ひどい手汗を抑えるお薬ってある?手掌多汗症の保険・自費の治療薬とそれ以外の治療法を解説

原発性手掌多汗症は、原因がわからず過剰に手汗が出てしまう病気です。手掌多汗症のせいで手汗がひどく、「恋人と手をつなげない」「握手できない」「マウスがベトベトになる」とお悩みの方は少なくありません。 また、治療をしたいと思っていても「どんな治療法があるのかわからない」「保険で治療できるのだろうか」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、過剰な手汗の症状を抑える保険適用薬の有無、手掌多汗症の治療薬の種類、お薬以外の治療方法について解説します。

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原発性手掌多汗症は、原因がわからず過剰に手汗が出てしまう病気です。手掌多汗症のせいで手汗がひどく、「恋人と手をつなげない」「握手できない」「マウスがベトベトになる」とお悩みの方は少なくありません。

また、治療をしたいと思っていても「どんな治療法があるのかわからない」「保険で治療できるのだろうか」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、過剰な手汗の症状を抑える保険適用薬の有無、手掌多汗症の治療薬の種類、お薬以外の治療方法について解説します。

過剰に手汗が出てしまう原因

手のひらに過剰に汗をかいてしまう病気を手掌多汗症といいます。汗をかきやすい緊張状態や体温上昇のときだけでなく、リラックスしていて涼しい状態でもたくさん汗をかくことがあるのが手掌多汗症の症状です。

手掌多汗症に限らず、多汗症は原因のわかっている「続発性多汗症」と原因が明らかでない「原発性多汗症」に分けられます。続発性多汗症の場合は、何らかの全身疾患や神経障害、お薬の影響などが原因で多汗症の症状が出ます。

一方、原発性多汗症の場合は、はっきりした原因がわかりません。交感神経が何らかの理由により活発化してしまい、手からたくさんの汗が出るという症状が引き起こされます。

過剰な手汗(手掌多汗症)で保険適用のお薬はある?

手のひらに過剰に汗をかく手掌多汗症は、続発性であれば原因となる疾患を治療することで改善可能です。原発性の場合は原因がわからないため、お薬などを用いた対症療法を行います。

手のひらに汗をかく手掌多汗症の場合は、自費診療である塩化アルミニウム外用薬が一般的でした。しかし、2023年6月からアポハイドローションという抗コリンの塗り薬が保険適用されました。そのため、治療の選択肢の幅が広がり、患者にとってはより治療しやすい環境となっています。

また、お薬による治療以外にも、手術などさまざまな治療法があります。

過剰な手汗(手掌多汗症)の治療で使うお薬

手掌多汗症にはさまざまな治療法があり、お薬も複数あります。以下で保険適用のお薬から保険適用外のお薬まで解説していきます。

保険の治療薬「アポハイドローション」

アポハイドローションは、2023年6月に処方可能になった保険の手掌多汗症のお薬です。抗コリン薬に分類されるお薬で、就寝前に1日1回塗布することで手汗を抑えられるようになります。

特徴や効果

アポハイドローションには、オキシブチニン塩酸塩という有効成分が含まれています。この有効成分には、交感神経から放出されて発汗を促すアセチルコリンが、エクリン汗腺の受容体に結合するのを阻害する効果があります。エクリン腺に発汗を促す指令が届きにくくなるため、手のひらの汗が抑えられるわけです。

アポハイドローションを使用後、早ければ2週間、多くの場合は4週間ほどで汗の抑制効果を実感できるようになります。

使い方

1日1回、就寝前に使用します。お薬を塗る前には、手のひらの水分などをタオルなどでよく拭き取り清潔な状態にします。その後、手のひらに1回分(5プッシュ)を出して左右の手のひらに塗り広げます。

お薬を塗布した後は、手を洗わずにそのまま就寝して、翌朝起床してからお薬を洗い流します。石鹸を使って洗ってもいいですが、流水のみでもかまいません。

注意点

アポハイドローションを使用する場合は、以下の点に注意しましょう。

・可燃性の成分を含むため火気厳禁

・手のひら以外には使用しない

・塗った後は起床後まで手を洗わないようにする

・目や口に入った場合は速やかに洗い流す

・塗り忘れた場合は、1回飛ばして次の就寝時まで使用しない

・お薬を塗った後は気密性の高いゴム手袋などを着用しない

・前立腺肥大や不整脈、心疾患がある人は使用に注意する

・12歳未満の小児を対象とした臨床は行われていない

・妊婦または妊娠の可能性がある女性の使用は避ける

副作用

アポハイドローションは以下のような副作用が出る場合があります。

・炎症、湿疹、かゆみ、皮脂欠乏などの皮膚症状

・ドライアイ、かすみ目、眩しく感じるなどの目の症状

・口が乾く

・尿が出にくくなる、便秘になる

汗腺を塞いで汗を抑える「塩化アルミニウム外用薬」

塩化アルミニウム外用薬は、手掌多汗症治療で用いる保険適用外のお薬です。手の多汗症である手掌多汗症をはじめ、脇の腋窩多汗症などさまざまな部位で発症している原発性多汗症に使用できます。

特徴や効果

塩化アルミニウム外用薬は、「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」(日本皮膚学会)において、手掌多汗症の最初の治療の選択肢とされています。2023年6月からはアポハイドローションが保険適用の手掌多汗症となったため、そちらを最初の治療の選択肢とされることもあります。

塩化アルミニウムが汗を出す穴(エクリン汗腺)に作用して、穴を塞ぎます。汗が出る穴が物理的に塞がることで、手掌多汗症による過剰な発汗症状が抑えられるわけです。

効果を感じられるようになるのは、お薬の塗布開始から2~3週間程度です。

使い方

塩化アルミニウム外用薬は、通常1日1回就寝前に手のひらに塗布します。翌朝起床後に流水にて薬剤を落とします。効果がなかなか実感できず、かつ皮膚炎などの副作用が起きていないのであれば、就寝前とともに日中にも使用できます。

また、汗の過剰分泌がおさまったとしても使用を中止すると再発することがあります。そのため、手のかぶれなど皮膚症状がなければ1週間に2~3回程度継続使用するのが望ましいとされています。

注意点

塩化アルミニウム外用薬を使用する際には以下の点に注意しましょう。

・傷や皮膚の炎症などがある場合は使用しない

・皮膚症状(かぶれやヒリヒリする刺激感)がある場合は使用を止める

・顔や目に薬剤がつかないようにする

副作用

塩化アルミニウム外用薬には以下のような副作用があります。

・かゆみ・湿疹・炎症・ヒリヒリするなどの皮膚症状

皮膚症状が出た場合はお薬の使用を中止します。ステロイド外用薬を塗布して皮膚症状を抑えた後、皮膚の状態を確認しながら使用を再開していきましょう。

注射により汗を抑える「ボツリヌス毒素局注療法」

ボツリヌス菌が出す毒素を無毒化し、その成分を多汗症治療に応用した方法です。脇の腋窩多汗症の治療法として効果的な治療とされ、手のひらの手掌多汗症でもその効果を発揮します。ただし、腋窩多汗症の場合と異なり保険適用ではありません。

特徴や効果

ボツリヌス菌が出す毒素には神経を麻痺させる作用があります。ボツリヌス毒素局注療法は、毒素を無毒化してその作用のみを利用するものです。薬液を注入することで交感神経が麻痺し、発汗を促す信号が阻害されます。その結果、手のひらからの発汗が抑制される効果が得られます。

効果を実感するのは個人差がありますが、多くの場合は注射後2~3日後くらいからです。4~9ヶ月ほど経過すると徐々に過剰発汗の抑制効果が薄れてきます。手のひらの過剰発汗を再び抑えたい場合は、再注射が必要です。

使い方

ボツリヌス毒素製剤の注射を患部である手のひらに複数箇所打ちます。注射針が刺さる痛みがあるため、処置前に局所麻酔をしたり処置後にアイスパック等で冷却したりします。

注意点

ボツリヌス毒素局注療法では以下のような注意点があります。

・手の筋力が低下しやすい(一過性で自然に回復する)

・当日は激しい運動やマッサージはしないようにする

・当日は長湯や飲酒をしないようにする

・薬剤注入部を圧迫しないように気をつける

副作用

ボツリヌス毒素局注療法には以下のような副作用が出る場合があります。

・注入部位の発疹やかゆみなどの皮膚症状

・吐き気、腹痛などの消化器症状の発現

・息苦しさ、声のかすれ等

・ショック症状の発現

過剰な手汗(手掌多汗症)のお薬以外の治療法

手掌多汗症はお薬以外の治療法もあります。以下でお薬以外の治療法である、イオントフォレーシスと手術について解説します。

イオントフォレーシス

イオントフォレーシスとは、手を水中または濡れた布の上に置いて、そこに微弱な電流を流す治療法です。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」(日本皮膚学会)では、手掌多汗症における最初の治療法とされています。

水中に流れる微弱な電流によって発生した水素イオンには、汗の分泌する穴を小さくする作用があります。汗の出る穴が小さくなることで、物理的に過剰な発汗をしにくくなるわけです。

治療開始当初は連日行い、汗の量が減ってきたら数日ごとに繰り返して施術します。痛みもなく小学生でも行える治療法ですが、効果の持続は2週間ほどであるため継続する必要があります。

手術

外科手術によって交感神経を遮断して、手のひらの汗を抑える治療法です。これまでに解説した手掌多汗症の治療で改善が見られない場合に行われることがあります。

手術では、胸腔鏡下交感神経を遮断し、発汗を促す指令が出ないようにします。交感神経が遮断されるため手掌多汗症の症状を抑える高い効果がありますが、代償性発汗という他の部位の汗が増える副作用がほぼ必ず起きるのがデメリットです。

保険適用の手汗のお薬なら、おうち病院「オンライン多汗症外来」へ

手のひらの多汗症である手掌多汗症の方は、汗で紙が濡れる・破ける、マウスが手汗でベトベトになる、手をつなぐ・握手するのが恥ずかしいといったことで悩まれることが多いです。人によって症状の出方はさまざまですが、手汗がひどく滴り落ちるなど日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

このようなお悩みがあるため、「ひどい手汗を抑えたい」と思うものの、仕事が忙しいなどの理由でなかなか病院に行けない方も多いのではないでしょうか。

手掌多汗症でお悩みなら、おうち病院「オンライン多汗症外来」の利用がおすすめです。

スマホやPCを使って、ご自宅などから気軽にオンライン診療を受けられます。また、処方箋はお近くのドラッグストアに送られ、お仕事帰りやお買い物ついでにいつでも受け取れます。

おうち病院「オンライン多汗症外来」では保険適用のアポハイドローションも処方されますので、ぜひご活用ください。