多汗症の改善に漢方は使える?多汗症治療に効果的な3種の漢方薬

必要以上の汗をかいてしまう多汗症により、「脇の汗じみで困っている」「手のひらがいつもベトベト」など日常生活に支障をきたしてお悩みの方は多いのではないでしょうか。

多汗症の症状を抑えるためにはお薬の使用が有効ですが、「西洋薬は怖い」「漢方を試してみたい」という方もいるかもしれません。

そこで今回は、多汗症の症状や原因、多汗症に漢方薬は使えるのか、多汗症治療に効果が期待できる漢方薬と西洋薬について解説します。

多汗症の症状

多汗症とは、手のひら・脇の下・顔・足の裏・頭部などの部位で多くの汗が分泌される症状です。外気温の影響や体温の上昇、緊張といったことがなくても、汗をかいてしまうのが特徴です。多汗症は人によって症状の強さは異なります。

たとえば手のひらの多汗症である手掌多汗症では、手のひらがいつも湿っている程度の人もいれば、手のひらから滴るほどの汗が出るという人もいます。

以下で、多汗症の症状の特徴をまとめましたので参考にしてください。

・子どものころに発症する:

多汗症は子どものころに発症し、成人後も症状が続くことがほとんどです。そのため、大人になってから症状がおさまるような、一般的な小児疾患とは異なります。

・多汗・無汗を繰り返す:

多汗症は涼しいときや緊張していないときでも汗をかきやすいものの、常に大量の汗が出ているわけではありません。多くの場合は、気温の変化や運動による体温上昇、緊張することがきっかけで汗をより多くかくようになります。また、就寝中などに異常発汗することはほぼありません。

・左右対称に発汗する:

多汗症は左右同時に発汗するのが特徴です。たとえば、腋窩多汗症であれば、左右どちらの脇からも汗が多く出ます。また、手のひら・脇の下・顔・足の裏・頭部など複数部位で多汗になることも少なくありません。

多汗症は、少し動くだけでたくさんの汗が出る「汗っかき」とは区別されています。具体的には、汗っかきは運動や緊張などによって汗をより多くかいている状態です。一方、多汗症は、多く汗をかくことで「書類を書く際に紙が濡れる」「マウスがベタベタになる」など日常生活に支障が出るような汗の大量分泌がある状態です。

多汗症の原因

多汗症は大きく2つに分類できます。一つは原因がはっきりしている「続発性多汗症」、もう一つは原因が明らかになっていない「原発性多汗症」です。それぞれどのような多汗症なのか、以下で解説します。

続発性多汗症

続発性多汗症は二次性多汗症とも呼ばれます。感染症や神経性疾患、糖尿病などの持病など全身性の病気が原因となったり、外傷や悪性リンパ腫などの局所的な神経障害が原因となったりします。つまり、続発性多汗症は病気や障害といった明らかな根本原因があるというわけです。

また、解熱剤や向精神薬などのお薬の副作用によって、より多くの汗をかく場合も続発性多汗症とされます。

続発性多汗症の症状を改善するには、根本原因の治療が必要です。病院を受診して、根本原因を突き止めてその治療を行いましょう。

原発性多汗症

原発性多汗症は続発性多汗症と違い、多く汗をかく原因が明らかではない多汗症です。

エクリン汗腺が過剰に活性化することで汗をかくことはわかっていますが、なぜ汗腺が過剰に働いてしまうのかが明らかではないのです。脳になんらかの異常があって交感神経が優位になっているという見方もありますが、まだはっきりとはわかっていません。

また、多汗症の人は家族や親戚にも多汗症の人がいるケースが少なくないことから、遺伝的要因もあるかもしれないと考えられています。しかしまだ、どの遺伝子が関係するのかなど、詳しいことは明らかになっていません。

他にも、原発性多汗症は社会的活動範囲が広い・生産性があるような年代の発症率が高いとされています。そのため、ストレスも関係しているのではないかと考えられています。

いずれにせよ、原発性多汗症は続発性多汗症と異なり根本原因はわかっていません。そのため治療では、お薬の有効成分により汗腺の働きを抑えて異常な汗の分泌を抑える、対症療法が行われます。

多汗症は漢方でも治療できる?

多汗症の治療では西洋薬を使うのが一般的です。しかし「西洋薬でかぶれてしまった」などの理由で漢方の使用を検討する人もいることでしょう。果たして、多汗症は漢方薬でも治療できるのでしょうか。

「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版」(日本皮膚学会)には漢方薬に関する記載はありません。しかし、上記ガイドラインの2023年版には、漢方薬とバイオフィードバック療法の併用で、多汗症の症状が抑えられたという症例報告の記載があります。バイオフィードバック療法とは、体温など意識的に動かせない体内反応を、機器によってモニタリング等を行い、患者自身が意識してある程度コントロールできるようにする治療のことです。

このことから、漢方薬は原発性の多汗症の治療に効果が期待できると考えられます。ただし、続発性多汗症の場合は病院を受診して根本原因を特定し、その原因の病気を治療することが大切です。

多汗症の漢方薬と西洋薬の違いは?

多汗症の治療で用いられる漢方薬と西洋薬ではどのような違いがあるのか、気になる方もいることでしょう。

一般的に西洋薬とは、人工的に化学合成された物質で作られています。ほとんどは一つの成分で構成され、一つの疾患・一つの症状に強い薬理作用を持つのが特徴です。たとえば、皮膚のかぶれであれば、ステロイドの塗り薬を塗ることで炎症を抑えて皮膚の再生を促し、皮膚症状そのものを改善できます。

一方で漢方薬は天然の生薬で作られ、体質改善によって症状を出にくくするお薬です。一つの漢方薬は2種類以上の生薬で構成されることがほとんどで、その組み合わせによってさまざまな効果効能が期待できます。また、西洋薬と違ってじっくり効き、その人の体質に応じて調整して副作用を出にくくすることもできます。たとえば、風邪の際に飲む漢方薬には眠くなる副作用がないものも多く、身体の内側からじっくり効いて諸症状を抑えられます。

このような違いから、多汗症において西洋薬は直接的に汗を抑える効果があり、漢方薬は身体の内側から体質改善を行い、余分な汗をかきにくくして多汗症の症状を抑えます。また、汗のかきすぎによる脱水を防ぐような漢方薬もあります。

多汗症に効果的とされる主な漢方薬

漢方薬は多くの種類の中から、患者体質や抱えている症状に応じて選ぶことが大切です。以下では、多汗症の症状を抑えるのに効果的とされる、主な漢方薬を紹介します。

桂枝加竜骨牡蛎湯

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、不眠症状やストレスの緩和に向いている漢方薬です。

漢方では心身の疲労がある場合、気血のバランスが崩れて元気や水分が身体から漏れ出すと考えます。桂枝加竜骨牡蛎湯は気血のバランスを整えることで神経の高ぶりを落ち着かせて、多汗症によって多くの汗が流れ出るのを抑えます。

桂枝加竜骨牡蛎湯は夜泣きや夜尿症にも使われ、虚弱体質の方でも使用できる漢方薬です。

瀉火補腎丸

瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)は、疲労や身体のほてりを伴う倦怠感の改善の緩和に向いている漢方薬です。

瀉火は体内の熱症状をとり、補腎は腎の働きを補うものです。漢方における腎とは、腎臓だけではなく、ホルモンや自律神経、免疫なども含めます。そのため、腎とは内蔵全体の働きや身体の調子を整える役目をもつものと漢方では考えます。

疲労などによって身体の熱と水分バランスが崩れると、熱が体内にこもりやすくなります。そのこもった熱を排出するために身体は自然と汗をかくようになります。多汗症は女性ホルモンとの関係が深いと考えられ、瀉火補腎丸はその乱れたホルモンバランスを整えるのにも役立ちます。

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいかりゅうこつぼれいとう)は、仕事や人付き合いによるストレス、緊張などにより不眠症状がある方向けの漢方薬です。

漢方では、不眠は気の不足や気がめぐらないことが原因であると考えられています。気とは目に見えない循環要素であり、生命活動を支えるためのエネルギーのことです。気がうまくめぐらないと、身体に熱がこもってしまい最終的に脳を疲れさせるとされます。それは、大量の汗をかくという多汗症の症状にもつながるものです。

柴胡加竜骨牡蠣湯は気のめぐりを整えて心を落ち着かせ、身体にこもった熱を排出することで多汗症による汗の分泌を抑える効果が期待できます。

多汗症の治療には西洋薬の併用も

漢方薬は身体の内側からじっくりと体質改善することで多汗症の症状を抑えていきます。すぐに効果が出るわけではないので、長期的に使うことになります。できるだけ早く、効果的に過剰な発汗を抑えたいとお考えでしたら、西洋薬の使用がおすすめです。

外出先でも気軽に使える「ラピフォートワイプ」

ラピフォートワイプは脇の多汗症である腋窩多汗症用のお薬です。1回使い切りのワイプ型(シートタイプ)のお薬で、簡単で使いやすいのが特徴です。

1シートごとに袋に入っているので、旅行先にも持ち歩けます。グリコピロニウムトシル酸塩水和物という有効成分が、発汗を促すアセチルコリンの働きを妨げてエクリン腺からの汗の分泌を抑えます。

使い方は簡単で、ワイプ型の薬剤を脇の下にひと塗りするだけです。1日1回の使用で脇の下の汗をしっかり抑えられるため、腋窩多汗症で悩む人にとって利便性の高いお薬といえるでしょう。

ラピフォートワイプについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:ラピフォートワイプとは?効果や副作用を解説

過剰な手汗を抑える「アポハイドローション」

アポハイドローションは手のひらの多汗症である手掌多汗症のお薬で、2023年6月から保険適用になりました。手のひらに塗布することで、アセチルコリンの働きを妨げて過剰な発汗を抑えます。手のひらサイズで持ち運びやすく、外出先にも気軽に持っていけます。

就寝前に手のひらに1回分(5プッシュ程度)を塗布し、左右の手のひらへ均等に塗り拡げます。その後、手を洗わずに就寝し、起床したら流水で手を洗い流します。1日1回就寝前の塗布で手のひらの過剰な発汗を抑えられるため、手掌多汗症の人にとって有用なお薬といえます。

アポハイドローションについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:アポハイドローションは保険適用の手汗治療薬!効果・薬価・副作用を解説

多汗症の症状でお悩みなら、おうち病院「オンライン多汗症外来」へ

多汗症のうち、原発性多汗症は原因がわかっていないため、根本から改善することは困難です。日常生活に支障が出るほどに汗をかいてしまうならば、お薬による治療を行いましょう。

多汗症には、西洋薬はもちろん漢方も効果が期待できます。身体の内側からじっくりと体質改善し、余分な汗が出ないように整えていきます。ただし即効性はないため、なるべく早く改善したい場合は西洋薬がおすすめです。

しかし、仕事が忙しくて病院に行く時間がとれず、お薬をなかなか手にできない方もいることでしょう。そんな方はおうち病院「オンライン多汗症外来」をご利用ください。

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