アポハイドローションは保険適用の手汗治療薬!効果・薬価・副作用を解説

「アポハイドローション」は手のひらの多汗症、手掌多汗症の治療に用いる外用薬のことです。医療機関では保険適用で処方されています。 本記事ではアポハイドローションの効果や薬価、副作用や使用に当たる注意事項などを詳しく解説します。

目次

「アポハイドローション」は手のひらの多汗症、手掌多汗症の治療に用いる外用薬のことです。医療機関では保険適用で処方されています。

本記事ではアポハイドローションの効果や薬価、副作用や使用に当たる注意事項などを詳しく解説します。

アポハイドローションとは?

アポハイドローション(販売名:アポハイドローション 20%)とは、手のひらに大量の汗をかく原発性手掌多汗症の治療に用いる外用薬です。1日1回、就寝前に手のひらに塗布することで、発汗の促進を抑制する効果が期待できます。

久光製薬株式会社によって開発され、2023年6月に保険適用になりました。原発性手掌多汗症の患者に向けて、皮膚科などの医療機関で処方されています。

アポハイドローションの効果

アポハイドローションによる発汗の抑制効果は、有効成分「オキシブチニン塩酸塩」によるものです。

手のひらの汗は、交感神経が活発になることで神経伝達物質「アセチルコリン」が放出され、エクリン汗腺の受容体に結合して発汗します。オキシブチニン塩酸塩は、アセチルコリンが受容体に結合することを防ぐ「抗コリン作用」を発揮することで、発汗を抑制します。

代表的な制汗成分である塩化アルミニウムローションのように汗腺を防ぐのではなく、発汗に導く神経伝達物質そのものを遮断させます。

久光製薬株式会社は原発性手掌多汗症患者を対象に、アポハイドローション20%とプラセボを4週間投与した際の有効性の検証試験を行っています。検証の結果、ベースラインの発汗量が50%以上改善したという患者がアポハイドローションで52.8%、プラセボで24.3%、という数値が出ています。このことから、アポハイドローションの有効性が確認されました。

参考:アポハイドローション20%|久光製薬株式会社

アポハイドローションの対象となる原発性手掌多汗症とは

アポハイドローションは、多汗症の一種である「原発性手掌多汗症」の治療薬です。

多汗症とは、日常生活に支障をきたすほど大量の汗をかいてしまう症状のことです。多汗症には全身に汗をかく「全身性多汗症」と、手のひらや足の裏、脇など一部分だけ大量に汗をかく「局所性多汗症」があります。

そのなかでも、病気や薬の副作用に合併して発症する「続発性多汗症」と、はっきりとした原因が分からない「原発性多汗症」に分かれます。アポハイドローションの対象となる「原発性手掌多汗症」は、原発性の局所多汗症の一種に該当します。

原発性手掌多汗症の症状・診断基準

多汗症の診断基準は、日本皮膚科学会ガイドラインにて下記のように定められています。

以下の6つの項目のうち2つ以上当てはまること、明らかな原因がないまま身体の一部分だけ過剰な発汗が6ヶ月以上続いていることが、局所多汗症の診断基準です。

  1. 最初に症状が現れたのが25歳以下である
  2. 左右対称に発汗が現れる
  3. 睡眠中は発汗が止まっている
  4. 1週間に1回以上、多汗のエピソードがある
  5. 家族歴がある
  6. 多汗によって日常生活に支障をきたしている

参考:原発性局所多汗症診療ガイドライン2023改訂版|日本皮膚科学会ガイドライン

局所多汗症の発症は、小学校入学時期から思春期あたりに症状を自覚しやすいです。

手掌多汗症を患っていると、キーボードが操作しにくくてパソコン業務に支障が出たり、手をつなぐことや握手を恐れたりと、日常生活においてさまざまな支障をきたしてしまいます。

原発性手掌多汗症の原因

原発性手掌多汗症の明確な原因は分かっていませんが、手に分泌されている交感神経の活性化が関わっていると予測されています。

交感神経は、手の汗腺に作用して発汗を促す神経です。通常は緊張しているときや体温が高くなったときに活性化して汗を出すのですが、手掌多汗症の場合、この交感神経が常に活性化しています。


交感神経の活性化が原因のことから、精神的なストレスや緊張、自律神経や生活リズムの乱れなどが手掌多汗症の発症に関係する可能性があります。

原発性手掌多汗症の治療

原発性手掌多汗症は、アポハイドローション以外にもさまざまな治療があります。

治療の種類治療方法効果・働き費用・保険適用
アポハイドローション外用薬発汗の原因となる神経伝達物質を遮断(抗コリン作用)することで、手のひらの発汗を抑制する保険適用
3割負担で約1週間分707.4円(約710円)
塩化アルミニウム外用薬
手のひらや足裏に塗ると汗腺を塞いで発汗を抑制する保険適用外
※現在、保険診療に適用の外用薬がないため
100ml:1,100円~1,500円くらい
抗コリン薬内服薬発汗の原因となる神経伝達物質を遮断する保険適用
3割負担で28日分1,000円程度
ボトックス注射多汗症の部位に注射することで、発汗を抑制エクリン汗腺の活動を抑制し、過剰な発汗を抑える保険適用外
両手のひら100単位44,000円、200単位80,300円くらい
イオントフォレーシス水道水を通して手や足に直流電流を流す治療法水道水の入った容器に手や足を浸し、微弱な電流を流すことで、電気分解により生じた水素イオンが汗腺に作用して発汗を抑制保険適用
3割負担で1回660円
胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)発汗に関わる神経管を切除して、発汗を止める胸の横と腋窩に傷をつけて胸腔鏡を挿入し、モニターを見ながら交感神経管を遮断する保険適用3割負担で治療費は約9~10万円、入院する場合は約12~15万円

アポハイドローションの薬価・費用

アポハイドローションの1本当たりの薬価は4.5ml(約7日分)で2,358円です。保険適用だと3割負担なので、707.4円(約710円)になります。

アポハイドローションの使い方

アポハイドローションは1日1回、就寝前に使用します。使い方は以下のとおりです。

  1. 手のひらの水分をよく拭きとる
  2. ポンプ5押し分を目安に、両手のひら全体に塗る
  3. 薬が乾くまで寝具などに触れないようにする
  4. 薬を塗ったまま、就寝する
  5. 起床後、手を流水でよく洗う

アポハイドローションを洗い流したあとは、再度、薬を塗る必要はありません。基本的に、毎日塗り続けることで安定した効果が得られる薬です。

アポハイドローション使用上の注意事項

アポハイドローションを塗ったあとは、起床後に手を洗うまでの間、塗った部分以外に触れないようにしましょう。眼や口、顔や髪の毛に触るのは避けて、万が一眼に入った場合は直ちに水で洗い流してください。

就寝前に塗るものとして、塗ったあとの歯磨きやシャワー、コンタクトレンズの扱いも避けてください。気密性の高い手袋を着用したり、手を濡らしたりするのも禁止されています。

参考:アポハイドローション20%をお使いになる方へ|久光製薬株式会社

アポハイドローションの副作用

アポハイドローションを塗ったあと、塗布部に炎症やかゆみ、湿疹などの皮膚の異常が見られたり、口の乾きを感じたりした際はすぐに使用をやめましょう。お腹の張りや苦しさ、便秘が続いたり、尿が出にくくなったりした際も同様です。もしこのような症状が現れた際は、アポハイドローションを処方された医師または薬剤師に連絡してください。

また、アポハイドローションを使用する際は、下記の項目に該当する方は医師や薬剤師に伝える必要があります。

  • ・年齢が12歳未満
  • ・妊娠中または授乳中
  • ・手に傷や湿疹、炎症がある
  • ・緑内障に罹患している
  • ・前立腺肥大症など排尿に問題がある
  • ・不整脈がある
  • ・脳血管の障害、認知症や認知機能の障害がある
  • ・パーキンソン症状がある
  • ・腎機能や肝機能の低下が見られる
  • ・甲状腺機能亢進症、うっ血性心不全、潰瘍性大腸炎のいずれかに該当する
  • ・手掌以外の部位の多汗症治療を行っている

参考:アポハイドローション20%をお使いになる方へ|久光製薬株式会社

アポハイドローションのよくある質問

最後に、アポハイドローションに関するよくある質問に回答していきます。

アポハイドローションはどこで買える?

アポハイドローションは医療機関で処方されるものです。

ドラッグストアなど市販での取り扱いはなく、皮膚科や弊社の「オンライン多汗症外来」にて保険適用で処方されます。

アポハイドローションは足に使える?

アポハイドローションは手のひらの汗の出口、エクリン汗腺にあるムスカリン受容体に対する抗コリン作用により発汗を抑える薬剤です。足底、足汗には使用できません。

足底の多汗症用の治療薬は開発されていません。足元の多汗症には塩化アルミニウム溶液などが処方されます。

アポハイドローションと手袋は併用できる?

アポハイドローションを塗布したあと、ゴムやシリコン、ビニールなど気密性の高い手袋を着用するのは禁止されています。

手袋をつけるなら、綿など通気性の高い素材のものを選びましょう。

アポハイドローションの自宅処方ならおうち病院「オンライン多汗症外来」がおすすめ

アポハイドローションは皮膚科や形成外科でも処方していますが、おうち病院「オンライン多汗症外来」でも取り扱っています。オンライン多汗症外来なら、自宅にいながら手掌多汗症の診察やアポハイドローションの処方が可能です。もちろん、保険適用になります。

診療日時を指定したら自宅にいながらビデオ通話で診察が受けられるので、忙しくてなかなか病院に行けない方や、多汗症で通院することに抵抗がある方は、お気軽にご利用ください。