便秘で病院に行くべき基準は?便秘の診療科や検査・治療方法を解説

3日以上排便がないことが頻繁にあったり、慢性的に腹痛やお腹の張りを感じたりしていませんか?慢性的な便秘には重篤な病気が隠れている可能性があるので、早めに医療機関で検査を受けましょう。

本記事では便秘の原因や改善方法、病院に行く基準、病院で行っている便秘の検査や治療の内容を解説します。

便秘とは

日本内科学会*1による便秘の定義は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。便秘による症状は「3日以上、排便がない」「毎日排便があるが残便感がある」「腹部に膨張感がある」「便が出しづらい」「腹痛がある」などが挙げられます。

出典

*1:日本内科学会雑誌第109巻第2号「慢性便秘症診察ガイドライン2017」

慢性便秘症と急性便秘症の違い

便秘症は、「慢性便秘症」と「急性便秘症」に分けられます。急性便秘症は旅行や引っ越しなどの環境の変化や、ダイエット、ストレスなどが原因で起こる一時的なものです。

原因を取り除くことで、自然に治ります。慢性便秘症は常習的なもので「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」という便秘の状態が長期的に続く病気です。

慢性便秘症の原因

便秘症は慢性便秘症と急性便秘症に分類されますが、さらに、原因別に種類があります。

便秘症の原因は多岐に渡りますが、大きく分けて腸に病気などの原因はなく腸の動きによって発症する「機能性便秘」と、大腸の病気や形の異常によって排便が困難になる「器質性便秘」があります。便秘症のほとんどが「機能性便秘」です。

概要原因
機能性便秘自律神経が乱れることによって、腸の動きが低下したり、痙攣したりすることで起こる便秘。一過性の急性便秘症と常習的な慢性便秘症がある・食生活の隔たり(食物繊維不足など)や、   運動不足などの生活習慣
・ストレスや加齢
・下剤や浣腸の乱用
・筋力不足
・女性ホルモンなど
器質性便秘腸の病気による形の異常から、スムーズに排便できなくなる便秘腸の炎症性の病気や腫瘍などによって腸管内が狭くなり、便がスムーズに通過できなくなる。主な原因の病気は、大腸がん、大腸ポリープ、クローン病、腸管癒着など

女性が便秘になりやすい原因

男性に比べて、女性は便秘になりやすいです。原因は筋力や女性ホルモンが影響しています。


女性は男性に比べて腹筋などの筋力が弱いため、排便時に便を押し出すための筋力が足らず、便が腸内に溜まりやすくなります。また、腹筋が弱いことから腸が下がり、胃下垂や内蔵下垂になりやすいです。臓器が下垂すると、腸の収縮が鈍くなるため、便秘の原因になります。

女性ホルモンの分泌も排便に影響します。妊娠中や排卵後から生理前に分泌される「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、大腸の蠕動運動(筋肉の収縮)を抑えたり、体内に水分・塩分を溜め込んだりする働きがあります。そのため排便がスムーズにできなくなり、便秘がちになります。


ダイエットによる食事制限も、便秘につながります。便はある程度の量がないと、排便時に押し出すことができません。食事制限によって食物繊維など必要な栄養素が減ると、便の嵩が足りなくなり、便秘しやすくなります。また、オリーブオイルなどの油分は便が腸を通る際の潤滑油になるので、便通を向上させます。食事量や油分を極端に減らすような、過度なダイエットは避けましょう。

便秘は生活習慣改善が重要

慢性便秘症を改善するには、食生活や生活リズムなど生活習慣を見直すことが第一優先になります。長期的な便秘症状に悩んでいる方は、食事・運動・睡眠を中心に、下記のような日常習慣をチェックしてみてください。

食生活の改善

食生活は便の状態に大きく影響するので、まずは食生活を整えることが重要です。朝食を抜かずに、栄養バランスの整った食事を1日3食しっかり食べましょう。

腸を整えるには、納豆や乳製品などの発酵食品や、海藻や豆類から摂れる食物繊維を適量摂取するように意識してみてください。

水分をしっかり摂る

水分不足は便が硬くなることから、便秘につながります。1日あたり1.5〜2リットルを目安に水分を摂りましょう。

適度に運動する

デスクワークやリモートワークなどで運動不足が続くと、腸の蠕動運動が鈍くなります。日常的に、ウォーキングやジョギングなどの適度な運動を取り入れてみてください。

ストレッチやヨガなどでお腹を捻って腸に刺激を与えたり、筋トレで腹筋の筋力を鍛えたりするのもおすすめです。

排便を我慢しない

女性のなかには排便を我慢してしまう方がいますが、排便を我慢することが頻繁になると、便秘が慢性化しやすくなります。便意を感じたらすぐにトイレに行きましょう。

1日のなかで、排便のリズムをつくることも大切です。なるべく朝、食後にトイレに行く習慣をつけましょう。

便秘は病院に行くべきか

便秘の症状が長引いていたり、症状が悪化していたりする場合は、医療機関を受診しましょう。便秘の症状は個人差がありますが、病院に行く目安として、下記のような症状が挙げられます。

  • ・便が4日以上出ていない
  • ・いきんでも便が出にくい
  • ・排便しても、まだ残っているような残便感がある
  • ・満腹感が治まらない
  • ・腹痛が頻繁にある
  • ・生活習慣を見直しても便秘が治らない
  • ・便が硬く、コロコロとした小さい形状
  • ・下痢をすることがある
  • ・嘔吐や食欲低下がある
  • ・便に血が混じっている

このような症状が1つでも該当すれば、病気が隠れている可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。

ほかにも、便の色や太さが急に変わったり、体重や体質に気になる変化があったり、気になる症状があれば医療機関に相談してください。

(※慢性的に続く病気を放置していると、その他病気や吐き気、嘔吐、肌荒れなどを引き起こすことがあります)

便秘で病院に行くなら何科?

便秘などお腹の病気で気になることがあれば、胃腸科、消化器内科、内科、肛門科などを受診しましょう。

病院で行う便秘治療・処置

慢性便秘症を改善するには、生活習慣を整えるほかに、お薬を併用すると改善できることがあります。病院で行う便秘治療の例を紹介します。

問診・検査

病院では「いつから症状があるのか」「排便の回数・状態」「お腹の痛みや不快感」など、便秘の症状に関することを聞かれます。問診のあと触診や聴診を行い、その結果から、必要な検査を行います。

便秘で行われる検査

検査名具体的な内容
腹部単純レントゲン検査便や腸のなかのガスの溜まり具合、便塊の有無、腸閉塞の徴候の有無などを検査
血液検査貧血、感染、炎症の状態などを検査
便潜血検査肉眼では見えない血便の有無を確認する
大腸内視鏡検査大腸粘膜を直接観察して、がんや炎症性陽疾患などの病気がないか確認する
CTスキャン腸内の便の溜まり具合や、ガスの状況を詳しく確認する

治療

機能性便秘を改善するには、生活習慣や食生活の見直しから始めて、必要に応じて薬物治療を行っていきます。薬物治療は、患者さんの症状に合った下剤を組み合わせます。下剤の薬はさまざまな種類があり、大きく分けると「非刺激性下剤」と「刺激性下剤」があります。

下剤の併用方法は、非刺激性下剤で便を柔らかくして排便を促し、刺激性便秘薬の頓服で大腸を動かす、などが挙げられます。

(※器質性便秘の治療は、原因疾患に対する適切な治療法が必要です)

病院で便秘治療に処方される下剤の種類

下剤名下剤の分類働き便秘薬・成分
非刺激性便秘薬(緩下剤)浸潤性下剤腸管内の水分量を増加させて、便の水分を増やす作用。便の軟化・排便量の増加によって排便を促進する酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム
膨張性下剤腸内の水分を吸収してゲル状に膨張し、軟便の排便量を増やし、無理なく排便させるカルボキシメチルセルロースナトリウム
刺激性便秘薬刺激性下剤大腸を刺激して、腸管運動を促進し、排便を誘発するセンノシド、センナ、ピコスルファートナトリウム

治療では上記のような下剤が用いられることが多いですが、整腸作用や大腸刺激効果のある漢方や、坐薬や浣腸などの外用薬で治療されることもあります。

慢性便秘症に悩んでいる方は、おうち病院「オンライン診療」

3日以上排便がなかったり、慢性的に腹痛やお腹の張りに悩んでいたりする方は、早めに医療機関を受診してください。胃腸科や内科では検査を受けられるので、なにか原因の病気が潜んでいないか、確認してもらいましょう。

検査を受けるためには来院が欠かせませんが、その後、慢性便秘症の治療薬を処方してもらうために何度も病院に足を運ぶのは、お仕事などで忙しい方には大変かと思います。

その場合、おうち病院「オンライン診療」の利用がおすすめです。
自宅にいながら便秘外来の医師の診察が受けられて、自宅に近い薬局でお薬を受け取れます。病院のように待ち時間がかからないので、忙しい方にもおすすめです。

慢性的な便秘の症状に悩んでいる方は「体質だから仕方ない」と一人で抱え込まずに、一度、医療機関にご相談ください。