出産後、妊娠前よりPMSの症状が悪化したり、それまではなかったのに初めてPMSの自覚症状が出たと感じたりという女性は少なくありません。
産後のPMSは、育児疲れや産後うつとの区別が難しい場合もあります。
本記事では、産後のPMSについて解説し、症状を緩和する方法やホルモンバランスを整える具体的な方法をご紹介します。
目次
その症状、もしかしてPMS?産後の体調不良とPMSの違い
産後数ヶ月は月経が再開していないか、不規則な方も多いでしょう。
また、出産による身体の回復が充分でないことも多いため、症状を産後の経過や育児疲れと混同し、気づきにくいことがあります。
ここではまず、PMSの主な症状や症状出現の時期を確認しましょう。
主なPMSの症状と時期
PMS(月経前症候群)の主な症状には、イライラ、気分の落ち込み、食欲の変化、眠気、むくみ、頭痛などがあります。
通常は月経の3〜10日前から始まり、月経開始とともに軽減します。このサイクルが、PMSの特徴です。
産後に充分休む事ができず体が回復していない、いわゆる「産後の肥立ちが悪い」という状態や育児疲れとは、月経周期との関係性や体調不良のサイクルという点で区別できます。
まずは自分の状態を把握するために、月経周期と体調の変化をメモしたり、体調管理アプリを活用して記録したりすることをおすすめします。これにより、ご自身の体調の変化や症状の傾向を見つけやすくなります。
PMSに似た他の疾患
産後、月経前だけでなく、月経中の月経困難症状が悪化したと感じる方もいます。
また、PMSと症状が類似する他の疾患にも注意が必要です。たとえば、産後うつでは気分の落ち込みやイライラなど、PMSと似た症状が現れます。また、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患でも、PMSに似た症状が現れることがあります。
症状が長期間続く場合や日常生活に支障をきたす場合には早めに医療機関を受診し、専門医の診断と適切な治療を受けましょう。
ママの3人に1人は産後にPMSが悪化したと感じている
20歳から40歳の母親のうち、約3人に1人が「産後にPMSがひどくなった」と感じているという調査データがあります。この調査では、産後のPMSによる困りごとや対策方法、家族に求めるサポートなども調べられています。
PMSが原因で困っていることの上位には、夫やパートナーの「些細な行動へのイライラ」「子どもの行動へのイライラ」「家事への影響」などが挙げられました。対策としては「睡眠をとること」「無理をしない」などのセルフケアが多く、一方で約3割の人は何も対策をしていないことも分かりました。
また、PMSで体調が優れないときに家族やパートナーにしてもらって嬉しかったこととして「率先して家事・育児をしてくれた」「一人の時間をくれた」などが挙げられました。
産後のホルモンバランスの変化や育児ストレスはPMS悪化の要因にもなるうるため、家族の理解と協力が重要です。
なぜPMSは産後に悪化するの?
なぜ産後にPMSが悪化しやすいのか、考えられる主な2つの理由について解説します。
産後にPMSが悪化する理由1|ホルモンバランスが乱れるから
産後はホルモンバランスが大きく変動します。
出産後、母乳分泌に伴いプロラクチンとオキシトシンの分泌が急激に増加します。また、妊娠中に高い状態を保っていたエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は、出産直後から急激に低下します。
その劇的な変化は産後のイライラや不調・産後うつにも大きく影響するとされており、ホルモンバランスが安定してくるまでには3~6ヶ月はかかるといわれています。
その過程で、PMSの症状も以前より強く感じられることがあります。
産後にPMSが悪化する理由2|育児による疲労やストレス
産後は24時間体制での新生児育児が始まり、充分な睡眠や休息を取ることが難しくなります。
睡眠不足や疲労、育児への不安やプレッシャーなどが重なることで心身のストレスが蓄積され、PMSの症状を悪化させる要因となります。さらに、育児優先の生活となることで自分の時間を確保しにくくなり、これまでに行えていたストレス解消や気分転換などの機会が減少することも、PMS症状を感じやすくする一因と考えられます。
これらの要因が複合的に作用することで、産後のPMSが悪化しやすくなります。ただし個人差も大きく、他の疾患の可能性もあるため、症状が心配な方は早めに医療機関に相談しましょう。
母乳育児中でも大丈夫。産後のPMSの治療法
母乳育児中でも、産後数ヶ月で月経が再開する方もいれば、卒乳まで再開しない方もいます。母乳への影響から治療が心配な方もいるかもしれませんが、母乳育児中でもPMS治療は可能です。
ここでは、PMSの主な治療法、母乳育児中でも受けられる治療法をご紹介します。
ピルや薬による治療
産後6ヶ月以降であれば、症状に応じて低用量ピルや抗うつ薬、漢方薬などによる治療が可能です。
特に次の出産計画がない場合、ピルの服用による治療が有効な選択肢になります。内服によりホルモンバランスの調整や症状緩和が期待できます。
薬の種類や用量は個々の状態に応じて慎重に選択する必要があります。医師と相談しながら、最適な治療法を見つけていきましょう。
カウンセリング療法
イライラや不安などの精神症状が強く現れている場合、専門家によるカウンセリングも有効です。
カウンセリングを通じて、ストレス管理の方法や症状への対処法を学ぶことができます。自分の感情や状況を客観的に見つめ直す機会ができることで、心身の安定にもつながります。
また、これらの治療法に加えて、食事や運動の指導が効果的なこともあります。生活習慣を見直すことで、PMSだけではなく総合的な健康状態の改善にも役立ちます。
症状や状況に合わせて、最適な治療プランを医師と相談しながら決めていきましょう。
産後のPMSを和らげる具体的な方法
産後のPMS症状を和らげるには、日常生活での工夫も大切です。以下に具体的なセルフケア方法を紹介します。
産後の回復を意識した栄養のある食事を取る
産後の体調回復とPMS症状の緩和には、バランスの取れた栄養摂取が大切です。特に以下の栄養素を意識的に摂取できると良いでしょう。
- ・鉄分:レバー、ひじき、卵など
- ・カルシウム:乳製品、小魚、小松菜など
- ・ビタミンC:柑橘類、緑黄色野菜など
- ・ビタミンB6:バナナ、カツオ、サンマなど
- ・葉酸:ほうれん草、納豆など
- ・タンパク質:肉類、魚類、大豆製品など
これらの栄養素は、ホルモンバランスの調整や疲労回復に役立ちます。
とはいえ、産後は食事をつくる余裕がない方も多いのではないでしょうか。惣菜や宅食サービス、家事代行サービスや行政などの産後ケアサポートサービスを利用するなど、無理のない範囲でできることを取り入れていきましょう。
適度な有酸素運動をする
軽い有酸素運動はPMS症状の緩和に効果的です。
WHOの「身体活動・座位行動ガイドライン」によると、妊娠中および産後の健康的な女性は、週に合計150分程度の中強度の有酸素運動が推奨されています。
とはいえ、産後はまとまった時間を確保するのが難しい方も少なくありません。
赤ちゃんと一緒にできるストレッチや、ベビーカーを押しながら散歩をするなど、できる範囲で運動を取り入れましょう。
最近は、行政の産後ケアで母子向けにストレッチやヨガのイベントなどが開催されている地域もあります。お子さんと一緒に参加できる企画を探してみてはいかがでしょうか。
参照元:WHOの身体活動・座位行動ガイドライン(日本語版) (who.int)
ストレスをためない
産後は心身ともに大きな変化を経験する時期です。
自分に合ったストレス発散法を見つけることが重要です。たとえば赤ちゃんが寝ている間に好きな音楽を聴く、短時間でも趣味の時間を作るなど、気分転換や楽しみの時間を持てるようにしましょう。
また、育児や家事は完璧にこなそうとせず、できる範囲で行うことが大切です。スキマ時間を活用したり、地域の産後ケアサービスや育児サポートも利用しながら、自分のための時間を作りましょう。
つらい時は我慢せず病院へ
セルフケアで改善がみられない場合や、症状がつらく日常生活に支障をきたす場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。
薬による治療やカウンセリング、母乳育児中でも可能な治療法など、個々の状況に合わせた治療法を提案してもらえます。
早めの対応が症状の悪化を防ぎ、ご自身やお子さんの生活や長期的な健康を守ることにもつながります。我慢してしまうと、夫婦生活や次の子の妊娠・出産計画にも影響してしまう可能性があります。
PMSの産後悪化を夫婦で乗り越える
産後のPMSを改善するためには、夫やパートナー・家族の理解やサポートが不可欠です。周囲の理解や協力は、症状の軽減と精神的な安定に大きく関連します。
まずはPMSについて夫に理解してもらうことが重要です。可能であれば一緒に婦人科を受診しましょう。医師からの専門的な説明は、夫の理解を深めるには非常に効果的です。
これによりイライラや不調が気分の問題などではなく、ホルモンバランスの影響による生理的な変化であることを認識してもらいやすくなります。理解を得ることで、具体的なサポートをお願いしやすくなります。
PMSの症状がつらい時期には、夫に育児や家事に、より積極的に参加してもらうよう依頼しましょう。「症状がつらいので、家族の分の夕飯を用意してほしい」「○○の間、子どもの相手をしてほしい」など、具体的に要望を伝えることが効果的です。
さらに夫婦だけでなく、可能であれば親族や友人にも協力を求めましょう。
充分な睡眠の確保や、ストレス軽減のための時間を作ることも重要です。夫婦で協力し、一人で休める時間やリラックスできる環境を整えることで、PMSの症状緩和につながります。
夫婦で支え合いながら、この時期を乗り越えていきましょう。
産後のPMSに関する相談が出来る医療機関
産後のPMSに悩む方々にとって、適切な医療機関での相談は重要です。以下に相談可能な医療機関や受診方法を説明します。
産婦人科・婦人科を受診する
産後のPMSの相談先として、まずは産婦人科や婦人科の受診をおすすめします。
出産した病院がPMSに対応している場合、そこで相談するのも良いでしょう。他には地域の婦人科やレディースクリニックが選択肢として挙げられます。
ただし、PMSの症状でも精神的な症状が特に強い場合、心療内科での対応が適している場合もあります。PMSの対応を行っている病院かどうか、受診前にホームページか電話で確認しましょう。
オンラインPMS外来で診断を受ける
近年はオンラインでPMS外来を行っているところが増えています。オンライン外来は、育児で多忙な方や外出が難しい方にとって非常に便利です。
オンラインPMS外来では、ビデオ通話やチャットを通じて専門医に相談できます。
自宅から診察を受けられるため、お子さんの世話をしながらでも利用が可能なこと、待ち時間がなく効率的に診療を受けられることが大きなメリットです
産後のPMSがつらいなら、おうち病院「オンライン月経困難症・PMS外来」
産後のPMSでお悩みの方に便利で使いやすい選択肢として、おうち病院「オンライン月経困難症・PMS外来」をおすすめします。
育児で通院が難しい方でも、自宅から簡単に専門医の診察を受けられます。
このサービスの利点は、WEBで空き時間を見つけて予約できる点です。育児の合間の時間を利用して、スムーズに受診することが可能です。
また、処方薬も自宅への配送か、お近くの薬局での受け取りを選択できるため、外出の負担を最小限に抑えられます。オンライン診療では移動時間や待ち時間を省けるため、産後の忙しい生活の中でも効率的に医療サポートを受けられます。
薬は自宅へ配送か、お好きな薬局薬店でお受け取りいただけます。
産後にPMS症状が悪化したと感じるなら、我慢せず早めに受診を
産後にPMS症状が悪化したと感じても、日々の育児に追われて自分のケアを後回しにしてしまう方が多いのではないでしょうか。
しかし、適切な治療を受けてつらい症状を緩和できれば、自分自身だけでなくご家族の生活の質(QOL)を高めることにもつながります。授乳中の治療も可能です。つらいときは我慢せず、早めに医療機関に相談しましょう。
早めの対応で症状を軽減し、より快適な育児生活を送りましょう。