糖尿病の治療における食事・運動・薬物のポイントや注意点とかかる費用を解説

目次

糖尿病の治療というと、お薬により血糖値を下げるのがメインと考える方が多いのではないでしょうか。しかし、糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法です。

薬物療法は、それらの治療をしても血糖値がコントロールできない場合に行います。また、薬物療法をしているからといって、食事療法や運動療法を怠るのはNGです。

すべての療法を継続して行うことで、血糖値コントロールができ、QOL(治療や療養生活を送る患者の肉体的、精神的、社会的、経済的、すべてを含めた生活の質)の維持・向上につながります。

今回は、糖尿病治療の目的、食事療法・運動療法・薬物療法のポイントや注意点、かかる費用について解説します。

糖尿病治療の目的

糖尿病治療の目的は「血糖値を下げること」と思っている方は多いのではないでしょうか。しかし、治療により血糖値を下げることはあくまでも手段でしかありません。

糖尿病治療の本来の目的は、病気を進行させずに合併症や併存症を予防し、糖尿病でない人と同じように快適な生活を送れるようにすることにあります。

糖尿病は、初期の頃の自覚症状がほとんどありません。無症状ではありますが、治療をしなければ糖尿病はゆっくり確実に進行していきます。自覚症状が現れ、ご自身で気づいたときには重篤な状態になってしまう、糖尿病はそんな恐ろしい病気なのです。

将来の健康を守るためにも、まずは定期的に検査を受けましょう。そしてもし糖尿病だと診断をされたならば、なるべく早く治療を開始しましょう。適切な治療によって適切に血糖値を下げられれば、QOLを保った状態でより良い人生を送れるようになります。

糖尿病を放置すると合併症を引き起こす恐れも

糖尿病は初期であれば、検査をしても血糖値が高いだけであり、自覚症状はほとんどありません。しかし、生活習慣を改める、治療を行うなどの適切な対処をしなければ、将来の健康を脅かすことになります。

血糖値が高いと、血管にダメージを与える活性酵素が発生しやすくなるため、血管が傷つきやすくなります。そしてその傷を修復するために、血管の壁は厚く硬くなってしまい、血管が詰まりやすくなります。つまり、高血糖状態が続けば続くほど、動脈硬化が進むわけです。

動脈硬化が進めば糖尿病が進行するだけでなく、さまざまな合併症が引き起こされる恐れがあります。脳梗塞や狭心症、神経障害や糖尿病腎症などが引き起こされれば、QOLは著しく下がりますし、生命の危機さえあります。そうした事態を避けるためには、治療を通して血糖値コントロールを行うことが大切です。

次章から、糖尿病の治療について詳しく説明していきます。血糖値のコントロール方法を身に付け、将来の健康な生活を守りましょう。

糖尿病の治療方法1.食事療法

食事療法は後述する運動療法とともに、糖尿病治療の基本となるものです。食事療法で血糖値をコントロールできれば、薬物療法を行う必要はありません。

人間は食事をすると、血液中の糖濃度が高まります。正常であればインスリンの分泌により、一定濃度に保たれます。しかし、インスリンがうまく機能しなくなると、血糖値が上がりすぎて糖尿病になってしまうのです。

食事療法の基本的な考え方は、摂取エネルギー量を適切にし、インスリンを分泌する膵臓への負担を軽くさせ、機能の回復を目指すことです。摂取エネルギー量が適正に保たれることはインスリン分泌能力や効きの改善にもつながり、血糖コントロールがしやすくなります。

以下で食事療法のポイントや注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

食事療法のポイント

食事療法の基本は、適正摂取エネルギーを意識して血糖値を上げすぎないように食事することです。そのためには、よく噛んで食べたり、腹八分目までに抑えたりすることが大切です。

とはいえ、食べてはいけない食材があるわけではありませんし、特殊な食材を用意したり特別なメニューにしたりする必要はありません。適切なカロリーの範囲内で、栄養バランスの良い食事を心がければ、血糖コントロールしやすくなります。

また、食べる順番に気をつけることも血糖コントロールにつながります。以下のように野菜から食べ始めることで、血糖値が急激に上がらなくなり、血糖コントロールしやすくなると言われています。

①はじめに野菜を食べ、糖の吸収を緩やかにします。

②次に汁物を口に入れることで、満腹感を促します。

③続いて肉や魚などの主菜を食べていきます。

④急激な血糖値の上昇を防ぐため、炭水化物は最後に摂取しましょう。

このように食べ順を意識すれば、効果的に血糖値をコントロールできます。誰でも簡単に実行できますので、ぜひ試してみましょう。

食事療法の注意点

糖尿病の合併症がある場合は、その治療も意識して食事療法を行います。

たとえば、脂質異常症がある場合は、エネルギー摂取量を減らすことを心がけます。特にコレステロールは1日300mgを超えないようにすることが大切です。

糖尿病腎症を併発している場合は、タンパク質の量を調整しましょう。高血圧であれば、食塩の量を減らすことが大切です。出汁をしっかりとって、薄味でも満足できるように意識するとよいでしょう。

食事療法の費用

食事療法は毎日の食事を意識するものですので、特別な費用がかかることはありません。

ただし、定期的に病院で検査して血糖値を測ったり、医師からのアドバイスを受けたりする必要があります。そのため、毎月の通院費、検査を含めて2,000円~3,000円程度かかります。

糖尿病の治療方法2.運動療法

運動療法は前述の食事療法とともに、糖尿病治療の基本です。運動療法によって血糖値を適切にコントロールできるのであれば、薬物療法の必要はありません。

糖尿病の場合、血液中の糖濃度が高まってしまっています。その糖を運動エネルギーに利用することで、濃度を薄めるのが運動療法の目的です。また、運動を継続して筋肉量が増えると糖代謝が上がり、脂肪が減ることでインスリンがうまく機能するようになります。

以下で、運動療法のポイントや注意点について解説しますので、参考にしてください。

運動療法のポイント

有酸素運動は、運動療法の基本です。脂肪を効率よく燃焼させられますし、エネルギーを長時間消費できるため、血糖値コントロールに効果的であるためです。

スイミングなどの全身を使うスポーツはもちろん効果が高いですが、日頃あまり運動していない方であればウォーキングでも構いません。散歩より少し速い程度の早歩きでも、血糖値を下げるのに役立ちます。

有酸素運動とともに筋力トレーニングを取り入れるのもよいでしょう。ジムなどで器具を使ってもよいですし、自重トレーニングでも効果を期待できます。

また、運動を行う場合は食後1時間から1時間半あたりに行うと効果的です。血糖値がピークになるタイミングなので、運動で上昇を抑えられれば数値をコントロールしやすくなります。

運動療法の注意点

運動療法を行う場合、週3日以上を目安に行いましょう。それ以下だとそれほど効果がありません。しかし、以下のような場合は運動療法を行うのは危険ですので、ご注意ください。

・血糖値が異常に高い
・眼底出血がある
・腎機能が低下している
・心臓の働きが悪い

こうしたケースでは、運動が制限または禁止されます。異常を感じたら、必ず医師に相談しましょう。

運動療法を行う際には、靴選びも重要です。快適に運動するためであることはもちろんですが、怪我を防止するためでもあります。

さらに糖尿病の場合、足の感覚が鈍ることがあり、怪我や出血があっても気づかないことがあります。また、細菌への抵抗力も落ちやすいので、傷口から感染症を引き起こす恐れもあるので注意が必要です。

運動療法の費用

運動療法を行う場合、人によって運動するためのウェアや靴などを揃えることがあります。その場合はウェア等の購入費用が必要です。

また、月に1回程度の通院で血糖値を測定したり、医師からのアドバイスを受けたりすることも必要です。薬物療法を行っていないのであれば、通院費用として月に2,000円~3,000円程度かかります。

糖尿病の治療方法3.薬物療法

薬物療法は、食事療法・運動療法を継続して行ったにも関わらず、血糖値が十分にコントロールされない場合に行う糖尿病治療です。

薬物療法で使用される薬剤にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると飲み薬である経口血糖降下薬とインスリン注射薬の2つです。インスリンの分泌能力やインスリンの抵抗性、年齢や肥満の程度、合併症の有無、肝臓・腎臓機能の状態などさまざまな角度から病態を明らかにし、医師と相談して決定します。

薬物療法のポイント

薬物療法を進める上で重要なことは、基本の食事療法・運動療法を適切に行うことです。

それぞれの療法を組み合わせて継続すれば、相乗効果により血糖値がコントロールしやすくなるためです。食事療法・運動療法を怠ってしまうと、血糖値が下がるどころか上がってしまい、結果的に治療薬の投与量や種類が増えることになります。

医師の指示に従い、二人三脚でじっくりと糖尿病治療を継続していきましょう。

薬物療法の注意点

糖尿病の薬はその種類によって、摂取タイミングが異なります。薬についてしっかり理解しておかないと、食前なのか食後なのかわからなくなるだけでなく、それに伴って飲み忘れてしまうこともありえます。そのため、自分が使用する薬について、その効果・飲み方・摂取量などをしっかり把握しておきましょう。

もし飲み忘れてしまったとしても、慌ててはいけません。薬の量を調整したり、関係ないタイミングで使用すると思いがけず副作用が発生したり、症状を悪化させる恐れがあります。薬物療法に関してトラブルや疑問・不安がある場合は、必ず医師に相談してください。

薬物療法の費用

薬物療法では、毎月の検査に加えて薬代がかかります。処方される薬の種類や量にもよりますが、食事療法や運動療法だけのときと比べて、倍程度の費用がかかると考えておきましょう。合併症がある場合は、それに加えてさらに薬代が上乗せされます。

糖尿病の薬物治療なら、おうち病院「オンライン診療」

糖尿病は発見が遅れたり治療を怠ったりすると、症状の悪化や、合併症を引き起こす恐れがあります。定期検診により血糖値が高いことがわかったら、運動や食事に気を配って生活習慣を改めるように心がけてください。

糖尿病の症状や人によって、食事・運動療法だけでは十分に血糖値をコントロールできない場合もあります。そのような場合は薬物療法も組み合わせて治療を進めます。3つの療法を組み合わせ、血糖値を適切にコントロールしていきましょう。

また、糖尿病の治療では、薬を途中でやめることは危険です。もし薬が足りなくなりそうであれば事前に病院を受診して処方してもらいましょう。「時間がなくて病院に行くタイミングがない」という場合は、おうち病院「オンライン診療」の利用がおすすめです。

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