眠れないとお悩みで睡眠薬を検討する時、効果や副作用など、不安を感じている方も多いでしょう。しかし、睡眠薬は適切な治療のもと正しく使えば、つらい不眠を解消し、あなたの生活の質(QOL)を大きく改善する強力な味方になります。
本記事では、睡眠薬の種類とそれぞれの効果について、詳しく解説していきます。合わせて、副作用や危険度の低い薬について紹介します。
睡眠薬の知識を正しく知って適切な治療を取り入れ、健やかな睡眠への第1歩を踏み出しましょう。
目次
【作用メカニズム別】睡眠薬の効果
睡眠薬には、作用メカニズム(身体へのアプローチ方法)が、全く異なるいくつかの睡眠薬の種類があります。
大きく分けると、「脳の活動を抑制する睡眠薬」と「自然な眠りに近い睡眠薬」の2種類です。
ここでは、この2種類について睡眠薬の種類を解説し、効果を比較していきます。
あなたの症状に合うのはどちらか、確認してみましょう。
「脳の活動を抑制する睡眠薬」と「自然な眠りに近い睡眠薬」の効果を比較
脳の活動を抑える薬は、脳機能抑制型睡眠薬と呼び、神経活動を抑制、強制的に脳の活動を抑える薬です。
自然な眠りに近い睡眠薬は、生理的睡眠促進型睡眠薬と呼び、自然な眠りに近い体内の睡眠・覚醒リズムに働きかける薬です。
作用メカニズム別睡眠薬一覧
種類 | 睡眠薬 | 作用メカニズム | 主な薬品製剤名(薬品名) | 効果/特徴 | 副作用 |
脳機能抑制型 | ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | 脳の興奮を抑えるGABA(神経伝達物質)の働きを強め、脳の活動を抑制 | 作用時間別超短時間型/短時間型/中間型/長時間型※詳細は下記の別表参照 | ・入眠困難改善・睡眠維持・抗不安・筋弛緩・抗けいれん・即効性あり※作用時間別効果は下記の別表参照 | 連用すると耐性(効果が薄れること)や依存性、離脱症状(禁断症状)の恐れ※作用時間別副作用は下記の別表参照 |
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | ベンゾジアゼピン系と同様だが、睡眠に関わる部分に選択的に作用 | 作用時間別超短時間型/短時間型※詳細は下記の別表参照 | ・入眠困難改善・睡眠維持・即効性あり | 連用すると耐性や依存性、離脱症状の恐れはあるものの、ベンゾジアゼピン系より少ない | |
生理的睡眠促進型 | オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒を維持するオレキシン(神経伝達物質)の働きを阻害することで自然な眠気を導く | スボレキサント(ベルソムラなど)レンボレキサント(デエビゴなど) | ・入眠困難改善・中途覚醒改善・早朝覚醒改善・熟眠障害改善 | ・依存性や耐性、離脱症状のリスクが低い・悪夢/睡眠時異常行動/翌朝への影響等の報告あり |
デュアルオレキシン受容体拮抗薬 | オレキシン受容体拮抗薬と基本は同じだが、オレキシン1とオレキシン2の両方にバランスよく作用 | ダリドレキサント(クービビックなど) | ・入眠困難改善・中途覚醒改善・早朝覚醒改善・熟眠障害改善 | ・依存性や耐性、離脱症状のリスクが低い・オレキシン受容体拮抗薬よりも副作用のリスクは低いとされている | |
メラトニン受容体作動薬 | 睡眠ホルモンメラトニンの働きを助け、体内時計に働きかけて自然な眠気を促す | ラメルテオン(ロゼレムなど) | ・体内の覚醒、睡眠リズムの改善・体内時計を整えるため、緩やかに効く | ・依存性や耐性、離脱症状のリスクが非常に低い・副作用リスクはほぼない | |
漢方薬 | 自然由来の成分で本来の細胞の働きや自然治癒力を引き出し体質改善をサポート。これにより精神の安定を促す | 抑肝散/酸棗仁湯/加味帰脾湯/半夏厚朴湯など | ・精神的なストレス、感情の浮き沈み等の改善・緊張や不安を静める・胃腸の不調や血行の改善 | ・依存性や耐性、離脱症状のリスクが非常に低い・まれに原材料に対するアレルギー反応あり |
【作用時間別】睡眠薬の効果
ベンゾジアゼピン系睡眠薬と、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間別に分類されます。
超短時間型・短時間型・中間型・長時間型とあります。それぞれの効果と特徴を見てみましょう。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用時間別分類一覧
睡眠薬 | 作用時間 | 主な薬品製剤名(薬品名) | 効果 | 副作用 |
ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | 超短時間型 | トリアゾラム(ハルシオンなど) | ・入眠効果・催眠効果・抗不安・筋弛緩・抗けいれん | 即効性があるため、入眠までの記憶がない、中途覚醒時の行動を覚えていないなどの健忘の恐れ |
短時間型 | ブロチゾラム(レンドルミンなど)/ エチゾラム(デパスなど) | ・入眠効果・催眠効果・睡眠維持・抗不安・筋弛緩・抗けいれん | ・即効性があるため、入眠までの記憶がない、中途覚醒時の行動を覚えていないなどの健忘の恐れ・翌朝へ眠気の持ち越し、倦怠感、ふらつきの恐れ | |
中間型 | エスタゾラム(ユーロジンなど)/ ロラゼパム(ワイパックスなど) | ・睡眠維持・催眠効果・中途覚醒改善・早朝覚醒改善・抗不安・筋弛緩・抗けいれん | ・翌朝へ眠気の持ち越しやふらつき、倦怠感のリスクが高まり、日中の活動に影響が出る恐れ・特に高齢者は認知機能の低下やせん妄(意識障害)に注意 | |
長時間型 | フルニトラゼパム(サイレースなど)/ クアゼパム(ドラールなど) | ・重度の不眠改善・催眠効果・抗不安・筋弛緩・抗けいれん | ・眠気の持ち越し、ふらつき、倦怠感が最も起こりやすく、日中の活動へ大きく影響する恐れ・特に高齢者は認知機能の低下やせん妄、転倒のリスクが高まる | |
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | 超短時間型 | ゾルピデム(マイスリーなど) | ・入眠効果 | ・服用後、すぐに就寝しないと、その間の記憶がない「前向性健忘」が起こりやすい・入眠直前や睡眠中の奇異行動や夢遊病など、睡眠時随眠症の恐れ |
短時間型 | エスゾピクロン(ルネスタなど)/ゾピクロン(アモバンなど) | ・入眠効果・中途覚醒改善 | ・翌朝への眠気の持ち越しが、超短時間型より起こりやすい・ベンゾジアゼピン系と比べて筋弛緩の作用が低いため、ふらつき、倦怠感などは少ない |
【求める効果別】睡眠薬
睡眠薬によって様々な種類があり、それぞれの効果やリスクがあるとわかったところで、求める効果別におすすめの睡眠薬を紹介します。あなたの治療目的や症状に応じて正しく知る参考となれば幸いです。
即効性を求める方へ効果的な睡眠薬
即効性を求める方には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬または非ベンゾジアゼピン系睡眠薬がおすすめです。
内服してすぐに効果があり、眠れないけどすぐに眠りたい方には効果的な薬です。脳に直接働きかけて、強制的に睡眠モードへと働きかけるため、ストンと眠りに落ちる感覚があります。
特に、「寝つきが悪い」入眠困難な方は超短時間型、短時間型の睡眠薬、「夜中に何度も目が覚めてしまう」中途覚醒型の方は短時間型から中間型、朝早く目覚めてしまう方は中時間型から長時間型、睡眠の質が悪くぐっすり眠りたい方は長時間型、などと症状に合わせて選びます。
自然な眠りのリズムを整えたい方へ効果的な睡眠薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬または非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリスクである、「連用すると耐性(効果が薄れること)や依存性、離脱症状(禁断症状)の恐れ」が不安に感じる方は、危険リスク比較的低いとされている、オレキシン受容体拮抗薬、デュアルオレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬がおすすめです。
これらの薬は、脳に強制的に働きかけるのではなく、人間の体の中の睡眠と覚醒のリズムである、体内時計(概日リズム)が整うように働きかけるものです。
オレキシン受容体拮抗薬、デュアルオレキシン受容体拮抗薬は、脳の覚醒を維持する「オレキシン」の働きをおさえることで、自然に眠気を引き出します。
メラトニン受容体作動薬は、睡眠ホルモン(メラトニン)に似た働きを行うことで、体内時計を整えます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ほどの即効性はありませんが、緩やかに、健やかな眠りへと導いてくれます。
精神的要因による不眠に効果的な睡眠薬
精神的な要因による不眠には、不安や緊張を和らげることで不眠にも効果があるとされる睡眠薬がおすすめです。
精神の安定と不眠の改善の両方に効果がある薬は以下の表のとおりです。
薬の種類 | 主な製剤名(薬品名) | 効果 |
ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | ブロチゾラム(レンドルミンなど)/ エチゾラム(デパスなど)/ ロラゼパム(ワイパックスなど) | ・抗不安作用があり、不安や緊張を和らげ、精神的な落ち着きをもたらす・催眠効果もある。 |
抗うつ薬 | ミルタザピン(レメロン・リフレックスなど)/ トラゾドン(デジレル・レスリンなど) | ・気分の落ち込み、意欲の低下、不安感の改善、精神の安定・うつ病に伴う不眠に有効 |
漢方薬 | 抑肝散、酸棗仁湯、加味帰脾湯、半夏厚朴湯など | ・ストレス、イライラ、気分の落ち込みなど感情の浮き沈みの改善・緊張や不安を静め精神の安定を促す・胃腸の不調や血行の改善 |
睡眠薬と並行して行いたい、効果的なセルフケア
処方薬による治療だけでなく、不眠症の治療にはセルフケアも重要です。
不眠症改善に効果的な、セルフケアと日常生活改善についてお伝えします。今日から実践してみてください。
寝室の環境を見直す
寝室や寝具などの環境を見直しましょう。
インテリアの色味は抑え、鎮静効果のある青や疲労回復・緊張を和らげる緑などをベースに部屋をまとめてみてはいかがでしょうか。パステルカラーやアースカラーは、優しい色合いで癒し効果が期待できます。
照明は暖色系にして、部屋全体を寝るためのリラックス空間にします。寝る直前にスマホやタブレット、PCを見ると、睡眠の妨げになります。スマホを寝室に持ち込まないようにしましょう。
生活習慣を見直す
生活習慣を見直し、生活リズムを整えましょう。
規則正しい生活を心掛けます。夜更かしや不規則な生活は不眠のきっかけになります。
朝目覚めたらカーテンを開け、朝陽をあびましょう。ベランダに出るか散歩もおすすめです。朝陽をあびることで、体内時計(概日リズム)が整い、夜のメラトニン(睡眠ホルモン)分泌に影響します。
就寝直前に食事をすると、睡眠時も胃が消化のために働き身体が休まらないため、就寝直前の食事はさけます。夕食はあまり遅くならないように気を付け、消化のいいものを食べましょう。
適度な運動を取り入れる
適度な運動を日常に取り入れましょう。ほど良く動き、ほどよく筋肉を刺激することが夜の熟睡を促します。
適度な運動は交感神経を活発にし、血流を良くすることで、夜の良質な睡眠にも繋がります。また、体内時計(概日リズム)を整えてくれます。
特に朝や日中がおすすめです。寝る直前は、激しい運動をすると、交感神経を刺激し、寝つきを悪くする可能性があるので、ヨガやストレッチなどの軽い運動で体をリラックスさせるのがおすすめです。
就寝前の飲酒・喫煙・コーヒーをやめる
就寝前のお酒・たばこ・コーヒーは、脳を興奮させ、良質な睡眠を妨げます。
禁煙・禁酒も一つの選択ですが、難しければ量を減らす努力をしましょう。特に寝る前はやめるようにします。
また、寝る直前にコーヒーや紅茶などカフェインの強い飲み物を飲むと、目が覚めてしまいます。睡眠を促すアデノシンの働きを阻害し、寝つきを悪くしたり眠りが浅くなったりします。寝る4~5時間前以降は飲まないか、カフェンレスの飲みものを飲みましょう。
リラックスタイムを作る
寝る前にあれこれ思い浮かんで眠れない、目がさえてしまう、といった方もいるでしょう。
仕事やストレスで常に緊張状態にある人は、不安や緊張状態で脳が興奮しています。神経が高ぶっています。リラックスできることをする時間をあえて作るようにしましょう。
入浴はシャワーよりバスタブにつかるとリラックスできます。ぬるめのお湯(38~40℃)に20分程度浸かるのがおすすめです。
また、アロマをたくなど好きなことをして過ごすのも効果的です。
睡眠薬の処方に「オンライン診療」という新たな選択肢
睡眠薬を処方してもらうには、心療内科や精神科を受診する必要があります。
しかし、「心療内科や精神科へ行くほどなのか?」と自分の症状が客観的にわからず受診を躊躇してしまう、通院が知られると恥ずかしい、育児や家事・仕事で忙しく通院のために時間をとることが難しい、混雑していて何時間もかかってしまう、など、通院には様々な課題があります。
現代は、オンラインクリニックが増え、不眠症治療もオンラインで可能になりました。
厚生労働省のオンライン診療ガイドラインにより、危険リスクの高い睡眠薬の処方は難しいですが、危険度の低い睡眠薬は、オンライン診療で処方可能です。
具体的には、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬・オレキシン受容体拮抗薬・デュアルオレキシン受容体拮抗薬・メラトニン受容体作動薬・漢方薬などです。
Webで空き時間を予約、問診票に詳しく入力して、お時間になったらビデオ通話で受診します。
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近年、依存性の高い睡眠薬の使用について心配の声を聞くことも少なくありません。そのため、「おうち病院 オンライン不眠症外来」では患者の安全を考慮し、依存性の高いベンゾジアゼピン系睡眠薬(ユーロジン、ドラール、ハルシオンなど)の処方を行わない方針を取っています。
代わりに、ラメルテオン(ロゼレム)やレンボレキサント(デエビゴ)など、より依存性の低い薬剤を中心に処方しています。
睡眠薬の効果と危険リスクを知り、自分の目的に合った睡眠薬を選択しよう
睡眠薬の種類や効果は様々です。
あなたの症状や体質に応じて、医師が適切な診断をして処方します。睡眠薬の効果と危険リスクを知り、医師と相談しながら、自分の目的に合った睡眠薬を選択しましょう。
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