更年期障害の漢方|加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸の使い分けと保険適用

「ホルモン剤には抵抗があるが、この不調はなんとかしたい」「体質から整えたい」——更年期の治療を考えるとき、漢方薬を選択肢に入れる方は少なくありません。漢方薬は保険適用で処方でき、ほてり・イライラ・冷え・疲労感といった複数の症状に同時に対応できる点が特徴です。本ページでは代表的な4種類の漢方薬の使い分けを比較表で整理し、ホルモン補充療法との違い、効果が出るまでの期間、注意すべき副作用までを解説します。

この記事で分かること

  • 更年期障害に用いられる漢方薬は、医療用漢方エキス製剤として保険適用で処方できる
  • 加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・温経湯の4種類は、いずれも効能・効果に「更年期障害」が含まれる
  • 選び分けの軸は「体力」「冷えの有無」「主症状が精神面か身体面か」の3つ
  • 漢方薬とホルモン補充療法(HRT)は排他的ではなく、体質や希望によって選べる
  • 効果の判断には1〜3か月の継続が目安。即効性を期待する薬ではない
  • 「天然だから安全」は誤りで、偽アルドステロン症・肝機能障害などの重大な副作用がある
  • おうち病院ではオンラインの保険診療で漢方薬を処方でき、費用は約1,900〜2,400円が目安

更年期障害に漢方が選ばれる3つの理由

更年期の治療で漢方薬が選択肢に挙がるのには、はっきりした理由があります。ホルモン補充療法との性質の違いを理解しておくと、医師との相談がしやすくなります。

理由1:保険適用で処方できる

医療機関で処方される医療用漢方エキス製剤(ツムラ製品など)は、健康保険の適用を受けられます。更年期障害の診断があれば自己負担3割で処方され、初診・再診費用も保険診療の範囲内です。ドラッグストアで購入する一般用漢方製剤は保険適用外であり、生薬の配合量も医療用とは異なります。

理由2:ホルモンを直接補充しない

ホルモン補充療法(HRT)は減少したエストロゲンを外から補う治療です。一方、漢方薬はホルモンそのものを補充せず、体質の偏りを整えることで症状の緩和を目指します。乳がんや血栓症の既往などでHRTを使用できない方、ホルモン剤に抵抗がある方にとって、検討しやすい選択肢になります。

理由3:複数の症状にまとめて対応できる

更年期の不調は、ほてり・イライラ・冷え・疲労感・肩こり・不眠といった複数の症状が同時に現れることが特徴です。漢方薬は「この症状にはこの薬」という対応ではなく、体質全体に働きかけるため、複数の症状に同時にアプローチできます。

【比較表】更年期障害に用いられる代表的な漢方薬

下表は、効能・効果に「更年期障害」が明記されている医療用漢方エキス製剤の代表例です。同じ更年期障害でも、体力・冷えの有無・主症状によって適した薬が変わります。

漢方薬名適する体質・状態主な対象症状効能・効果(医療用の記載)
加味逍遙散(かみしょうようさん)体質虚弱、肩がこり疲れやすく、便秘傾向イライラ、不安、のぼせ、精神神経症状冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)筋肉が軟弱で疲労しやすく、腰脚が冷えやすい貧血、倦怠感、頭重、頭痛、めまい、肩こり、むくみ貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難ほか
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)体格はしっかりし赤ら顔が多く、腹部は充実のぼせ、頭痛、めまい、肩こり、冷えのぼせ子宮・子宮付属器の炎症、月経不順、月経困難、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え症ほか
温経湯(うんけいとう)手足がほてり、唇がかわくほてり、不眠、足腰の冷え、皮膚の乾燥月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ

このうち当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸の3剤は「婦人科三大処方」と呼ばれ、婦人科領域で広く用いられています。

※上表は各製剤の効能・効果に基づく一般的な適応です。実際の処方は、医師が体質・体力・症状・服用中の薬などを総合的に判断して行います。自己判断での服用は避けてください。

参考:ツムラ加味逍遙散エキス顆粒(医療用)の添付文書情報ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)ツムラ温経湯エキス顆粒(医療用)

症状別・どの漢方が候補になるか

「自分の症状にはどれが近いか」を把握しておくと、診察での相談がスムーズになります。あくまで候補を知るための目安としてご覧ください。

いちばんつらい症状候補になる漢方薬選ぶ際の目安
イライラ・不安・気分の落ち込み加味逍遙散疲れやすく便秘傾向がある方に用いられることが多い
ほてり・のぼせが強い桂枝茯苓丸、温経湯体力があり赤ら顔なら桂枝茯苓丸、手足のほてりと乾燥が目立つなら温経湯
冷え・むくみ・疲労感当帰芍薬散貧血傾向があり、腰や脚が冷えやすい方に
頭痛・めまい・肩こり当帰芍薬散、桂枝茯苓丸冷えを伴うなら当帰芍薬散、のぼせを伴うなら桂枝茯苓丸
不眠・寝つきの悪さ温経湯、加味逍遙散ほてりで眠れないタイプかどうかで分かれる

更年期の不眠については 更年期の不眠、ほてり・発汗については 更年期のホットフラッシュ でも詳しく解説しています。

漢方薬とホルモン補充療法(HRT)はどう違いますか

どちらか一方が優れているというものではなく、体質・希望・併存する病気によって選びます。下表で違いを整理しました。

比較軸漢方薬ホルモン補充療法(HRT)
しくみ体質の偏りを整え、症状の緩和を目指す減少したエストロゲンを補充する
保険適用適用あり適用あり(更年期障害の診断が必要)
剤形顆粒・錠剤(内服)飲み薬・貼り薬・塗り薬
効果の出方1〜3か月かけて緩やかに数週間〜1〜2か月で血管運動症状に変化が出やすい
ほてり・発汗○ 体質に合えば緩和が期待できる◎ 中心的な適応
精神症状○ 加味逍遙散などが用いられる○ 血管運動症状の改善に伴って軽くなることがある
冷え・むくみ・疲労感◎ 体質改善として対応しやすい△ 直接的な対応ではない
使用できないケース体質に合わない場合、甘草を含む薬の重複など乳がん・子宮体がんの既往、血栓症、原因不明の不正出血など
必要な検査・管理問診が中心婦人科での検査・定期的な管理が前提
主な受診先婦人科・内科婦人科

選び方の目安:

  • ほてり・発汗が強く、他に大きな病気がない → HRTを検討
  • 冷え・むくみ・疲労感・イライラが混在している → 漢方を検討
  • ホルモン剤に抵抗がある、既往歴でHRTが使えない → 漢方を検討
  • 婦人科で検査を受ける時間が取りづらい → まず漢方から始める方法もある

両者は排他的ではなく、医師の判断のもとで併用されることもあります。

効果はいつごろから出ますか

漢方薬は即効性を期待する薬ではありません。体質に働きかける処方の場合、1〜3か月の継続服用で判断するのが一般的です。

服用開始から2〜4週間で「以前より波が小さくなった」と感じる方もいますが、変化がはっきりするのは2〜3か月目というケースが多くみられます。1か月で効果を感じられない場合でも、すぐに「効かない」と判断せず、医師に経過を伝えて処方の見直しを相談してください。漢方薬は体質(証)に合っているかどうかで効果が大きく変わるため、合う薬に出会うまでに2〜3種類を試すことも珍しくありません

用法は製剤によりますが、医療用漢方エキス製剤は一般に1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に服用します。実際の用量は年齢・体重・症状により医師が調整します。

漢方薬の副作用|「天然だから安全」ではありません

漢方薬にも副作用があります。とくに甘草(かんぞう)を含む処方を長期に服用する場合は注意が必要です。以下の症状に気づいた場合は、服用を続けずに医師に相談してください。

副作用主な症状気づくためのポイント
偽アルドステロン症低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加甘草を含む処方で起こりうる。むくみと体重増加が続いたら受診
ミオパチー脱力感、四肢のけいれん・麻痺低カリウム血症に伴って起こる。力が入りにくいと感じたら受診
肝機能障害・黄疸だるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる血液検査で発見されることが多い
間質性肺炎空咳、息切れ、発熱加味逍遙散などで報告あり。急な息切れは至急受診
腸間膜静脈硬化症繰り返す腹痛・下痢・便秘長期投与で報告あり。症状が続く場合は中止して受診
消化器症状胃もたれ、食欲不振、下痢胃腸が弱い方に出やすい。食後服用への変更で改善することもある

複数の医療機関から漢方薬を処方されている場合、甘草(カンゾウ)が重複して総量が増えることがあります。服用中の薬はすべて医師に伝えてください。

市販の漢方薬との違い

ドラッグストアでも更年期向けの漢方薬は購入できますが、医療機関で処方されるものとはいくつかの点で異なります。

比較軸医療用漢方エキス製剤市販の漢方薬(一般用漢方製剤)
保険適用適用あり(自己負担3割)適用なし(全額自己負担)
生薬の配合量添付文書に基づく規定量製品により医療用より少ない場合がある
薬の選択医師が体質・症状・併用薬から判断自分で選ぶ
副作用のフォロー定期受診で経過を確認できる自己管理
他疾患の除外甲状腺疾患・貧血などの鑑別を並行できる行われない

市販薬を試すこと自体は選択肢のひとつですが、「合う薬を選ぶ」「他の病気を見落とさない」という2点では医療機関に利があります。市販薬を1〜2か月試して変化がない場合は、医師への相談をご検討ください。市販薬の選び方は 更年期の市販薬 で解説しています。

こんな状態が続いていませんか【セルフチェック】

以下の項目に2つ以上当てはまる場合は、一度医師に相談することをご検討ください。

□ ほてり・のぼせ・発汗が週に何度もあり、人前で困ることがある
□ イライラや不安が続き、家族に強く当たってしまうことがある
□ 冷えとのぼせが同時にあり、体温調節がうまくいかない
□ 疲れやすく、以前できていた家事や仕事がこなせない
□ 頭痛・めまい・肩こりが慢性的に続いている
□ ホルモン剤には抵抗があり、別の選択肢を知りたい
□ 市販の漢方やサプリメントを試したが、変化を感じられなかった

2つ以上当てはまる方は、症状の程度にかかわらず相談する価値があります。漢方薬は体質に合わせて選ぶ必要があるため、「どの漢方が自分に合うか」を医師に相談することが最初のステップになります。

更年期障害かも?まずは漢方から試してみたいという方は、「おうち病院 オンライン診療」という選択肢

「婦人科に行く時間が取れない」「まず漢方から試してみたい」——そうした方は、オンライン診療から始める方法があります。

おうち病院では、スマートフォン・PCから保険適用で内科の診察を受けられます。更年期症状に対しては、加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸などの漢方薬を保険診療で処方しています。漢方薬の処方にあたって、事前の検査資料は必要ありません。

おうち病院の特徴

✅ 自宅から受診できる

診察室に行かずにスマートフォン・PCから問診・診察が完了します。月経前後・月経中症状の悩みを対面で話すことへの心理的なハードルも軽減できます。

時間通りに診察が始まる

予約した時間に診察が開始するため、仕事の合間にも受診を計画的に組み込むことができます。
・平日・土日祝日も朝8時〜夜22時まで診察可能

✅ 女性医師が丁寧に診察

おうち病院では診察時間を15分確保しています。医師は事前に問診票を読み込んで診察に臨むため、「自分の体質や症状に合った漢方薬を探したい」「薬に頼りすぎずに更年期症状を和らげたい」といった具体的な悩みを落ち着いて相談できます。

受診場所と薬の受け取り場所を分けられる

受診はスマートフォン・PCから自宅や外出先で行い、処方薬は自分が指定した薬局で受け取れます。
・処方せんは全国8,200店舗の薬局から選択し自動送信され、受け取り可能
・自宅配送「おくすりおうち便」を利用すれば、薬局に行く手間なし

受診費用の目安(保険適用)

費用項目金額
診察料(保険適用・初診)1,000〜1,200円
システム利用手数料1,100円
合計目安約1,900〜2,400円
※自宅への配送をご希望の場合は追加900円にて「おくすりおうち便」をご利用いただけます。
※薬代は別途。薬局での自己負担額は薬剤・保険の種類により異なります。

おうち病院 オンライン診療への受診の流れ

  1. おうち病院のトップページから内科を選択し受診予約
  2. 事前問診票に回答(症状の内容と程度・冷えやほてりの有無・月経の状況・体力や体質・現在服用中の薬・試した市販品など)
  3. ビデオ通話で医師と診察(約15分・クイックな対応の場合には5分程度で完了)
  4. 処方薬を薬局に受け取りに行く、または自宅に配送してもらう
  5. 経過を見ながら調整 — 漢方薬は1〜3か月の継続で判断するため、定期的に経過を確認します

対面受診をおすすめする場合

以下に当てはまる場合は、対面での受診をご検討ください。オンライン診察の中で医師が対面受診の必要性を判断した場合も、あらためてご案内します。

  • 不正出血がある、月経量が急に増えたなど、婦人科での検査が必要な場合
  • ホルモン補充療法(HRT)を希望する場合
  • 甲状腺疾患や貧血が疑われ、血液検査が必要な場合
  • 漢方薬を2〜3種類試しても改善がみられない場合

受診先の全体像は 更年期は何科に行けばいい?症状タイプ別・診療科の早見表 で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 更年期障害に漢方は保険適用されますか?

A.されます。医療機関で処方される医療用漢方エキス製剤は健康保険の適用対象で、更年期障害の診断があれば自己負担3割で処方されます。加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・温経湯は、いずれも効能・効果に「更年期障害」が明記されています。一方、ドラッグストアで購入する一般用漢方製剤は保険適用外です。

Q. 更年期にいちばん効く漢方はどれですか?

A.すべての方に共通して適した漢方薬というものはありません。漢方薬は体質(証)に合わせて選ぶため、同じ「ほてり」でも、体力があり赤ら顔の方には桂枝茯苓丸、疲れやすく便秘傾向の方には加味逍遙散、手足のほてりと乾燥が目立つ方には温経湯というように、適した薬が変わります。自己判断で選ぶより、医師に症状と体質を伝えて処方してもらうことをおすすめします。

Q. 漢方の効果はどのくらいで出ますか?

A.体質に働きかける処方の場合、1〜3か月の継続服用で判断するのが一般的です。2〜4週間で「気分の波が小さくなった」と感じる方もいますが、変化がはっきりするのは2〜3か月目というケースが多くみられます。1か月で効果を感じられない場合でも自己判断で中止せず、医師に経過を伝えて処方の見直しを相談してください。

Q. 漢方とホルモン補充療法(HRT)はどちらがいいですか?

A.体質・希望・併存する病気によって選びます。ほてり・発汗が強く他に大きな病気がなければHRTが中心的な選択肢になり、冷え・むくみ・疲労感・イライラが混在している場合や、ホルモン剤に抵抗がある場合、既往歴でHRTが使えない場合には漢方が検討しやすくなります。両者は排他的ではなく、医師の判断のもとで併用されることもあります。

Q. 漢方薬に副作用はありますか?

A.あります。「天然だから安全」という認識は誤りです。甘草を含む処方では偽アルドステロン症(低カリウム血症・血圧上昇・むくみ・体重増加)やミオパチー(脱力感・四肢のけいれん)が、そのほか肝機能障害・黄疸、間質性肺炎、長期投与での腸間膜静脈硬化症が報告されています。むくみや体重増加が続く、空咳や息切れが出る、腹痛や下痢を繰り返すといった場合は、服用を続けずに医師にご相談ください。

Q. 複数の漢方薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?

A.医師の判断のもとで併用されることはありますが、自己判断での併用は避けてください。理由は甘草の重複です。複数の漢方薬に甘草が含まれていると総量が増え、偽アルドステロン症のリスクが高まります。別の医療機関で処方された漢方薬や、市販の漢方薬を服用している場合は、必ずすべて医師に伝えてください。

Q. 市販の命の母などと、処方される漢方はどう違いますか?

A.主な違いは3点です。第一に保険適用の有無で、医療用は自己負担3割、市販薬は全額自己負担です。第二に生薬の配合量で、市販薬は医療用より少ない場合があります。第三に薬の選び方で、医療用は医師が体質・症状・併用薬を踏まえて選びます。加えて、医療機関では甲状腺疾患や貧血といった紛らわしい病気の鑑別を並行できる点も違いです。

Q. オンライン診療でも漢方を処方してもらえますか?

A.処方できます。おうち病院ではスマートフォン・PCから保険診療で漢方薬の処方を受けられます。ビデオ通話で医師が症状・体質を確認し、適した漢方薬を選びます。漢方薬の処方にあたって事前の検査資料は必要ありません。処方箋は全国8,200店舗以上の連携薬局で受け取れるほか、自宅配送(おくすりおうち便・追加900円)にも対応しています。

おうち病院の特化型外来

診療科目

その他一般科として、内科、小児科、皮膚科、循環器内科を受診いただくことが可能です。

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