【漢方コラム】精子が老化する影響とは?検査方法や治療方法などを解説

「妊活をしているけれども子どもができない」「妊活の内容よりも精子の状態に問題があるかもしれない」と不安に感じている男性の方も多いのではないでしょうか。実際に加齢と共に精子の運動機能は低下します。

そこで、今回は精子が老化する原因、検査方法や治療方法、老化予防の方法をみていきましょう。

目次

1.精子の老化とは

精子は高齢になっても毎日新しく作られるものの、加齢とともに機能が低下するため、見た目の若さや体力と状態が一致するとは限りません。

以下の項目は老化の影響を強く受ける点に注意が必要です。

  • 運動率
  • 正常形態率(奇形でも問題はないが受精で不利になる可能性がある)

女性の卵子と同様に男性の精子も老化することを知っておきましょう。

2.精子が老化する原因とは

精子の状態は、加齢やストレスの影響で変化します。また、精子の老化は活性酸素やフリーラジカル(反応性の高い酸化物質で、細胞の損傷、体内で有害な作用を起こす)が原因となるケースもあります。

活性酵素やフリーラジカルが体に与える影響として、酸化ストレスです。酸化ストレスは生殖機能を悪化させるため、精子の老化につながります。

酸化ストレスは、不健康な生活を続けるほど溜まっていくだけでなく、老化の加速、質の低下を招くことになるといえるでしょう。逆に健康的な生活を続ければ、老化を食い止めることが可能です。

精子が酸化ストレスを受けた場合、運動率低下や精子DNAの損傷が起きることから、妊娠率の低下や流産率の増加をもたらす可能性があるといわれています。

3.精子の老化は子どもに悪影響を与える

加齢は精子を育てる細胞やホルモン、精子の数を減らすため、DNAが損傷した精子を増加させます。染色体異常による初期流産が増加し、子どもの染色体異常も一部の疾患で増える可能性がある点は知っておきましょう。

また、比較的多数の症例対照研究によれば、女性の年齢や他の要因の影響を除いたとしても、男性の加齢で自然流産の確率が上昇します。

4.男性不妊は精子老化の影響を受ける

男性不妊の原因としては、造精機能障害、性機能障害、精路閉塞障害があります。

・造精機能障害
造精機能障害は精子をつくる力が低下し、数が少ない場合や運動性が乏しくなるという状態のことです。卵管までたどり着く精子が少なく、パートナーに対して子どもができづらくなります。

原因の多くは、原因不明か精索静脈瘤となります。精索静脈瘤は、精巣に血流が逆流し、精巣の静脈血管がこぶ状に腫れてしまう症状で、精子の老化の原因の1つです。

・性機能障害
性機能障害には勃起障害や射精障害があります。以下は概要になります。

  • 勃起障害はセックスを行う際に十分な勃起を維持できない
  • 射精障害は勃起ができても射精ができない

射精障害を勃起障害と比較すると、射精障害は治療が困難で簡単に治らない場合も少なくありません。場合によっては、人工授精や体外受精といった生殖補助医療が必要になります。

・精路通過障害
精路通過障害では、精巣内で精子はできています。しかし、精子の通り道である精管が詰まるため、外に出てくることができない状態です。閉塞している場所が判明すれば、手術で精子が出るようになります。また、精巣内の精子を手術で採取し、体外受精に用いることも可能です。

5.精子の検査方法

精子を検査する場合は、精液検査を実施します。精液検査では精子の量・濃度・形態・運動率などを調査するのが一般的です。

検査の流れとしては、2~5日程度の禁欲後、自宅で精液を採取して持参するか、病院の採精室で採取を行います。自宅で採取する場合には、採取後30~60分以内など病院の指定する時間内に持参しなくてはいけません。

精液検査が良好なケースであれば一回の検査で済む場合はあるものの、検査結果が不良である場合、複数回の精液検査が必要です。

6.精子が老化している場合の治療方法

どのような症状が出ているかで治療方法は大きく異なるため、それぞれの治療方法をみていきましょう。

造精機能障害の方の中で、精子濃度や運動率が低下している場合には、ビタミン剤、漢方剤などを使用します。下垂体ホルモンや男性ホルモンが低下、もしくは欠乏している方は、下垂体ホルモンや男性ホルモンの注射で改善する可能性があります。

精索静脈瘤では、手術を実施すると精液所見が改善する場合があるため、自然妊娠や人工受精、体外受精などを行う夫婦にとって有効な手段となるでしょう。

勃起障害や射精障害などの性機能障害では、心理カウンセリングや薬物療法での治療が主になります。精路通過障害では精巣上体や精管がふさがれている場合、つなぎ直す手術を行うケースも想定されるでしょう。また、神経障害が原因の場合は薬物療法が用いられます。

7.精子の老化を予防する方法

精子の老化予防には、次のような方法があります。

  • 体重:肥満や痩せすぎは精子の質を低下させるため、適切な体重管理が大切です。適度な運動などと組み合わせてベストな体重を目指しましょう。
  • 適度な運動:運動不足は性機能への悪影響にもつながるため、定期的な運動を心掛けましょう。しかし、極端に激しい運動は酸化ストレスを増加させてしまいます。そのため、強度の弱い運動を定期的に続けることが大切になります。
  • 陰嚢部の温度上昇に気を付ける:陰嚢部の温度上昇は精子形成に対して、良い影響はありません。過剰なサウナ浴や長時間の入浴は避けましょう。
  • 喫煙は控える:タバコは精子の老化を速める活性酵素を大量に発生させます。そのため、できる限り控えるなど普段の行動に注意することが大切です。
  • 食事に気を配る:バランスの良い食事をとったうえで、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10など抗酸化作用が強い栄養素をサプリメントで補うのも有効です。
  • 定期的に射精を行う:一週間以上射精しなかった場合、精液中の不良精子の割合が増えるため、週に1回程度は定期的に射精し、精子のリフレッシュを行いましょう。

自身に適した方法を選び、精子の老化を予防することが重要です。

8.精子の老化の改善に漢方は有効

精子は毎日作られているものの、老化を防ぎ精子を良い状態に保つためには、健康状態を良好に保つことがといえます。生活習慣の改善、漢方薬を使用した健康状態の回復によって、精液所見の改善も期待できるでしょう。

漢方外来では、それぞれの方の症状や状態に合わせて、適した漢方薬を処方してもらえます。精子の老化を予防したいと考えるのであれば、漢方薬の利用を検討しましょう。

9.まとめ

精子は毎日新しく作られるため、老化しないと考えている方もいます。しかし、実際には、女性の卵子と同様に、男性の精子も老化します。精子の状態は、加齢のストレスや老化の影響で悪化し、精子の老化は活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスが原因です。

精子が酸化ストレスを受けた場合、運動率低下や精子DNAの損傷が起き、妊娠率が低下し、流産率の増加につながるため注意しましょう。

精子は男性不妊にも大きく関係しているため、不安であれば精液検査を受けることを推奨します。症状によって、手術や薬物療法など異なる治療を行います。

精子の老化を予防する場合には、陰嚢部の温度上昇に気を付ける、射精を定期的に行うといった対策が有効です。また、漢方薬も精子を良い状態に保つための有効な手段となります。

漢方薬の使用を検討する場合は、専門家がオンライン漢方相談・漢方外来を行っている「おうち病院」を利用しましょう。

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