鉄分サプリの選び方と注意点は?医師と考える 鉄分サプリとの付き合い方

多くの女性が貧血や睡眠不足などで悩まれている昨今、原因となる鉄分不足をサプリで補うことが重要です。しかし、どのようなサプリがよいのか分からない方が多いかと思います。本記事では、鉄分サプリの選び方や注意点について解説します。

目次

貧血大国などといわれる日本。

実に女性の約半数が鉄分不足だといわれています。鉄分は意識していても十分な摂取が難しい栄養素の一つです。

体にとって鉄分は必要不可欠な栄養素で、健康に過ごすためのさまざまな働きに関係しています。鉄分不足が体にどんな影響を与えるのか、知れば知るほど「鉄分の大切さ」に気付くのではないでしょうか。
まずは鉄分について知り、ご自身の健康状態を把握してみることからはじめていきましょう。

鉄分が不足すると・・・


一般的に鉄分不足と聞いて思い浮かべるのは貧血でしょうか。

「青白い顔」や「ふらついて倒れる」といった症状を連想してしまいますが、これらは貧血の部分的な症状に過ぎません。

鉄分は血液中のヘモグロビンの材料として必要な栄養素です。

鉄分不足になるとヘモグロビンが減少するため、体の各組織に十分な酸素が供給できないのでさまざまな症状が出ることになります。

しかし、体はゆっくりと ”貧血状態” に慣れていきますので、無症状の方も多くいます。

特に女性は男性に比べこの傾向が高い印象ですので、わずかな症状を見逃さず、早めに鉄分不足に気づくことが大切です。

一般的には、以下のような症状が見られます。

疲れやすい、だるい

意外かもしれませんが、疲れやすいのは鉄分不足が原因かもしれません。

筋肉に十分な酸素を運搬できないために「疲れやすい」「だるい」といった症状につながります。

疲れやすいのは年齢や仕事のせいと思っている方の中に、鉄分不足が隠れているかもしれません。

眠れない、起きられない

これも意外かもしれませんが、睡眠障害に鉄分不足が関係していることがあります。

睡眠に関係しているメラトニンという神経物質の合成に鉄分は不可欠です。

メラトニンが十分に作用しないため、入眠や目覚めが上手くできなくなります。
また、むずむず脚症候群という体の不快感(足がムズムズするなど)のためにリラックスしたり、眠ることが難しくなる疾患でも鉄分不足とも関係が指摘されています。

悸・息切れ

貧血状態では、体の組織への酸素運搬能が低下しているため、心臓の動きや呼吸に負荷がかかってしまい動悸や息切れが生じます。

爪の変形

鉄分不足では、爪が正常に比べ薄くなり弱いので変形を起こすことがあります。
よく知られているのが、スプーンネイルと呼ばれる爪の中央が凹んで反り返ったような変形です。

甲状腺機能の低下

甲状腺ホルモンが十分機能するためには鉄分が必要なことがわかっています。
鉄分不足が続くと、甲状腺機能の低下を起こし体の新陳代謝が低下したり、不妊や流早産に関連することがあります。

心不全

貧血状態を放置すると、心臓に負担が多くかかってしまいます。
中には心不全になってしまう場合もあります。

鉄分サプリはこんな人におすすめです

以下のような方々をサポートするサプリメントです。

毎日の食生活で十分な鉄分分を摂取できていないと自覚している方

  • 妊娠中の女性

妊娠中は通常よりも鉄分分をより多く必要とします。
特に妊娠中期から後期にかけては赤ちゃんに優先的に鉄分が運ばれるため、お母さんはより多くの鉄分を摂取しなければなりません。

  • 育児中、特に産後の女性

産後、まだ生理が再開していない時期でもお母さんは貧血気味なことが多いと考えられます。
出産時の出血で鉄分分を失っていたり、始まった育児が大変で食事をしっかり取れないなどが理由になります。
また、鉄分は ”幸せホルモン” と呼ばれるセロトニンをはじめとする神経伝達物質の合成にも必要です。
鉄分不足でこれらが不足すると、育児中のイライラにつながる可能性もあります。

  • 栄養バランスの乱れた食生活・過多月経

鉄分は意識していても十分量を食事から摂取するのは難しい栄養素の一つです。
日本人の一般的な食事内容では、食事中の鉄分分の吸収率は15%程度※3と考えられていますので、鉄分分を多く含む食材をかなり多く取り入れなければ不足してしまいます。
不規則な食生活では到底、必要量を摂取できません。
また、生理時の経血量が多い女性は貧血傾向が高いので、より多くの鉄分が必要です。

健康診断で貧血を指摘され、医療機関を受診し鉄分サプリの内服を指導された方

ひと口に貧血といっても、その原因はさまざまです。

多くは鉄分不足による貧血ですが、貧血を起こす病気が隠れていることもあります。


  例えば、 胃粘膜が荒れていて、少量の出血が続いている場合
       子宮に異常があり、そのために月経血が多くなっている場合                      

つまり、健診で貧血を認めた場合には、医療機関を受診し貧血の原因が鉄分不足であ

ることを確認してからサプリを飲み始めるのが理想的です。


鉄分剤として非ヘム鉄分を飲んでいたが、副作用(胃部不快、吐き気など)のため継続が難しい方

鉄分剤には、病院で鉄分剤として処方されているような「非ヘム鉄分」注1の他、「ヘム鉄分」「キレート鉄分」などがあります。

処方薬としての「非ヘム鉄分」は鉄分含有量が多く効果的なのですが、胃粘膜を刺激するため消化器症状(胃のむかつきや吐き気)注2で飲み続けるのが難しい場合があります注2

そのような場合には、別の種類の鉄分剤に変更してもらったり、消化器症状が出にくい「ヘム鉄分」サプリを利用することができます。

注1 病院で保険適用となる鉄分剤はすべて「非ヘム鉄分」になります
注2 消化器症状の出現率は5−20%と報告によってさまざまです

活動量の多いアスリートの方

運動量の多いアスリートは鉄分の消費や損失が多いので、必然的により多くの鉄分を摂取しなければなりません。
しかし、自己判断で鉄分サプリを摂取する事はおすすめしません。
アスリートといえども、基本は食事からの鉄分分摂取が理想的ですし、栄養管理されているようなトップアスリートが必ずしも鉄分分不足とは限らないためです。
チームをサポートする栄養士やメディカルスタッフの判断に基づいた鉄分サプリの使用をおすすめします。

医師が教える鉄分サプリの選び方

配合されている鉄分の種類を確認する

「ヘム鉄分」「非ヘム鉄分」「キレート鉄分」など、サプリによって含まれている鉄分の形態が異なります。鉄分の形態によって、体内への吸収率や副作用が異なります。

最近の研究によると、「ヘム鉄分」の体内吸収率は約50%、「非ヘム鉄分」では約15%と報告※4されています。

また、「非ヘム鉄分」では胃のむかつきや吐き気といった副作用が比較的多いのに比べ、「ヘム鉄分」はこれらの副作用が出にくいと言われています。

海外輸入されている「キレート鉄分」は、吸収率は良いのですがそのために過剰摂取となりやすく危険なためおすすめしません。

栄養素の配合量は十分なのかを確認する

サプリに含まれる栄養素配合量は、製品によって異なります。

価格を重視するばかりに、配合量がわずかな製品を飲み続けてしまう方もいますが、服用した栄養素が全て体内で吸収されるわけではないので、あまりに配合量が少ないとサプリの有効性が発揮されません。

実は、栄養素配合量は表示義務がありません。
表示しなくても違法ではないのですが、きちんと栄養素配合量を明記していないサプリは信頼性が低いように思います。

添加物が最小限のものを選ぶ

サプリメントを製造するにあたって添加物は欠かせないものですが、使用を最小限にすることは可能とされています。
余分な添加物(増量剤、着色料、甘味料、香料、保存料など)を含まないサプリメントをお勧めします。

アレルギー物質が入っていないかを原材料で確認する

サプリというと、薬とは違ってアレルギーが起こらないと思っている方が意外に多くいらっしゃいます。
頻度は高くないものの、サプリでもアレルギーを起こす可能性があります。
特にアレルギーをお持ちの方は、製品の原材料を必ずご確認ください。

【鉄分サプリ、その前に】鉄分の摂りすぎや子供の誤飲には要注意!!

鉄分サプリを飲む際に気をつけたいのが、 ”摂りすぎない” ということです。

過剰摂取

鉄分の吸収は、体内の鉄分の過不足に合わせて調節されているため健常な方が鉄分過剰になることは少ないと考えられています。
しかし、キレート鉄分の服用、鉄分剤の注射は過剰摂取に注意しなければいけません。過剰に吸収された鉄分は体のさまざまな臓器に沈着し、障害を起こします。

吸収率が良く、鉄分サプリとしてはおすすめのヘム鉄分ですが、もちろん過剰摂取はよくありません。
ヘム鉄分の多量摂取により2型糖尿病のリスクが高まることが示唆されています※5
サプリ服用時は用量を守ることが大切ですし、ヘム鉄分を多く含む肉類の食べ過ぎにも注意が必要です。

誤飲による子供の急性中毒

小さなお子さんが、自宅に保管されている鉄分剤を誤って食べてしまうことによる急性中毒が報告されています。
サプリ大国のアメリカでは、小児の中毒死の1/3が偶発的な鉄分サプリの誤飲であったことから、小児用安全容器・包装などの使用が義務付けられています※6
鉄分サプリを保管する際には、お子さんの手が届かないところに置くことを忘れないでいただきたいです。

【鉄分サプリ、その前に】 購入前に医師への相談をおすすめ

以下の方は、鉄分サプリを飲む前に医師に相談することをおすすめします。

持病や既往症をお持ちの方

例えば、一般的にヘモクロマトーシスや肝疾患をお持ちの方の場合、鉄分サプリを摂取しないように推奨されています。
注:特に肝疾患を持病とする方は、鉄分過剰を起こしやすいことが知られています。おうち病院でもこれらの方の鉄分サプリ服用はおすすめしません。

他にも鉄分サプリが適切でない場合がありますので、ぜひ医師に相談していただきたいと思います。

お薬を内服されている方

組み合わせによっては、鉄分サプリを飲むことでお薬の効果が弱まってしまうことがあります。

この場合、疾患の治療を優先する必要がありますので、鉄分サプリを飲む事はおすすめできません。

おうち病院サプリメント相談では、個別の健康状態、生活習慣に合わせたアドバイスを無料で医師から受けることができます。

安心してサプリメントを摂取し、健康維持したいとお考えの方にお勧めします。

参考文献
※3 FAO/WHO. Requirements of vitamin A, iron, folate and vitamin B12(FAO Food and Nutrition Series No. 23). FAO/WHO, Rome, 1988: 33─50. ※4 Young MF, Griffin I, Pressman E, et al. Utilization of iron from an animal-based iron source is greater than that of ferrous sulfate in pregnant and nonpregnant women. J Nutr 2010; 140: 2162─6.
※5 Mohammad Talaei, Ye-Li Wang, Jian-Min Yuan, An Pan, Woon-Puay Koh. Meat, Dietary Heme Iron, and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus: The Singapore Chinese Health Study. American Journal of Epidemiology, Volume 186, Issue 7, 1 October 2017, Pages 824–833.
※6Manoguerra AS, Erdman AR, Booze LL, Christianson G, Wax PM, Scharman EJ, et al.Iron ingestion: an evidence-based consensus guideline for out-of-hospital management.Clin Toxicol (Phila) 2005;43:553-70.