健康診断で中性脂肪の基準値から外れる原因は?リスクや対策を解説

健康診断で中性脂肪値が基準値から外れる原因はさまざまです。異常値にある状態を放置すると、重篤な健康被害につながるケースもあります。

本記事では、中性脂肪値が高い・低い原因や治療方法、対策を解説します。

健康診断で中性脂肪値が高い原因は?

中性脂肪とは、トリグリセリドと呼ばれる脂肪成分です。体内に多く存在する成分であり、糖質不足をサポートし、体を動かすための原動力になります。

中性脂肪の基準値は、30〜149mg/dlです。150mg/dl以上になった場合、脂質異常症(高トリグリセライド血症)と判断されます。

中性脂肪値が高くなるおもな原因は以下の通りです。

  • ・ストレス
  • ・加齢
  • ・アルコール

加齢によって、誰でも中性脂肪が高くなる可能性があります。ストレスやアルコールなどの要因は、自身で対策可能です。ストレスを日々感じる人や、アルコールを多く飲む人は対策をしていきましょう。

ストレス

ストレスが影響し、血糖値が低下するインスリンのはたらきが低下する可能性があります。そのため、中性脂肪が増える原因になり、中性脂肪値にも影響を与えるおそれがあるでしょう。

加齢

年齢を重ねていくと、基礎代謝が低下し、中性脂肪が溜まりやすくなります。女性の場合は閉経を迎えると、ホルモンバランスの影響で脂肪がつきやすくなるでしょう。

アルコール

アルコール自体が高エネルギーであるため、飲み過ぎると中性脂肪が増えやすくなります。また、酔いが回ると、食欲が抑えにくくなって食べ過ぎてしまうことで、中性脂肪が増えやすくなる可能性があります。

健康診断で中性脂肪値が低い原因は?

中性脂肪の基準値は、30〜149mg/dlです。29mg/dl以下になった場合、中性脂肪値が低いと判断され、異常値とみなされます。

中性脂肪値が低くなるおもな原因は以下の通りです。

  • ・過度なダイエット
  • ・過度な運動

過度なダイエットや運動で体に負担がかかり過ぎると、体調を崩すだけでなく、中性脂肪値が低くなります。適度なダイエットや運動を心がけましょう。

過度なダイエット

ダイエットを目的として脂質や糖質を極端に制限したり、食事自体を控えたりすると、中性脂肪値が低くなります。

過度な運動

スポーツ選手などのように、体に負担がかかる運動を継続すると、中性脂肪が大量に消費されます。そのため、中性脂肪が低くなるリスクが生じます。

中性脂肪の異常値を放置するリスク

中性脂肪の異常値を放置すると、さまざまな疾患や症状が起こるおそれがあります。中性脂肪値が高い場合と低い場合で、起こりうる疾患や症状が異なります。

中性脂肪値が高いとどうなる?

中性脂肪値が高い状態が続くと、さまざまな疾患が起こりえます。おもな疾患は以下の通りです。

  • ・動脈硬化
  • ・メタボリックシンドローム
  • ・急性膵炎
  • ・異所性脂肪

中性脂肪が高いと、さまざまな臓器に影響が出てしまい、重篤な健康被害が起こる可能性があります。速やかに医療機関を受診しましょう。

動脈硬化

動脈硬化とは、血管が硬くなり、弾力性が失われた状態です。血管内にプラークや血栓が生じることで血管が詰まりやすくなります。

中性脂肪が増え過ぎると、動脈硬化が加速し、血流が悪くなります。結果、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの命にかかわる疾患に発展する可能性があるでしょう。

メタボリックシンドローム

日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上、かつ血圧・血糖・脂質のうち2つ以上が基準値から外れると、メタボリックシンドロームと診断されます。

血圧・血糖・脂質の基準値は以下の通りです。

  • ・最大血圧(収縮期血圧)≥130mmHgかつ/または最小血圧(拡張期血圧)≥ 85mmHg
  • ・空腹時高血糖≥ 110mg/dl
  • ・高トリグリセライド血症≥150mmHgかつ/または低HDLコレステロール血症< 40mg/dl

メタボリックシンドロームは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患を招く要因になります。

急性膵炎

急性膵炎とは、膵臓の急性炎症によって起こるものです。膵臓が出す消化酵素がきっかけとなり、吐き気や激しい腹痛、発熱などが起こります。中性脂肪値が500ml/dlを超えると、急性膵炎を発症するリスクが高まるとされています。

異所性脂肪

異所性脂肪とは、本来はほとんど存在しない非脂肪組織に存在している脂肪です。本来では脂肪を溜めこまない心臓や肝臓、筋肉などに脂肪が溜まると、これらの機能が低下します。

たとえば、脂肪肝などの異所性脂肪が進行すると、肝がんや肝硬変といった疾患に発展する可能性があります。

中性脂肪値が低いとどうなる?

中性脂肪値が低くなると、慢性疲労や肌荒れ・抜け毛、免疫力の低下が起こりやすくなります。また、以下の疾患が関連して起こる場合があります。

  • ・甲状腺機能亢進症
  • ・副腎皮質機能低下症
  • ・肝機能の低下

いずれの状態も放置すると、中性脂肪が低くなり、さまざまな症状が出始めます。早めに医療機関を受診しましょう。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症とは、血液中に甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患です。別名、グレーブス病やバセドウ病とも言われています。甲状腺機能亢進症になると、新陳代謝が活発になり、多くの中性脂肪が消費されます。そのため、中性脂肪値が低値になる可能性があるでしょう。

副腎皮質機能低下症

副腎皮質機能低下症とは、副腎皮質の病変が原因となり、ステロイドホルモンの分泌が慢性的に低下する疾患です。ホルモンの分泌が低下すると、中性脂肪の低下が引き起こされる可能性があります。

肝機能の低下

肝機能が低下すると、中性脂肪値が下がり、嘔吐や食欲不振、皮膚のかゆみや倦怠感などの症状が起こります。

健康診断で中性脂肪を検査する方法

脂質検査では、コレステロールと中性脂肪の検査ができます。コレステロールは、体を構成するホルモンや細胞膜の原料になるほど、重要な役割を担っています。

中性脂肪は、皮下組織や内臓の周辺に蓄えられた脂肪組織です。生きるために必要なエネルギーになります。

脂質検査で確認できる検査項目は以下4つです。

  • ・LDLコレステロール
  • ・HDLコレステロール
  • ・Non-HDLコレステロール
  • ・中性脂肪

いずれの数値も、健康管理する上で重要な項目です。健康診断の際は、細かくチェックしておきましょう。

LDLコレステロール

悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールは、肝臓にある脂質を全身に運ぶ役割を担うリポ蛋白です。

LDLコレステロールが過剰にある場合、血管壁に蓄積され、動脈硬化が起こる原因になります。

LDLコレステロールの基準値は以下の通りです。

  • 59mg/dl以下:要注意
  • 60〜119mg/dl:基準範囲
  • 120〜179mg/dl:要注意
  • 180mg/dl異常:異常

HDLコレステロール

善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは、血液中の余分なコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ役割を担うリポ蛋白です。HDLコレステロールが多いと、コレステロールの処理が良好であり、動脈硬化のリスクが低いといえるでしょう。

HDLコレステロールの基準値は以下の通りです。

  • ・34以下:異常
  • ・35〜39mg/dl:要注意
  • ・40mg/dl以上:基準範囲

Non-HDLコレステロール

Non-HDLコレステロールとは、総コレステロールの値からHDLコレステロールの値を差し引いた値です。Non-HDLコレステロールは動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの量を指します。

脂質異常症の診断基準の1つとなっており、動脈硬化のリスクを総合的に管理できる目安でもあります。

Non-HDLコレステロールの基準値は以下の通りです。

  • ・89mg/dl以下:異常
  • ・90〜149mg/dl:基準範囲
  • ・150〜209mg/dl:要注意
  • ・210mg/dl以上:異常

中性脂肪

中性脂肪は、お酒の飲み過ぎや食べ過ぎなどの要因で数値が高くなります。中性脂肪が高い状態が続くと、急性膵炎などが発症する可能性が高まります。

中性脂肪の基準値は以下の通りです。

  • ・29mg/dl以下:異常
  • ・30〜149mg/dl:基準範囲
  • ・150〜499mg/dl:要注意
  • ・500mg/dl以上:異常

中性脂肪値が高い、または低い場合の対策

中性脂肪値が高い、または低い場合、さまざまな対策をしなければなりません。

いずれにおいても、以下の対策方法を実践することで中性脂肪値がコントロール可能です。

  • ・食生活の改善
  • ・運動
  • ・睡眠時間の確保
  • ・薬物療法

まずは食生活や運動の改善を図り、行動してみましょう。どうしても改善が見込めない場合は、専門医の判断のもと、薬を処方してもらってください。

食生活の改善

食生活を改善するコツとしては、脂質・糖質を控えめにすることが大切です。おもに以下の食べ物を減らす工夫をすることをおすすめします。

  • ・クリームやバターなどの乳脂肪分
  • ・豚肉や牛肉などの脂質が多いもの
  • ・ジュースやケーキなどの糖質が多いもの

また、食物繊維を多く含む食品を摂取することが大切です。食物繊維は、腸内のコレステロールや脂肪分を包み込み、体外に排出してくれます。おからや干し椎茸、納豆やごぼうなどは食物繊維を多く含みます。積極的に食べましょう。

運動

有酸素運動を週に2〜3回続けることで、効率良く中性脂肪が減らせます。具体的な運動方法としては、ウォーキングや水中運動、エアロバイクやジョギングなどがおすすめです。

また、普段の生活を送る上で「体を動かすこと」を意識し、実践することも大切です。たとえば、エレベーターの使用を控えて階段を使ったり、徒歩で移動する際に早歩きしたりといった方法などをおすすめします。

自分に合った運動方法を実践し、上手にストレスを発散させながら、積極的に体を動かしましょう。

睡眠時間の確保

睡眠時間が不足すると、睡眠中に分泌されるホルモンバランスが崩れ、食欲旺盛になります。その結果、食べ過ぎてしまい、中性脂肪が上がる原因になります。ホルモンバランスを整えるためにも、睡眠時間をしっかり確保するようにしましょう。

薬物療法

運動や食事を見直しても中性脂肪値が安定しない場合は、中性脂肪を減らす作用を持つフィブラート系の薬を服用することが有効です。ただし、腎機能が低下している人などは服用が難しい場合があります。

また、現在服用している薬との飲み合わせを考慮しなければならないケースもあるでしょう。必ず専門医の判断のもと、服用してください。

中性脂肪値が低い場合の食生活における対策

中性脂肪値が低い場合、食生活を変えることで改善ができる場合があります。改善が見込まれるおもな対策は以下の通りです。

  • ・栄養バランスに配慮する
  • ・炭水化物を多めに摂る

炭水化物やたんぱく質、脂質などをバランスよく摂取し、中性脂肪値を上げていきましょう。

栄養バランスに配慮する

栄養バランスに配慮し、炭水化物やたんぱく質、脂質をバランスよく食べることが大切です。これらの体に必要な栄養素をまんべんなく摂取していくことで、中性脂肪値は上がります。

毎回食事をする際は、朝・昼・夜規則正しく食べることが重要です。食事を抜くなどして、不規則な食生活を送っている人は、改善を図りましょう。

炭水化物を多めに摂る

中性脂肪値が低い状態が続く場合、体が必要なエネルギーが不足していることがあります。そのため、エネルギーの役割を担うたんぱく質を摂取することが有効です。

炭水化物が分解されることで生じるブドウ糖は、脳の栄養源にもなります。食べ過ぎると逆効果になることに注意しつつ、適度な量の炭水化物を摂取していきましょう。

中性脂肪値が気になる人はサプリメントや漢方を活用しよう

中性脂肪値を下げる薬以外にも、近年ではサプリメントや漢方などが注目されています。

たとえば「血液サラサラ効果」が見込めるEPA・DHAを含むサプリメントや、脂肪を分解・燃焼する効果が見込める防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが挙げられます。

摂取の仕方には十分配慮し、自分に合ったサプリメント・漢方などを試してみるのもおすすめです。

健康診断で中性脂肪が気になり始めた人は「健診サポート」で自己管理を

中性脂肪の異常値を放置すると、体調が悪くなったり、さまざまな疾患が起こったりします。動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの疾患が起き、病状が進行すると、命を脅かす原因にもなります。

一方で、中性脂肪値の異常を把握してはいるものの、なかなか医療機関を受診できない人がいます。また、本当に病院にかかるべきか、自身で判断できない人もいるのではないでしょうか。

そんな人におすすめなのが、おうち病院「健診サポート」です。中性脂肪の数値でお悩みの人が、自宅にいながら専門医に相談できます。家事や仕事などで忙しく、なかなか治療に向き合えない人でも、気軽に利用しやすいサービスといえます。

健診サポートで専門医によるアドバイスを受けることで、誰でも実践できる改善習慣や、日常生活を送る上で気をつけるポイントなどが得られます。自身の健康状態を改善したい人や、専門医から確かなアドバイスを受けたい人におすすめのサービスです。

健診サポートは、スマホやPCで気軽に利用できるため、場所を選ばず利用できます。健康的な生活を送るためにも、健診サポートを活用してみてはいかがでしょうか。