脇の下に汗を多くかいてしまい、「ニオイが気になる…」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
中には「これってもしかしたらワキガかも?」と疑問・不安を抱えている方もいることでしょう。実は、ワキガと脇の下の多汗症である腋窩多汗症はまったく違うものです。ただし、腋窩多汗症とワキガは併発することもあります。
今回は、腋窩多汗症やワキガを含む脇のニオイでお悩みの方のために、多汗症とワキガの違い、多汗症・ワキガのセルフチェックリスト、多汗症のニオイ対策、多汗症を改善するお薬について解説します。
目次
多汗症とワキガの違い
脇の多汗症である腋窩多汗症とワキガは似ていて混同する人も多いですが、実は両者はまったく違うものです。簡単に言うと、ワキガは脇の下から独特のニオイが出てしまう病気で、腋窩多汗症は汗の量が異常に多い病気であるという違いがあります。
以下で、腋窩多汗症とワキガそれぞれの原因から、さらに詳しく違いを解説します。
ワキガの原因「アポクリン汗腺」
ワキガの独特なニオイの原因は、アポクリン汗腺から出る汗です。アポクリン汗腺とは耳、脇、乳首、ヘソ、外陰部に多くある汗腺で、特に脇には多くのアポクリン汗腺が分布しています。アポクリン汗腺から分泌される汗には、脂肪・タンパク質が通常の汗よりも多く含まれています。
そのため、粘り気が多くベタついているのが特徴です。これらの成分が常在菌に分解され、ワキガの独特な鼻につくニオイへと変化します。
このようにワキガは、アポクリン汗腺から分泌される汗の成分が原因で独特なニオイを発する病気です。
この独特なニオイは脇の下以外でも発せられる場合があり、陰部周辺であれば「すそわきが」、乳首であれば「チチガ」と呼ばれます。いずれもアポクリン汗腺から分泌される汗が原因です。
多汗症の原因「エクリン汗腺」
腋窩多汗症を含む多汗症は、暑さや緊張がなくてもいつも汗を多くかいてしまう病気です。汗を分泌するエクリン汗腺の働きが過剰になっていることが原因で引き起こされます。
エクリン汗腺はアポクリン汗腺と異なり、全身に分布している汗腺です。特に額や胸、脇や手足に多く分布しています。また、分泌される汗はほとんどが水でできているのでサラサラしていて、ニオイはありません。ただし、汗を放置することで湿気を好む雑菌が繁殖し、生乾きのようなニオイがすることはあります。
多汗症とワキガの違いのまとめ
腋窩多汗症とワキガの違いをまとめると以下の通りになります。
・腋窩多汗症:
エクリン汗腺が過剰に働き、暑さや緊張がなくても汗を多くかいてしまう。汗の成分の多くは水分でサラサラしている。汗を放置することで生乾きのようなニオイを発することがある。エクリン汗腺は額や胸、脇や手足を中心に、全身に分布している。
・ワキガ:
アポクリン汗腺から分泌される汗に多く含まれる、脂肪・タンパク質が原因で独特のニオイがある。この汗はベタベタしていて、鼻につくニオイがする。アポクリン汗腺は耳、脇、乳首、ヘソ、外陰部に多くあり、特に脇には多く分布している。
多汗症とワキガを見分けるセルフチェックポイント
腋窩多汗症やワキガは自分では気が付きにくいものです。以下のセルフチェックリストで、ご自身が腋窩多汗症またはワキガの可能性があるかどうか確認してみましょう。
多汗症
自分が腋窩多汗症を含む多汗症であるかどうかは意外と気が付かないものです。「人より多く汗をかくかも…」くらいの気持ちでスルーしてしまう方も少なくありません。
日常生活において以下のようなことがあれば、多汗症の可能性があります。
- 脇が常に湿っている
- 暑くないのに汗をかいている
- 緊張するとより汗を多くかく
- 汗のせいで何度も着替える
- 汗が気になり、集中力がきれる
- 寝ているときは汗をかく自覚はない
- 家族や親戚に多汗症の人がいる
上記に1つでも該当する場合は、医師の診察を受けてみてください。
ワキガ
独特なニオイを発するワキガですが、口臭と同じように自分ではその異臭に気づきにくいものです。もしかしたらワキガかも…と不安がある方は、以下のセルフチェックで確認してみましょう。
- 湿り気のある耳垢が出る
- 脇毛や脇の下の皮膚が粉を吹いている
- 服の脇の下の部分が黄ばんでいる
- 肉や乳製品などをよく食べる
- 家族や親戚にワキガの人がいる
- ストレスを実感している
- 自分でも臭いと思う
多汗症とワキガは併発することも
腋窩多汗症による汗にはワキガによる汗と異なり、嫌なニオイを発する成分が含まれていません。しかし、腋窩多汗症の人はワキガを併発する可能性があります。
多汗症のみの人でもワキガ臭が出る理由
前述の通り、腋窩多汗症とワキガはその原因からまったく異なる症状です。しかし、ワキガではないのに多汗症の影響で独特な鼻につくニオイが出てしまうケースがあります。
腋窩多汗症でエクリン汗腺から大量に分泌された汗が、アポクリン汗腺から分泌される汗と混ざって、脂肪・タンパク質などの成分が皮膚の上で広がります。そしてエクリン汗腺から分泌される汗が蒸発するタイミングで、独特なワキガ臭が拡散してしまいます。
人はだれでもエクリン汗腺・アポクリン汗腺を持っていて、どちらからも汗が分泌されます。本来は、多汗症であればエクリン汗腺、ワキガであればアポクリン汗腺が過剰に働くことで症状が出ます。しかし、腋窩多汗症の人は、アポクリン汗腺からの汗の分泌が少量で本来はワキガ体質でなくても、ワキガ臭が出てしまう可能性があるわけです。
ニオイ対策のため脇の多汗症を抑えよう
腋窩多汗症によって分泌される汗そのものは強いニオイを発することはありません。しかし前述の通り、アポクリン汗腺から分泌される汗と混じり合うことで、鼻につく独特なワキガ臭を拡散してしまう可能性があります。また、汗で脇の下が湿った状態が続いてしまい、細菌が繁殖することで汗臭くなることもあるでしょう。
このように、腋窩多汗症はワキガや汗臭さといったニオイの問題を引き起こす可能性があります。脇のニオイを軽減するためには、汗の分泌や雑菌の繁殖を抑えることがとても大切です。
脇の多汗症を抑える対策
腋窩多汗症は汗を多くかくことから、脇の下が汗臭くなることがあります。また、前述の通りアポクリン汗腺から分泌される汗と混ざって、ワキガ臭が強くなることもあります。
以下では、このような脇の下のニオイを抑えたり、腋窩多汗症そのものへの対策について解説します。
脇汗パッドを使う
汗脇パッドは腋窩多汗症でお悩みの方に有効なグッズです。
エクリン汗腺から分泌される汗はサラサラしていてニオイはほとんどありません。しかし、汗をかいたまま放置してしまうと細菌が増殖して汗臭いニオイを発する可能性があります。
脇汗パッドを取り付けて汗をかいたら交換するようにすれば、汗臭いニオイを緩和可能です。脇汗パッドの中には消臭効果を持つ商品もありますので、脇汗のニオイでお悩みの方には有効なグッズといえるでしょう。また、ひどい脇汗によって衣服に汗染みができることも抑えられます。
脇汗パッドはこまめな交換が必須です。付け続けていると脇の下が蒸れてしまい、雑菌が繁殖して強い汗臭さを発しやすくなります。脇汗パッドを使用する場合は、こまめに交換するように心がけましょう。
脇汗パッドはこまめな交換をすればニオイ対策に有効ですが、腋窩多汗症そのものを改善するものではないことを覚えておきましょう。
制汗スプレーを使う
腋窩多汗症で多くの汗が出て困る方には、制汗スプレーもおすすめです。
制汗スプレーはさまざまな種類があり、中には香りがついているものもあります。自分のお気に入りの香りのものを使用すれば、気分も快適になることでしょう。しかし、香りによっては汗やワキガのニオイと混ざってしまい、より不快なニオイになることもあります。
そのため制汗スプレーは慎重に選びましょう。また、身体に合わない成分の制汗スプレーを使い続けると、肌がかぶれてしまうこともあるため注意が必要です。
おすすめの制汗スプレーは、殺菌効果のある成分を配合したものです。ニオイは雑菌により発せられますので、適度に殺菌できれば脇の下のニオイを軽減できます。
自分に合った制汗スプレーを活用すれば、ニオイを抑えられます。ですが、腋窩多汗症そのものを改善するわけではなく、あくまでも一時的なケアアイテムとして考えましょう。
ムダ毛処理をする
汗による脇の下のニオイを抑えるならムダ毛処理も効果的です。
汗やワキガのニオイは、雑菌が繁殖すればするほどより強くなります。脇のムダ毛が多いと雑菌が毛に多く潜みやすく、脇の下が蒸れやすくなって嫌なニオイを発しやすくなります。ムダ毛処理をしておけば、脇の下が蒸れるのを防げますのでニオイも抑えやすくなるでしょう。
ただし、ムダ毛処理をする場合は肌荒れに気をつけましょう。たとえば、カミソリでムダ毛処理をする際にあまり強く刃をあてすぎると、肌が傷ついて肌荒れしやすくなります。炎症を起こすとさらに強いニオイを発するようになるため注意が必要です。
ムダ毛処理も、腋窩多汗症の根本改善ではありませんが、ニオイケアには有効ですのでお試しください。
ストレスコントロールをする
ストレスコントロールも脇の下の汗対策として有効です。
人は気温が高いときや緊張したときにより多く汗をかきます。腋窩多汗症の人は常に脇の下が湿っていますが、やはり緊張したりストレスを強く感じたりするタイミングに特に汗を多くかきます。汗をなるべく抑えるためには、なるべく緊張しない、ストレスを適度に発散することが大切です。
とはいえ、まったく緊張しないということも難しいことでしょう。たとえば、会議で企画を発表するなどプレッシャーを強く感じそうなタイミングが事前にわかっていれば、脇汗パッドや制汗スプレーをしておくなどの事前準備をおすすめします。
腋窩多汗症のお薬を使用する
腋窩多汗症による症状を抑えるならば、お薬の使用が最も有効です。
腋窩多汗症はエクリン汗腺の働きが過剰になり、暑さや緊張がないときでも汗を多くかいてしまう病気です。つまり、エクリン汗腺の働きを抑えられれば、大量の汗をかいてしまう症状を軽減できます。
腋窩多汗症のお薬にはさまざまなものがあり、中には保険診療のお薬もあります。お薬を使用すればエクリン汗腺の働きが抑えられ、汗を過剰にかくことがなくなって脇の下のニオイも抑えやすくなります。腋窩多汗症による汗や汗のニオイでお困りなら、お薬を使って根本から改善することをおすすめします。
外出先でも気軽に使える多汗症薬「ラピフォートワイプ」
腋窩多汗症の症状を抑えるお薬にはさまざまなものがありますが、ラピフォートワイプは保険診療で携帯性も高く使いやすいお薬です。
ラピフォートワイプはワイプ型(シート状のもの)の1回使い切りタイプのお薬で、簡単かつ衛生的に使用できます。グリコピロニウムトシル酸塩水和物という有効成分により、エクリン汗腺の発汗を誘発するアセチルコリンの働きを阻害することで発汗を抑制します。
また、コンパクトなので旅行の際にも気軽に持っていけます。
特徴
ラピフォートワイプの特徴は以下の通りです。
- 1回使い捨てのワイプ型の製剤で、衛生的に使用できる
- 薬液は塗布後20~30秒で乾燥することがほとんど
- 1日1回の塗布で脇の下の汗を抑えられる
- 携帯性が高く旅行などでも気軽に持っていける
使用方法
ラピフォートワイプの使用の流れは以下の通りです。
1.脇の下をタオルなどで拭く
2.使用直前に開封する
3.ワイプを広げて両脇をひと拭きする
4.他の人が触れないように注意して捨てる
5.使用後、すぐに手を洗ってお薬を洗い流す
このように、ラピフォートワイプは短時間で簡単かつ衛生的に使用できます。
注意点と副作用
ラピフォートワイプは簡単・衛生的に使用でき、腋窩多汗症による過剰な発汗を抑えられます。ただし、使用の際には以下の点に注意しましょう。
- 開封時に薬液が飛散しないように目から離す
- 薬剤塗布時にゴシゴシこすらない(ひと拭きのみ)
- 傷・湿疹・炎症等がある部位への使用を避ける
- 脇の下以外の部位への使用は厳禁
また、ラピフォートワイプには以下のような副作用が起きる可能性があります。
- ぼやける、かすむ、乾く、いつもより眩しく感じるなどの目の症状
- 尿が出にくい、頻尿になるなど
- 炎症や湿疹が出る
- 口が渇く
万が一このような副作用が出た場合は、病院を受診して医師に相談しましょう。
ラピフォートワイプについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
脇の多汗症でお困りなら、おうち病院「オンライン多汗症外来」へ
腋窩多汗症はエクリン汗腺が過剰に働いて、脇の下に多くの汗をかいてしまう病気です。アポクリン汗腺から分泌される汗が原因であるワキガとは異なります。
ただし、腋窩多汗症により汗が多く分泌され、ワキガのニオイが拡散する可能性があり、お困りの方は多いのではないでしょうか。また、腋窩多汗症だと緊張や気温の上昇がなくても多くの汗をかいてしまうため、汗染みや汗臭さなどで恥ずかしい思いをするケースもあります。「脇の下の汗を抑えたい…」という方は、脇汗対策やお薬による治療がおすすめです。
しかし、脇汗対策は一時的なものですし、お薬も病院に行かないと貰えないため困っている方は多いのではないでしょうか。
そのような方におすすめなのが、おうち病院「オンライン多汗症外来」です。スマホやPCから、病院に行かなくてもオンラインで診療を受けられます。病院が開いていない時間でも診療を受けられるため、仕事が忙しい方でも気軽に利用可能です。
診療後、処方箋はお近くのドラッグストアに送られますので、仕事帰りや買い物ついでにいつでもお薬を受け取れます。もちろん、簡単に使えて脇の下の汗を抑えられるラピフォートワイプも処方されます。
脇の多汗症である腋窩多汗症でお困りでしたら、ぜひおうち病院「オンライン多汗症外来」をご活用ください。