。

再発抑制療法(PIT療法)を受けるためには、事前に医師に相談しなければなりません。しかし、忙しくて医療機関を受診できず、PIT療法を受けられない方も多いのではないでしょうか。

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単純ヘルペスの治療はもちろん、再発抑制療法(PIT療法)の相談も可能なため、忙しい方でもヘルペスの再発に備えることができます。また、薬は自宅の近くの薬局で受け取ることもできるため、外出が難しい方も利用しやすいでしょう。

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