アトピー性皮膚炎はかゆみ、皮膚の赤みやブツブツ、乾燥して皮が剥けるなどの症状が出てつらいものです。「つらい症状を改善したい」「治し方を知りたい」「どうやって治療するの?」と疑問や不安を抱えている方は多くいらっしゃいます。
今回は、アトピー性皮膚炎の治し方や治療の流れについて解説します。
目次
アトピー性皮膚炎の治し方1:薬物療法
アトピー性皮膚炎の治し方である薬物療法には「外用療法」「全身療法」「補助療法」の3種類があります。
この中でメインとなるのは外用療法であり、それとあわせて全身療法を行います。また、補助療法はスキンケアによって肌の状態を整えて症状を軽減または予防するものです。
以下でそれぞれのアトピー性皮膚炎の治し方について解説します。
外用療法(塗り薬)
アトピー性皮膚炎における外用療法とは、皮膚症状が出ている部分に直接塗り薬を塗布して、炎症やかゆみなどの症状を改善する治し方です。
外用療法で使われる塗り薬には4種類あります。
・ステロイド
ステロイドは、副腎から作られる副腎皮質ホルモンの一つです。
身体の免疫力を抑えたり、炎症を抑えたりする作用があります。ステロイドは速効性が高く、症状が出た部位に塗布することで数日から1週間程度で効果が現れます。そのため、アトピー性皮膚炎の外用療法で用いられることの多い塗り薬です。
ただし、副作用があるため、医師の指示に従って使用する量や期間、部位を守ることが大切です。
・カルシニューリン阻害薬
カルシニューリンという、リンパ球の増殖や細胞を伝達する物質の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を改善させます。ステロイドと比べて有効成分の粒子が大きいことから、健康な皮膚に影響しにくく炎症部位に効果を発揮しやすいのが特徴です。
腎機能低下などの副作用があるため、用法用量を守りましょう。
・ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
炎症やかゆみを伝える経路である「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」の働きを抑えて、過剰な免疫反応を抑えて炎症を鎮めることで皮膚症状を改善します。ステロイドの塗り薬よりも速効性や効果がやや劣るものの、長期使用しても安全性が高いとされています。
・ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬
アトピー性皮膚炎患者の炎症細胞で増加することがわかっている、PDE4というタンパク質の働きを阻害することで炎症を鎮め、アトピー性皮膚炎の皮膚症状を改善する塗り薬です。ステロイドの塗り薬と違い、塗布する部位や長期使用の制約はありません。
全身療法(塗り薬+飲み薬)
全身療法とは、アトピー性皮膚炎における炎症やかゆみを抑えるために、塗り薬とともに飲み薬を併用する治し方です。
以下にアトピー性皮膚炎の全身療法で飲み薬と一緒に使われる3種類の飲み薬を紹介します。
・カルシニューリン阻害薬
カルシニューリンの働きを阻害し、免疫を阻害することで炎症の抑制などアトピー性皮膚炎の皮膚症状を改善します。適用年齢は16歳以上で、連続服用は最大3ヶ月までです。症状が改善しきらない場合も、そこで休薬期間をもうけなければいけません。
・ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
JAK-STAT(ジャック・スタット)経路の働きを阻害して免疫を抑制し、炎症を鎮めます。アトピー性皮膚炎の治療では一般的に、ステロイドやカルシニューリン阻害薬の塗り薬を併用します。
・ステロイド薬
塗り薬としてもご紹介しましたが、ステロイドは飲み薬としても存在します。アトピー性皮膚炎の症状が急に悪化した場合などに、短期間使用する場合がある飲み薬です。
飲み薬は塗り薬と違って全身に影響が及ぶため、効果は高いものの副作用も強く出る可能性があります。そのため、定められた服用量・期間を守ることが大切です。
補助療法
薬物療法における補助療法とは、疾病そのものを治す治療とともに、自然治癒力を高めて皮膚を良い状態にコントロールするために行われる、薬物を用いた補助的な治療です。アトピー性皮膚炎の補助療法として代表的なものは、飲み薬の抗ヒスタミン薬の使用です。かゆみを抑え、掻き壊しによる皮膚症状の悪化を防ぎ、自然治癒力を高めて肌を良い状態に保ちます。他にも、体の内側から自然治癒力を高めるために、漢方薬の飲み薬の使用が選択されることもあります。
アトピー性皮膚炎の治し方2:スキンケア
アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は、潤っているように見えても実は乾燥していることがほとんどです。乾燥しているとかゆみが強くなり、かき壊してしまってさらに症状が悪化するという悪循環に陥ることがあります。
そのため、アトピー性皮膚炎では、乾燥から肌を守ってバリア機能を回復させ、症状の緩和や予防のために、継続的にスキンケアを行うことが大切です。
肌の清潔を保つ
アトピー性皮膚炎では皮膚症状が出ている部分を中心に、清潔を保つことが大切です。炎症部位からは細菌が検出されることが多くあり、その菌は傷ついた炎症部位から体内に侵入することがあります。さらなる症状の悪化を防ぐためにも、入浴時にしっかり洗い流すことが大切です。
ただし、熱いお湯をかけたり長風呂をしたりすると血流がよくなって炎症部位がかゆくなることがあります。また、強くこすり洗いをすると皮膚を傷つけてバリア機能を低下させることがあるため注意が必要です。ボディーソープはなるべく低刺激・低アレルギー性のものを選び、肌を刺激しないようにしましょう。
肌の潤いを保つ
肌の潤いを保つことも、アトピー性皮膚炎の治し方では重要なポイントです。
前述の通り、アトピー性皮膚炎患者は正常に見えても肌が乾燥しています。そのため、保湿剤により皮膚の水分が逃げないようにフタをしてあげて、水分を与えることが大切です。
保湿剤だけで皮膚症状やかゆみを改善することはできませんが、肌が潤うことはアトピー性皮膚炎の予防・改善につながるものです。バリア機能が回復・維持されれば、アレルゲンの侵入が予防され、皮膚炎の症状やかゆみも改善されやすくなります。塗り薬や飲み薬による薬物療法とともに、継続的に肌の潤いを保っていきましょう。
紫外線から肌を守る
アトピー性皮膚炎は、紫外線が刺激となってかゆみが強くなることがあります。そのため、日差しが強い日には肌を紫外線から守ることをおすすめします。
紫外線から守る方法としては、日焼け止めを塗るのが最も簡単で効果的です。ただし、アトピー性皮膚炎の人は肌のバリア機能が低下している傾向にありますので、薬剤を塗るときの摩擦で皮膚を痛める可能性があります。肌をこすりすぎないために、伸びがよくて塗りやすいものを選ぶようにしましょう。塗布する日焼け止めは、皮膚に刺激を与えないためにも低刺激のものを選ぶのが無難です。
また、日焼け止め以外にも紫外線から肌を守る方法として、帽子やサングラスを身につける、薄手の長袖や上着を着用するといった方法もあります。ご自身に合った方法で、紫外線から肌を守っていきましょう。
アトピー性皮膚炎の治し方3:原因・リスクへの対策
アトピー性皮膚炎では、薬物療法やスキンケアとともに、症状を悪化させるリスクを回避することも大切です。以下で詳しく解説していきます。
生活環境の対策
アトピー性皮膚炎の患者は、スギなどの花粉が粘膜や肌に吸着することで皮膚症状が悪化することがあります。また、ダニやハウスダスト、ペット由来のアレルゲンなどにより、かゆみや腫れといった症状を強くさせることがあります。つまり、生活環境の中に症状を悪化させるアレルゲンがとても多くあるのです。
アトピー性皮膚炎の症状を緩和させるためにも、部屋や仕事場など生活環境は清潔に保ち、アレルゲンをできる限り排除するようにしましょう。
食べ物の対策
食生活の乱れはアトピー性皮膚炎にも影響を及ぼすとされています。
たとえば、極端なダイエットにより栄養不足になると肌の調子が乱れてバリア機能が低下し、皮膚症状を悪化させることがあるのです。油分や脂肪の多い食事も、アトピー性皮膚炎の症状悪化につながるといわれています。
アトピー性皮膚炎の症状を悪化させないためにも、栄養バランスの整った食生活を心がけましょう。
服装・身だしなみの対策
アトピー性皮膚炎を悪化させないためには、アレルゲンを取り除くことや肌の清潔を保つことが大切です。服装や身だしなみを整えることも意識した方がよいでしょう。
たとえば、花粉が多く飛散する時期は毛織物よりも木綿の方が花粉の付着量を減らせるのでおすすめです。化繊もツルツルしているので花粉がつきにくいですが、皮膚に刺激を与える恐れがあるため気をつけてください。
他にも、髪の毛は短くまとめてすっきりさせる、爪を短くしてかいた場合でも皮膚を傷つけにくくするなどの対策もしてみてください。
ストレスへの対策
アトピー性皮膚炎はストレスが多いと悪化するといわれています。そのため、なるべくストレスを感じないようにする、適度にストレスを発散することが大切です。
最もよいストレス解消法は、質の高い睡眠を取ることです。寝室はアレルゲンを取り除いた清潔な状態にして、決まった時間に寝ることでぐっすり寝やすくなります。寝付きが悪い方の場合は、眠気を促す音楽などを流すとよいでしょう。
逆に寝られないからといってスマホをいじってしまうと、睡眠が浅くなりやすいのでやめましょう。
アトピー性皮膚炎の合併症と治し方
アトピー性皮膚炎はかゆみや赤み、ブツブツができるといった症状だけでなく、合併症を引き起こすこともあります。以下で、アトピー性皮膚炎でよくある合併症と治し方について簡単に解説します。
伝染性膿痂疹(とびひ)
伝染性膿痂疹の原因は、黄色ブドウ球菌の感染であることがほとんどです。アトピー性皮膚炎により荒れてしまった肌は細菌が感染しやすく、合併しやすいとされています。抗菌薬の塗り薬と内服薬の併用により治療します。
ステロイドの塗り薬で炎症を抑えられるものの、免疫が抑制されるため細菌が増加して症状そのものが治らないことがあるのでご注意ください。
伝染性軟属腫(みずいぼ)
伝染性軟属腫は、ポックスウイルスによるウイルス感染症です。ポックスウイルスは人のみに感染するウイルスであり、空気感染や飛沫感染、病変と接触してウイルス汚染された衣類などから感染するとされています。特別な治療法はないため、対症療法が中心です。
ちなみに、アトピー性皮膚炎の治療でステロイドの塗り薬を使っている場合は、ウイルスを増加させてしまうため使用を中止しましょう。
カポジ水痘様発疹症
カポジ水痘様発疹症とは、単純ヘルペスウイルスによる重症型の感染症です。感染することで急速に広がり、全身に小さな水疱ができたり、発熱・リンパ節の腫れなどの全身症状が引き起こされたりします。
ステロイドの塗り薬はただちに使用を中止し、抗ウイルス薬の塗り薬や飲み薬を使って治療を行いましょう。
アトピー性皮膚炎の治療の流れ
病院によって若干異なりますが、一般的にアトピー性皮膚炎の治療は以下のような流れで行います。
問診・視診を行う
アトピー性皮膚炎の治療では、まず問診や視診を行います。かゆみの程度や皮膚の状態、症状が出てからどれくらい経過しているのか、患者やその家族の病歴など幅広く把握した上で診断を下します。
重症度を評価する
アトピー性皮膚炎は軽微・軽症・中等症・重症と4段階に大別されます。
・軽微
肌が乾燥してややかゆみがある状態。腫れや赤み、ジクジクなどの症状はない。
・軽症
肌のカサつきとともに赤みが出てくる。皮膚が白い粉を吹いていたり、皮が剥けて落ちたりする。
・中等症
軽症のときにあった症状がさらに酷くなる。腫れが目立ち固まりとなって、引っ掻いた痕もついてしまう。
・ 重症
腫れて赤みを帯びた部分が盛り上がってくる。中等症であった症状はさらに悪化してしまう。
このうち、現在の症状はどれにあたるのかを確認し、それぞれの段階にあった治し方を進めていきます。症状が改善すれば一段軽い治療に、悪化した場合は一段重い治療へと柔軟に変更し、皮膚症状を安定させていきます。
治療目標を共有する
どんな治療でもそうですが、アトピー性皮膚炎では患者と治療目標を共有し、一緒にそのゴールを目指していきます。
アトピー性皮膚炎において最終目標となるのは以下のものです。
- 症状がなくなる
- 症状はあるものの非常に軽い
- 日常生活に影響がない
- 薬を使わなくても問題ない
治療目標は患者それぞれで異なります。まずは、上記のような状態を目指し、適切にお薬を使ってアトピー性皮膚炎を治していきましょう。
治療の開始
問診・視診による診査診断、症状の程度の確認、治療目標が決まったら、アトピー性皮膚炎の治療が始まります。
治療の基本となるのは薬物療法で、まずは塗り薬や飲み薬などのお薬を使って皮膚症状を改善していきます。そしてスキンケアで肌をよい状態に保ち、かゆみや炎症を再燃させないようにします。さらに、生活の中で悪化させる原因を取り除き、アトピー性皮膚炎の予防を進めていきます。
アトピー性皮膚炎は短期間で改善することは少なく、数ヶ月に渡ることがほとんどです。医師の指示やアドバイスに従って、じっくりと治していきましょう。
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アトピー性皮膚炎の治し方で基本となるのは薬物療法です。塗り薬をメインにして、飲み薬を補助的に使用します。
アトピー性皮膚炎の症状を改善するためには、医師の指示通りに治療薬を適切に飲み続けることが大切です。飲み忘れや自己判断により中止してしまうと、症状が悪化する恐れがあります。また、薬が切れた際にはなるべく早くお薬をもらいに行きましょう。
しかし、誰もがすぐに病院に行けるとは限りません。仕事が忙しい、病院の予約が取れないなどの理由により、病院を受診できずに薬をもらえなくて困っている方は多いことでしょう。
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