糖尿病を改善するためには、リスクを高める要因を理解した上で、適切な治療を行うことが大切です。
今回は糖尿病のリスクを高める要因、糖尿病を改善する方法について解説します。
目次
糖尿病のリスクを高める要因
糖尿病は生活習慣病の一つとされ、生活習慣の乱れが発症リスクを高めます。まずは、糖尿病のリスクを高めるさまざまな要因について確認していきましょう。
肥満
肥満は糖尿病のリスクを高める代表的な要因の一つです。
肥満症の方はインスリンの働きが悪くなり、十分に分泌されているのにも関わらず、血糖値が下がりにくくなってしまいます。実際に、若い頃に比べて5kg以上体重が増えている方の場合、糖尿病リスクも上昇するとされています。そのため、肥満の方は糖尿病を発症しやすいのです。
ただし、インスリン感受性が悪い場合、肥満でなくても糖尿病を発症する可能性はあります。太っていないから大丈夫と安心するのではなく、定期的に検診を受けましょう。
運動不足
運動不足も糖尿病のリスクを高める要因です。
日常的に運動しない方の場合、インスリンの感受性が悪くなりやすいとされています。さらに運動不足が続けば筋肉も減少してしまい、糖代謝がうまく行われなくなって血糖コントロールをしにくくなります。
また、運動不足は肥満につながるものです。前述の通り、若いときより運動量が明らかに減り、5kg以上体重が増えているのであれば、糖尿病発症リスクは高いといえるでしょう。
加齢
加齢も糖尿病のリスクを高める要因です。
実は、インスリンは加齢とともにその分泌量が減少します。さらに、脂肪増加や運動不足によってインスリンの効果そのものも落ちていきます。そのため、歳をとると糖尿病発症リスクが高まってしまうのです。
厚生労働省の「平成24年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、40歳代だと糖尿病の有病率が男性1.4%、女性1.1%ですが、60歳代になると糖尿病の有病率が男性20.7%、女性12.6%にまで一気に上昇するとされています。
その他のリスク要因
糖尿病のリスクを高める要因は他にもあります。
喫煙は健康にさまざまな悪影響を及ぼしますが、糖尿病とも関係があるといわれています。喫煙すると血糖値が上昇することがその理由です。また、喫煙に伴って不健康な生活習慣を送りやすくなることも、糖尿病リスクを高める要因と考えられています。
飲酒も糖尿病のリスクを高める要因とされています。適量であればそこまで影響しませんが、過度の飲酒は糖質を多く取りすぎてしまうため、糖尿病につながる恐れがあるのです。また、おつまみの食べ過ぎにより肥満になることで、糖尿病リスクが高まる可能性もあります。
また、血縁者に糖尿病の方がいる場合は注意が必要です。家族歴も糖尿病リスクを高める要因とされています。
糖尿病の改善法1.食事療法
糖尿病改善では食事療法と後述する運動療法が基本となります。
食事療法の目的
食事をすると糖が身体に取り込まれ、血糖値が上昇します。食事療法の目的は、個々の体質や病態に合わせ、摂取する糖やエネルギー量を調整して、血糖コントロールすることです。
食事療法の目安
では、食事療法ではどのくらいの量の食事を摂ればいいのでしょうか。まずは1日の総エネルギー量を以下の式で求めましょう。
「目安の摂取エネルギー=1.標準体重×2.身体活動量」
1.標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
2.身体活動量
・軽労作(デスクワークが多い職業など):25~30
・普通の労作(立ち仕事が多い職業など):30~35
・重い労作(力仕事が多い職業など):35~
目安となる摂取エネルギー量がわかったら、栄養バランスも考えていきます。食事療法を実践する場合、以下のような割合を目安にしてください。
・炭水化物:エネルギー量の50~60%
・タンパク質:エネルギー量の20%まで
・脂質:残りの%
このような割合で食事ができれば、健康的な食生活であるといえます。
食事メニュー選びのポイント
食事療法を行う場合、食事メニューは和食や和風料理の頻度を多くすると良いでしょう。和食はしっかり出汁を取れば、薄味でも美味しく食べられるためです。また、さまざまな食材を使うことができるため、栄養バランスも整えやすいです。
たとえば、食物繊維の多いキノコと良質なタンパク質を摂取できる鶏むね肉で作る「しいたけの肉詰め」は、簡単ですしカロリーも低く美味しくいただけます。肉詰め部分に野菜をふんだんに入れれば、よりヘルシーで歯ごたえも楽しみやすくなるでしょう。
注意点
食事療法を進める上で重要なのは、なるべく薄味で作ることです。食塩摂取量が増えると、高血圧を併発するリスクが高まります。また、濃い味付けはご飯が恋しくなるため、糖やエネルギーを過剰に摂取する原因にもなります。
食物繊維の多い食材を意識して摂取することも大切です。血糖値の急激な上昇を抑えて排出を促せます。必ず食事メニューに加えるようにしましょう。
なお、過度の飲酒は糖尿病リスクを高めます。晩酌はほどほどに控えてください。
糖尿病の改善法2.運動療法
運動療法は食事療法と同様に、糖尿病の改善の基本となるものです。
運動療法の目的
適度な運動を継続して行うと、インスリン感受性が高まり、脂質代謝が改善されます。エネルギーとして糖も消費されますので、肥満の解消にもつながります。このように、運動によって糖尿病のリスクを高める要因を遠ざけ、血糖コントロールすることが運動療法の目的です。
運動療法の目安
糖尿病改善のために運動療法を行う場合、以下を目安にして行いましょう。
- ・1回20分~60分程度
- ・週3日以上の運動
- ・食後すぐに開始するのがおすすめ
- ・有酸素運動がおすすめ
運動強度や頻度・時間について
上記にて大まかな目安を紹介しましたので、ここではより具体的に運動強度や頻度・時間について解説します。
運動強度は無理なくできる範囲であることが前提です。有酸素運動であれば、最大酸素摂取量の50%未満前後、中等度の強度でかまいません。目安としてはややきついくらいの運動だと効果があります。
糖質や脂肪などのエネルギーを効率よく燃やすためには、20分以上の継続した運動が良いと考えられています。そのため、1回の運動は20分以上行うと良いでしょう。運動による糖代謝の改善効果は、運動後12~72時間持続するとされています。そのため、2日と空けずに運動するとより効果的です。
運動量を増やすコツ
運動量を増やすコツは、日常生活の中で活動量を増やすことです。たとえば、以下のようなことを意識してみてください。
・エスカレーターではなく、階段を使って通勤する
・電車に乗る際は一駅先の駅まで歩いてみる
・目的地までの道のりを、少しだけ遠回りにしてみる
・車をなるべく使わず、徒歩や自転車で移動する
・休日は床がピカピカになるまで雑巾がけをしてみる
毎日の生活の中で、少しだけでも活動量を増やせれば、積み重なってかなりの運動量になります。まとまって運動する時間が取れないときも、こうしたコツを覚えておけば、糖尿病の改善へ大きく前進できることでしょう。
注意点
運動療法で大切なことは、継続することです。そのため、いきなりきつい運動をしたり、何時間も動き続けたりする必要はありません。運動強度がそこまで高くなくても、心身への負担がないように続けていきましょう。
糖尿病の方は日によって血糖コントロールが安定しないときがあります。そうしたときは、短く軽い運動だけにして、血糖値を観察してください。他にも、合併症が進行している、心臓や肺に負担がかかっている、骨や関節に痛みがあるといった場合は無理せず休みましょう。身体の異常があれば、必ず医師に相談してください。
また、運動療法を行う際には低血糖に注意しましょう。低血糖は重度になるとけいれん発作、昏睡などの症状があります。空腹時は低血糖リスクが高いので避けてください。たとえば、起床後に朝食を食べないでジョギングをするのはおすすめできません。
糖尿病が改善しないなら薬物療法も併用
食事療法や運動療法を、一定期間正しく継続して行っても、糖尿病が改善しないことはあるものです。そうしたときは、薬物療法も併用し、血糖コントロールを行います。
薬物療法の目的
薬物療法の目的は、高血糖状態を改善して合併症を予防することです。食事療法や運動療法も継続して行うことで、糖尿病の改善効果がより高まります。「糖尿病の治療薬があるから運動はもうやらない」ではなく、3つの療法を併行して行いましょう。
処方される薬
糖尿病の改善のために処方される薬はさまざまあります。大きく分けると、飲み薬と注射です。患者の病態によってどのような薬が適しているか、医師と相談しながら決めていきます。
処方薬は血糖値を下げる効果が高く、使用することで安定して血糖コントロールできるようになります。その一方で、低血糖を始めとした副作用が起きる可能性もあり注意が必要です。副作用が強いからといって、投与を中止したり薬の量を減らしたりするのは危険です。せっかくコントロールできていた血糖値が上昇してしまい、糖尿病の症状を悪化させるリスクが高まります。
また、市販薬・処方薬問わず、飲み合わせの悪いものが存在します。薬を購入する場合は、事前に医師に相談しておくと安心です。
糖尿病の薬の処方なら、おうち病院「オンライン診療」
糖尿病を改善するためには、まず食事療法や運動療法をしっかり行いましょう。食事・運動を通して規則正しい生活習慣となれば、血糖値も安定しやすくなり、改善に大きく前進します。
ただし、食事療法・運動療法だけでは血糖コントロールできず、薬物療法が必要になるケースもあります。その場合は病院で医師の診断を受け、薬物療法も併行して行っていきましょう。
「食事・運動に気を使いながら病院にも通うのは大変……」という方は、おうち病院「オンライン診療」の利用を検討してみてください。
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