アトピー性皮膚炎の治療には、西洋薬を使用することが基本です。漢方薬も使用は可能なものの、強い炎症を抑えたり再発を防いだりする効果はありません。両方をうまく活用し、自身にとって最適な治療法を見つけることが大切です。
本記事では、アトピー性皮膚炎に使用する漢方薬の種類や西洋薬との違い、使うときのポイントなどについて詳しく解説します。
目次
アトピー性皮膚炎に対する漢方薬の効果
アトピー性皮膚炎に対する漢方薬の効果については、次の2点を押さえておきましょう。
アトピー性皮膚炎に効果があると断言できる漢方薬は存在しない
アトピー性皮膚炎に対する漢方薬の効果は、炎症を抑えたり体調を整えて発症を抑えたりするものです。ただし、アトピー性皮膚炎に対する漢方療法の有用性を検討した臨床研究は限られており、大部分が数十例程度の症例を対象とした研究です。
また、中でも「消風散」と「補中益気湯」が使用されたものに限られています。研究の対象者が少ないため、アトピー性皮膚炎に効果があると断言できる漢方薬は存在しません。
効果には個人差がある
漢方療法は、アトピー性皮膚炎に通常使用するステロイド外用剤やタクロリムス軟膏、抗ヒスタミン剤、悪化因子への対策、スキンケアなどで十分な効果が得られない場合に併用することを検討します。
漢方療法は、症状や体質に合った処方を行うものであり、アトピー性皮膚炎に対して決まった処方は存在しません。そのため、アトピー性皮膚炎の西洋薬と組み合わせた結果、効果が現れたとしても、それはその人にたまたま合っただけの可能性があります。
このように、アトピー性皮膚炎に対する漢方薬の効果は限定的であり、治療の主軸にはできません。
アトピー性皮膚炎に使用できる漢方薬
アトピー性皮膚炎に使用できる漢方薬は、臨床研究で使用された次の2つに限ります。
消風散(しょうふうさん)
消風散は、臨床研究において抗炎症薬で症状が改善しない患者に使用された漢方薬です。効果は、強いかゆみや熱感がある症状の改善です。消化器官の不快感や腹痛、食欲不振などの副作用が現れることがあります。また、1ヶ月服用しても効果が現れない場合は中止します。
まれに症状が進行することもあるため、経過を注意深く観察することが大切です。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯は、疲れやすい、倦怠感がある患者に対し、ステロイド外用剤と併用した結果、症状の改善が見られました。ステロイド外用剤と併用してこそ高い改善効果が期待できるもののため、単体では使用してはいけません。適応となるのは、胃腸の働きが衰えており疲れやすい人です。
軽い運動を行っただけで息切れしたり息苦しくなったりするほか、空せき、発熱、間質性肺炎などが副作用として現れることがあります。1ヶ月程度の服用で効果を実感できない場合は、使用を中止します。
アトピー性皮膚炎に使用する漢方薬と西洋薬との違い
アトピー性皮膚炎に使用する漢方薬と西洋薬は、効果のメカニズムや副作用に違いが見られます。それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
効果のメカニズム
西洋薬の多くは1つの物質で構成されており、特定の細胞や臓器に働きかけることで効果を発揮しますが、漢方薬は複数の植物や鉱物などの成分を含み、体のさまざまな箇所に作用します。
また、西洋薬は薬理作用が強く、速やかに効果が現れることが特徴です。一方、漢方薬はゆっくりと効果が現れるとされていますが、原因によっては服用した瞬間に効果が現れます。
このように、西洋薬は原因がわかっている疾患に対して有用で、漢方薬は原因がわからないものの自覚症状がある場合に有用です。アトピー性皮膚炎のように原因が特定できている場合は、西洋薬を最初に使用することが大切です。
副作用
西洋薬は効果が強い分、副作用も強い傾向があります。一方、漢方薬は効果がゆるやかな分、副作用も弱いとされています。しかしながら、原因によっては副作用が強く現れる可能性があるため、用法用量を守って服用することが重要です。
また、西洋薬も漢方薬も、副作用が現れた際は使用を中止し、主治医に相談しましょう。
アトピー性皮膚炎に漢方を使用する際のポイント
アトピー性皮膚炎に対して漢方薬を誤った方法で使用すると、結果的に症状の悪化を招く恐れがあります。アトピー性皮膚炎に漢方薬を使用する際は、次のポイントを押さえましょう。
まずは西洋薬を使用する
漢方療法を検討する前に、まずは一般的な西洋薬(ステロイドやタクロリムスなどの抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、スキンケア、悪化因子の対策)を試しましょう。アトピー性皮膚炎のガイドラインに基づき、医師の指導のもとで西洋薬による治療を試みることが大切です。
アトピー性皮膚炎のガイドラインには、大規模な臨床研究によって効果が立証された薬の情報や優先順位などが掲載されています。漢方薬は数十人程度の臨床研究によって効果が認められたもののため、ガイドラインには効果がある治療法として掲載されていません。
西洋薬で十分な効果を得られなかった場合には、漢方薬との併用を検討しましょう。ただし、漢方薬を使用するかどうかは医師の判断に委ねられます。体質が合わず、漢方薬を使えないケースもあることに注意しましょう。
用法用量を守る
漢方薬は、西洋薬よりも体にやさしいイメージがあるかもしれませんが、誤った飲み方は副作用のリスクを高めます。効果と副作用は表裏一体であり、効果が期待できるからこそ副作用が起きるリスクもあります。
用法用量を守らない場合、薬物が体に与える影響が強くなり、効果とともに副作用も現れやすくなります。1日の服用回数や飲み方などを確認し、指示に従って服用しましょう。
民間療法と漢方は異なることを理解する
漢方は、民間療法の1つと思い違いをされがちです。漢方薬で効果があったから民間療法も効果があると考え、西洋薬を使わずにアトピー性皮膚炎を悪化させるケースもあります。民間療法と漢方療法は異なることを理解することが重要です。
漢方療法は、中国の伝統医学の1つであり、長い歴史と体系的な理論に基づいています。一方、民間療法は一般の人々や地域の伝統的な実践や経験に基づくもので、科学的根拠に欠けることがあります。
漢方薬がアトピー性皮膚炎に有効であるとしても、民間療法に関しては慎重であるべきです。漢方と民間療法は異なるものであり、効果や安全性に差があります。民間療法を受ける際には、医師や専門家の意見を求めることが大切です。
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