長引く咳の原因として近年増加している「咳喘息」。
一般的な喘息とは違い、慢性的に咳症状のみが治らない咳喘息にはさまざまな原因があり、放置すると気管支喘息への移行など重症化のリスクがあります。
本記事では、咳喘息の原因や対策・治療法などについて解説します。
原因や症状に合った適切な対処ができるよう、ぜひご一読ください。
目次
咳喘息が治らない主な原因と対策
咳喘息は、気管支喘息(一般的な喘息)のようなゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴や呼吸困難を伴わず、乾性咳嗽(かんせいがいそう:痰があまり絡まない咳)が長期間続くときに診断されます。
以下にて、咳喘息が悪化する主な原因とその対策を解説します。
アレルゲンや環境による悪化
原因 | 対策 | 具体的な方法 |
アレルゲンに継続的に触れる事で、気道が炎症を起こし、過敏性が慢性化 | アレルゲンの特定 | アレルギー検査を受け、アレルゲンを特定 |
花粉・ハウスダストの除去 | 空気清浄機の活用 | |
ペットとの接触制限 | ・寝室とペットの生活スペースを分ける・ペットを飼わない | |
ダニの除去 | ・寝具をダニ対策のものに変える・寝具をこまめに天日干しする・家中の布製品をこまめに洗濯する・ぬいぐるみや洗濯できないラグ・カーペット類はダニが繁殖しやすいので避ける | |
ホコリ・ペットの毛の除去 | ・掃除機がけや拭き掃除などを定期的に行い、ホコリやペットの毛の蓄積を防ぐ | |
室内の湿度管理 | ・ジメジメした季節に除湿器を使用することで、カビの繁殖を防ぐ・加湿器を使用することで、乾燥を防ぐ |
ハウスダスト、花粉、ペットの毛、カビなどのアレルゲンに継続的に触れる事で、気道が炎症を起こし、過敏性が慢性化する恐れがあります。
この対策には、まずはアレルギー検査を受けてアレルゲンを特定することが重要です。検査結果に基づいて、アレルゲンを軽減・除去できるよう対策を行います。
具体的には、空気清浄機を利用する、ダニ対策として寝具や布製品の管理、カビ対策や乾燥を防ぐため、加湿器・除湿器を使用する、ハウスダストやペットの毛・ホコリ対策として、こまめに清掃をする、などが挙げられます。
これらの対策により、アレルゲンとの接触を最小限に抑え、症状の改善につなげることができます。
過労やストレス
原因 | 対策 | 具体的な方法 |
過度の疲労やストレスにより、自律神経の乱れ・免疫力低下・咳喘息の悪化が発生 | 充分な休息・良質な睡眠 | ・入眠前にゆっくり入浴して体を温める・寝室にスマホを持ち込まない・良質な睡眠が出来るよう、寝具や寝室を落ち着ける色にする、照明を暖色系にするなど工夫する |
ストレス管理 | ・適度な運動を行う(散歩やストレッチなど、無理のない範囲で)・リフレッシュ/趣味の時間の確保 |
過度の疲労やストレスが引き金となり、気管支の過敏性を高めることがあります。
また、疲労やストレスによる自律神経の乱れは免疫力低下の原因にもなり、咳喘息を悪化させる感染症リスクを高める可能性があります。
この場合、充分な休息やリフレッシュ・ストレス管理が重要です。たとえば、充分な睡眠、適度な運動(ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲での有酸素運動など)、リラクゼーション、趣味の時間の確保など、できるところから取り組んでみましょう。
心身のバランスを整えることで、咳喘息の症状を改善できる可能性があります。
感染症による悪化
原因 | 対策 | 具体的な方法 |
風邪やインフルエンザ・コロナなどのウイルス感染症が気道に炎症を起こす | 感染予防 | ・手洗い、うがい、消毒の徹底 ・マスクの使用・必要に応じてワクチン接種 |
早期受診 | 感染症が疑われた時は、早めに受診 |
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症は気道に炎症を起こす原因となり、咳喘息の症状を長引かせることがあります。
手洗い、うがい、消毒の徹底、マスクの使用などで、日頃から感染予防を心掛けましょう。ワクチン接種も検討します。
また、感染した可能性がある時は、早めに医療機関を受診しましょう。
治療法が本人に合っていない
処方された薬にあまり効果が認められないこともあります。
体質に合わなかったり、副作用による症状が出ることもあったりするため、状況により治療方法の再検討が必要です。
そのような時は、医師に症状や経過を相談し、治療方針を再検討しましょう。必要に応じて肺機能検査などが行われ、治療薬の変更や追加・処方量の調整などが検討されます。
医師に相談しながら最適な治療法を探していきましょう。
治療管理が不充分
原因 | 対策 | 具体的な方法 |
吸入ステロイド薬の吸入を忘れる | 吸入を習慣化する・忘れない工夫をする | ・洗面台など絶対忘れない場所に置き、毎日同じ場所で同じタイミング吸入する・服薬管理アプリ等を活用する |
使用方法や必要性の理解不足 | 目的や効能・使用方法を理解する | ・医師や看護師からの説明をしっかり理解する。不明点は質問し、再確認する・吸入器の使用方法はデモ機で練習する |
吸入ステロイド薬などを使用している患者が吸入を忘れる、自己判断で治療を中断していた、医師の服薬説明への理解不足から使用方法を守れてないなど、自己管理が不充分な場合には、その治療効果が著しく低下する可能性があります。
主治医と共に治療計画を見直し、各薬の目的や効能・使用方法を再理解しましょう。吸入を行っていても、方法が適切でない場合には効果が充分に得られません。
吸入方法の再確認や、服薬管理アプリなどを活用したスケジュール管理、症状経過の記録などを行い、主治医に相談しましょう。
咳喘息が一向に治らない時はセカンドオピニオンも検討を
咳喘息の治療を行っているにもかかわらず症状が改善しない場合、セカンドオピニオンを検討することも選択肢の一つです。
以下のような状況の場合、セカンドオピニオンが有効になることがあります。
治療の選択肢について詳しく知りたい
現在通院中の病院では取り扱っていない治療法を視野に入れている場合、たとえば漢方薬や栄養療法・最新医療などの選択について検討している場合にはセカンドオピニオンが役立ちます。
生活習慣の改善・代替療法や補完療法などを含め、より幅広い治療方法やアプローチを取り入れたい方は、それに特化した医療機関へのセカンドオピニオンを行うことも有効な選択肢となります。
通院先で連携機関などを紹介してもらえる可能性もあるので、まずは担当医師に相談するのも手です。
診断結果に不安がある時
咳喘息は、COPD(慢性閉塞性肺疾患:肺気腫・慢性気管支炎など)や逆流性食道炎など、症状が似ている他の病気と区別するのが難しい場合があります。
そのため、医師の正確な診断に時間がかかることがあります。
現状の診断だけでは不安があり、より専門的な医療機関での診察や検査を希望する場合にはセカンドオピニオンを検討します。
セカンドオピニオンにより、正確な診断が可能になることもあります。
医師とのコミュニケーションや治療の説明に不安がある時
治療方針や吸入薬に関する説明や指導は、病院や医師によって異なることがあります。
吸入薬の正しい操作や吸入にはコツや慣れが必要です。そのためか、医療者の操作説明と患者の理解度のズレが生じており、吸入は行っていたが効果がみられなかったケースや、それがセカンドオピニオンで改善したケースが実際にあります。
今の通院先ではどうしても緊張してしまう、うまく質問や相談ができないなど、指導内容やコミュニケーション面で不安がある場合には、セカンドオピニオンを通じて、より丁寧な説明や指導を受けられる医療機関を見つけることも選択肢の一つです。
そもそも咳喘息は治るのか?
咳喘息は長期にわたって患者を悩ませる疾患ですが、そもそも咳喘息は治るのか、気になる方も多いかと思います。
ここでは、咳喘息の完治の可能性から治療方法・症状の管理方法や向き合い方について詳しく解説します。参考にしてください。
咳喘息の完治は難しい
医学的な観点から見ると、咳喘息は完治が難しいとされています。
完全に治癒することは難しいものの、適切な治療や対策により症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることは可能です。
日常生活における影響がほとんどない状態になれば、治療が上手くいっているといえます。症状のコントロールには、定期的な経過観察と日々の体調管理が重要です。
注意点としては、症状が改善したからといって自己判断で治療を中止すると、症状の再発や悪化を起こす可能性があることが挙げられます。「治った」と感じても、それは治療により症状がコントロールされているためです。
吸入薬の回数や量の調整などは自己判断せず、必ず主治医に相談しましょう。
咳喘息の主な治療方法
咳喘息の治療は、大きく分けて短期的な治療と長期的な治療の2つのアプローチがあります。
1.短期的な治療(症状の速やかな改善)
- 気管支拡張薬:即効性のある薬剤で、咳の症状を素早く和らげます。
- 経口ステロイド薬:重症の場合に短期間使用し、炎症を抑えます。
2.長期的な治療(症状のコントロールと再発予防)
- 吸入ステロイド薬:気道の炎症を抑え、長期的な症状コントロールに効果的です。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:気道の炎症を抑える効果があり、経口薬として使用されます。
- 長時間作用型気管支拡張薬:症状のコントロールを助け、吸入ステロイド薬と併用されることが多いです。
これらの薬剤を組み合わせることで、患者の症状に合わせたアプローチを行っていきます。
咳喘息が悪化すると気管支喘息になることも
咳喘息は、放置すると気管支喘息に移行する可能性があります。以下に咳喘息と気管支喘息の主な違いを表で示します。
特徴 | 咳喘息 | 気管支喘息 |
主症状 | 乾いた咳のみ | 咳、喘鳴、息切れ |
呼吸困難 | あまりない | あり |
喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー音) | ない、もしくは軽度 | 顕著 |
肺機能検査 | ほぼ正常 | 閉塞性障害あり |
気道過敏性 | 軽度~中等度 | 中等度~高度 |
咳喘息の症状が悪化したり長期間続いたりする場合、気管支喘息への移行が疑われます。
定期的に医療機関を受診し、医師の指示に基づいて継続的な治療を行い、症状の悪化や気管支喘息への移行を防ぎましょう。
咳喘息は完全に治るというよりも、適切な治療と管理によってコントロールできる病気です。日々の生活の中で症状をうまく管理できれば、多くの患者が快適な日常生活を送ることができます。
市販薬で咳喘息は治らない
市販の咳止めや喉に良いとされる薬はほとんど効果がありません。その理由として、咳喘息の本質的な原因である気道の炎症や過敏症状に対して、市販薬は直接的な作用を持たないことなどが挙げられます。
軽度の症状緩和や、医師の診察を受けるまでの一時的な対処として、市販の咳止めや抗アレルギー薬が役立つこともありますが、市販薬では根本的な治療は困難です。
症状が長く続いている場合、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
市販薬を使用し続ける危険性
実は、市販薬を使用し続けることにはとある危険があります。
それは、症状が一時的に緩和されることで適切な診断と治療の機会を逃してしまうリスクや、その間に気道の炎症が進行して症状がより慢性化・重篤化してしまうリスクがあることです。
咳喘息の適切な治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などが有効です。これらは医師の診断に基づいて処方され、気道の炎症を抑え、症状の改善に役立ちます。
咳が長引いている場合、自己判断で市販薬に頼るのではなく、速やかに医療機関を受診しましょう。早期の診断と適切な治療が、咳喘息の症状改善や重症化予防のカギとなります。
咳喘息の治療ができる病院
咳喘息の適切な治療には、専門的な知識と経験を持つ医療機関を選ぶことが重要です。以下に、咳喘息の治療ができる病院の種類と特徴を解説します。
呼吸器内科・アレルギー内科または喘息外来で治療する
通常の内科でも喘息に対応していることもありますが、咳喘息の治療には呼吸器内科やアレルギー内科、または専門の喘息外来がある病院がおすすめです。
これらの診療科には喘息の専門医が在籍しており、より適切な診断と治療を受けられる可能性が高くなります。
また、一部の病院では、従来の薬物療法に加えて栄養療法(特定の栄養素の摂取や食事の指導など)や漢方薬などを取り入れた統合的なアプローチを行っているところもあります。
これらの治療法は、患者の体質や生活習慣に合わせてより個別化された治療を受けられる可能性があります。
オンラインクリニックの喘息外来で治療する
近年、オンライン診療の普及により、咳喘息の診察もオンラインで受けられるようになりました。通常のクリニックがオンライン対応窓口を設けている場合や、オンライン専用のクリニックで喘息外来を開設している場合があります。
オンライン診療は、多忙な方や通院が困難な方にとって非常に便利です。
特に、咳喘息の治療には長期的な経過観察や薬の調整が必要なため、オンラインでの定期的なフォローアップは効果的です。
ただし、初診時や重症度が高い場合には対面での診療や検査が必要となるため、オンライン診療の利用要件を事前に確認する必要があります。
なかなか治らない咳喘息の治療なら、おうち病院「オンライン喘息外来」
咳喘息には長期的な治療・症状管理が欠かせません。しかし、多忙で定期的な通院が困難な方も多いのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、おうち病院「オンライン喘息外来」です。
おうち病院「オンライン喘息外来」では、自宅にいながら専門医の診察を受けることができます。処方薬は自宅への配送か、最寄りの薬局で受け取ることができるため、通院の手間を大幅に削減できます。処方にはおくすり手帳の用意が必要です。
ただし、注意点があります。咳喘息の最初の診断には検査が必要となるため、オンライン診療では対応ができません。また、急激な発作時の対応もオンラインでは困難です。このような場合は、通常の医療機関への受診が必要となります。
オンライン診療はすでに咳喘息の診断を受け、症状が安定している患者の経過観察や薬の調整に適しています。忙しい日々の中でも定期的なフォローアップを受けやすくなり、治療の継続性を高めることができるのが大きな利点です。
咳喘息には適切な治療が大切。継続治療はオンラインの活用が便利
咳喘息には適切な治療の継続が不可欠です。通院できずに薬が切れてしまったり、自己判断で治療を中断したりすることは絶対に避けましょう。
近年、多忙な生活の中でオンライン専門外来を活用する人が増えています。スキマ時間を活かし、自宅や外出的から専門医の診察を受けられるオンライン専門外来を上手に活用しましょう。オンラインサービスを適切に利用することで、長期的な治療の継続が容易になります。
咳喘息の適切な管理に、おうち病院「オンライン喘息外来」をぜひご活用ください。