多汗症の市販薬とは?種類とそれぞれの効果や注意点について解説

多汗症は医療機関で治療を受けるべきものですが、忙しくて通うことが難しい、診断は受けているので市販薬で対処したいという方もいます。 多汗症に効果が期待できる市販薬について理解し、適切に使用しましょう。 本記事では、多汗症の市販薬の種類とそれぞれの効果、注意点などについて詳しく解説します。

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多汗症は医療機関で治療を受けるべきものですが、忙しくて通うことが難しい、診断は受けているので市販薬で対処したいという方もいます。

多汗症に効果が期待できる市販薬について理解し、適切に使用しましょう。

本記事では、多汗症の市販薬の種類とそれぞれの効果、注意点などについて詳しく解説します。

多汗症とは

多汗症は、通常よりも過剰に汗が分泌される状態のことです。症状の強さによっては、日常生活に支障をきたしたり、強いコンプレックスになったりする可能性があります。

全身に多量の汗をかく「全身性多汗症」と、手のひらや足の裏など局所的に汗が多量に分泌される「局所性多汗症」に分類されます。

「全身性多汗症」の主な原因は、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの疾患であり、全身の代謝や自律神経の調整に問題が起きることで発汗が過剰になります。一方、「局所性多汗症」の原因は精神的な緊張やストレス、末梢神経の損傷などです。

多汗症治療に使用する薬・成分

医療機関で行われている多汗症治療では、市販薬と同じ成分の薬やローションなどを使用することがあります。多汗症治療に使用する薬と成分について詳しく見ていきましょう。

塩化アルミニウム液

塩化アルミニウム液は、汗腺を塞ぐことで汗の分泌を抑え、多汗症の症状を軽減する成分です。局所的な多汗症に対して有効な方法とされています。

ワキの場合、薬液を直接塗るだけで効果が期待できます。手のひらや足裏の場合は、薬液を塗るだけではなく、被覆材で覆った方がよいとされています。薬液を塗る前に皮膚を清潔にし、タオルやティッシュなどで水分を拭き取りましょう。

臭化プロパンテリン

臭化プロパンテリンは、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の働きを抑える「抗コリン作用」を持つ成分です。多汗症は、アセチルコリンの働きが亢進することで現れるため、臭化プロパンテリンによって症状の軽減が期待できます。

対象は、全身のさまざまな部位における多汗症ですが、他の治療法の補助として利用することが一般的です。効果は永久的ではないため、継続的に服用する必要があります。

成人の場合、1回15mgの臭化プロパンテリンの錠剤を1日3~4回服用します。年齢や症状に応じて増減させる必要がありますが、小児(15歳未満)や妊娠中の患者に対する安全性は確認されていません。

治療の継続期間に決まりはなく、症状の改善が見られるか、数ヶ月経っても効果が不十分な場合は中止を検討します。

オキシブチニン

オキシブチニンは、汗を分泌するアポクリン腺とエクリン腺のうち、エクリン腺に存在するムスカリン受容体への抗コリン作用によって発汗を抑制する成分です。効果が現れるまでにかかる期間には個人差があるものの、2週間程度で現れることが多いとされています。

使用するのは就寝前の1日1回で、両手のひらに対してポンプのプッシュ5回分が目安です。薬を塗った後に手を洗うと効果が低下するため、起床まで手を洗わないようにしましょう。

使用量や使用のタイミングは医師の指導に基づいて調整する必要があります。

コハク酸ソリフェナシン

コハク酸ソリフェナシンは、アセチルコリンがエクリン汗腺の受容体に結合するのを阻害することで発汗量を減らす抗コリン作用を持つ成分です。コハク酸ソリフェナシンを含む薬は2020年に保険適用になりました。

塗布した部分にのみ効果が現れるため、全身性の副作用が現れるリスクが低いことが特徴です。その効果と使いやすさから多くのケースで用いられています。

漢方薬

多汗症の治療には漢方薬も活用されており、個々の症状に基づいて処方される薬が異なります。広く使われているのは「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」です。多汗症の改善に効果があり、OTC(一般用医薬品)としても販売されています。

胃腸の働きを高め、「気」を補うことで余分な水分の排出を促します。さらに、 消化吸収を助けることで全身の機能を高める作用もあります。

漢方において、多汗症は体の水分バランスが乱れることが原因とされているため、このような水分のバランスを整える漢方薬を使用します。

別の漢方薬としては、「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」が挙げられます。これはのどの渇きやほてりを鎮め、湿疹・皮膚炎、かゆみに効果がある漢方薬です。他にも、個人の体質や症状に応じて「竜胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「大承気湯(だいじょうきとう)」が使用されることがあります。

多汗症の市販薬と処方薬の違い

多汗症の治療薬には、市販薬と処方薬があります。市販薬には制汗剤やデオドラント剤、漢方薬などがあり、汗の量や臭いを抑える効果が期待できます。処方薬には、これに抗コリン薬が加わります。

市販薬にも抗コリン薬はあるのですが、適応症として多汗症の記載がないため使用しないのが無難です。

市販薬の魅力は、手軽に入手できることでしょう。また、処方薬と比べて副作用が少なく、使用するリスクが低いことも挙げられます。

多汗症に関しては、処方薬と市販薬のいずれも完治させることはできません。効果の持続期間は使用期間中とその後数日程度のため、継続的に効果を得たい場合は使用し続ける必要があります。

処方薬は医療機関で医師が処方するもののため、多汗症の診断を受けなければなりません。一見、面倒に思えるかもしれませんが、多汗症をきっかけに糖尿病や甲状腺機能亢進症などの病気が見つかる可能性もあります。

これらの病気は早期発見・早期治療によって影響を抑えることができるため、多汗症に悩む場合は市販薬で対処しようとせず、まずは医師に相談することが大切です。

また、処方薬と市販薬のどちらを使うにしても、症状や体質、副作用などさまざまなことを踏まえて治療計画を立てられるのは医師だけです。医療知識や経験がない場合、自身にとって最適な治療計画を立てることは難しいでしょう。

多汗症の市販薬の種類

多汗症の市販薬は、塩化アルミニウム液と漢方薬に分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

塩化アルミニウム液

多汗症に対する有効な外用成分として注目されているのが、塩化アルミニウムです。この成分は、汗腺を塞ぐことで多汗症の症状を軽減する効果が期待できます。

ドラッグストアやオンライン通販で手軽に入手できるため、手軽に始められるでしょう。

効果には個人差があるため、症状の変化をよく観察しながら適宜使用することが重要です。また、使用した箇所に皮疹やかゆみが現れた場合は、アレルギー反応の可能性が考えられます。使用をただちに中止し、皮疹が消失しない場合は速やかに皮膚科を受診しましょう。

漢方薬

漢方薬は、漢方医による処方だけではなく、市販もされています。ただし、漢方薬は体質や症状に応じて配合を変更するため、自分で選ぶとなれば漢方薬のメリットを十分に活かすことができません。また、誤った選択によって体のバランスが崩れてしまい、多汗症が悪化したり体調が悪くなったりする可能性もあります。

西洋医学の薬よりも効果がマイルドとされているものの、誤った選択は逆効果となるため、症状の変化を注意深く観察しましょう。

多汗症の市販薬

多汗症の市販薬は、名称は違えど主成分が共通しているものもあります。多汗症に効果が期待できる市販薬について詳しく見ていきましょう。

オドレミン

オドレミンは、わきがや多汗症など汗にまつわる悩みを抑える制汗剤です。入浴後、汗のかきやすい部分に適量を指先で塗布します。使い方がシンプルなため、長く続けやすいでしょう。有効成分の塩化アルミニウムが汗腺を塞ぐことで発汗を抑え、制汗作用を発揮します。

オドジェルロール

オドジェルロールは、指先を汚さずに簡単に塗れるロールオンタイプの医薬部外品の制汗剤です。持ち運びがしやすい軽量容器のため、外出先や旅行先に携帯しやすいでしょう。また、未開封の場合は最長3年間使用できる点もメリットです。

医薬部外品に分類されており、その安全性と信頼性が保証されています。日常的な制汗ケアに最適な制汗剤と言えるでしょう。

有効成分は塩化アルミニウムです。汗腺を塞ぐことで制汗作用を発揮します。多汗症の症状が強いときにだけ使用することが推奨されており、5日使用した後は2日の休止期間を設ける必要があります。

パースピレックス・コンフォート ワキ用

パースピレックス・コンフォート ワキ用は、汗腺を塞ぐことで制汗作用を発揮する製品です。塩化アルミニウムが主成分で、一般的な制汗剤よりも高い効果が期待できるとされています。

効果の持続時間は5日間で、毎日塗る必要はありません。ただし、初めて使用する場合は最初の1週間は毎日入浴後に塗布し、その後は週1回の頻度で塗布します。

また、敏感肌でも使用できるように低刺激タイプとなっているため、汗で肌トラブルが起こりやすい人でも使える可能性があります。なお、無香料のため、制汗剤にありがちな香料による不快感がありません。

コッコアポL

コッコアポLは「防已黄耆湯」という漢方薬を主成分とする市販薬です。体力中等度以下で、多汗症や肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみなどに効果が期待できます。1日3回、食前または食間に4錠を水か白湯で服用します。

体の水分のバランスを整えることで発汗量を減らす効果が期待できます。ただし、漢方薬には向き・不向きがあるため、西洋医学の薬のように高い確率で効果が現れるわけではありません。効果がない場合は使用を中止して医師に相談しましょう。

ビスラット アクリアEX

ビスラット アクリアEXは、体力中等度以下で疲れやすく、汗をかきやすい傾向がある人に適した漢方薬です。コッコアポLと同じく防已黄耆湯を主成分としており、体の水分のバランスを整えることで多汗症の症状を抑えます。

防已黄耆湯は、ボウイとオウギ、ビャクジュツ、タイソウ、カンゾウ、ショウキョウの6つの生薬から抽出されます。

ロコフィットGL

ロコフィットGLは、防已黄耆湯を主成分とした漢方薬で、体力中等度以下で疲れやすく、汗をかきやすい傾向がある人に適しています。ビスラット アクリアEXと比べて1錠に含まれる成分量が少ないため、まずはこちらを試してみるとよいでしょう。

効き目がない理由が成分量の不足の場合、ビスラット アクリアEXに切り替えることで効果を得られる可能性があります。

ツムラ漢方 防己黄耆湯

ツムラ漢方の防己黄耆湯は、体力中等度以下で疲れやすく、多汗症やむくみなどの症状が見られる人に効果が期待できる漢方薬です。2包に3,750mgの防已黄耆湯が含まれています。粉薬が苦手な方は、ビスラット アクリアEXかロコフィットGLを試してみてください。

補中益気湯エキス錠クラシエ

補中益気湯エキス錠クラシエは、元気不足や虚弱体質に悩む方の調子を整える漢方薬です。

ニンジン、ビャクジュツ、タイソウ、サイコ、オウギ、トウキ、チンピ、ショウマ、カンゾウ、ショウキョウが含まれており、これらの成分の効果が合わさることによって多汗症の症状の軽減が期待できます。1日3回食前または食間に4錠を水または白湯で服用します。

多汗症の市販薬の注意点

多汗症の市販薬は万能ではなく、使用したからといって多汗症の悩みを解消できるとは限りません。次の注意点を理解したうえで使用を検討しましょう。

体質に合うとは限らない

これは処方薬にも言えることですが、多汗症の市販薬が体質に合うとは限りません。生活習慣や体の状態によって、AよりもB、BよりもCの薬の方が高い効果を得られる場合があります。また、体質に合わない場合に過敏反応が起きるケースも少なくありません。

例えば、制汗剤やデオドラント剤に含まれる成分が肌にかゆみや湿疹を引き起こす場合があります。過去にアレルギー反応が起きたことがある成分が含まれていないか確認し、体質に合うと考えられるものを選ぶことが重要です。

また、外用薬を初めて使用する際にはパッチテストを行い、異常がないことを確認するとよいでしょう。漢方薬についても体質や症状に合わせて処方されるもののため、自分で選ぶとなれば体質に合わないものを選んでしまうリスクがあります。

薬品に対して敏感な方は、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

単体での使用は十分な効果を得られない場合がある

多汗症の主な市販薬は制汗剤やデオドラント剤などです。いずれも多汗症を根本から解消するものではないため、継続的に使用する必要があります。

多汗症の治療には、複合的なアプローチが求められます。例えば、制汗剤やデオドラント剤の使用に加えて、生活習慣の見直しやストレス管理などが必要です。

また、制汗剤で発汗量を抑えつつ、漢方薬で体質を改善するのもよいでしょう。

市販薬を使うとしても、効果的な治療法を見つけるために医師に相談することをおすすめします。症状や原因などを総合的に評価し、適切な治療法を提案してくれます。

まずは診断を受けることが重要

多汗症の原因はさまざまで、市販薬によって症状が軽減するとは限りません。

そのため、汗の量が多くて生活に支障をきたしていたり、手汗がコンプレックスになっていたりする場合は、医師に相談することが先決です。多汗症の症状や原因を確認したうえで、適切な治療を受けましょう。

多汗症の薬以外の治療法

多汗症の治療法は薬物療法だけではありません。他の治療法について詳しく見ていきましょう。

イオントフォレーシス

イオントフォレーシスは、手のひらや足の裏を水に浸し、直流電流を流す治療法です。局所的な多汗症に対する効果的なアプローチとして医療機関で用いられています。

患部(手のひらや足の裏)を水に浸して、電極上にガーゼやスポンジを置き、水に手や足が沈まない程度に位置を調整します。そして、10~20mAの通電を20~30分続け、これを8~12回行います。

通電回数が進むにつれて汗の量が減少します。特に手のひらや足の裏の多汗症に対して有効です。効果の持続期間はそれほど長くはなく、週1~2回行うことが推奨されています。

イオントフォレーシスは保険診療で、病院やクリニックで受けることができます。しかし、通院が難しい場合には、ドイツ製の家庭用イオントフォレーシス機器(サーリオ)がインターネットで購入可能です。ただし、適切な方法で行わなければ効果がないため、なるべく通院することをおすすめします。

ボトックス注射

ボトックス注射は、ボツリヌス菌が生成するタンパク質から作られるボツリヌストキシンを注射することで多汗症の症状を抑える治療法です。交感神経から送られる発汗のための信号伝達を一時的に遮断することで、発汗量を抑えます。

治療後、2~3日で効果が現れ、その後は4~9ヶ月程度持続します。ただし、効果の現れ方や持続期間には個人差があります。

外科手術

多汗症の根本的な治療としては、外科手術があります。全身麻酔を行ったうえで内視鏡を使用して、胸部の交感神経節を切除または焼却する方法です。中でも手のひらの多汗症に対する有効性が非常に高いとされています。手術時間は片側で約20分と短く、時間的な負担もほとんどありません。

まれに、手術後に代償性発汗が発生することがあります。これは手術により手のひら以外の部位から異常に多くの汗が分泌される現象です。胸、背中、お尻などに現れることが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。

代償性発汗の発生を軽減する方法として、胸髄の交感神経の切除範囲を制限する手法が取られています。これにより、手術の効果は維持されつつ、代償性発汗の程度を抑えることが可能となりました。

外科手術は有効である一方で、代償性発汗のリスクがあることを理解しておく必要があります。手術の前には医師と十分に話し合ったうえで、受けるべきかどうか慎重に判断しましょう。

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