「布団に入ると、仕事や人間関係のことが頭から離れず、イライラして眠れない」——不安やストレスと眠れなさが重なると、夜の時間がとても長く感じられます。結論からお伝えすると、不安やイライラを伴う不眠では、眠れないタイプと一緒に出ている症状に合わせて、漢方薬が選択肢の一つになることがあります。ただし、気分の落ち込みが続く場合は、うつ病など別の病気が隠れていることもあるため、漢方薬だけで様子を見続けないことが大切です。本ページでは、眠れないタイプ別の考え方、使われることがある漢方薬、受診を考えたいサインをご案内します。
この記事の要点
- 不安・イライラ・ストレスがあると、脳と体が緊張した状態(過覚醒)が続き、寝つけない・夜中に目が覚める・眠りが浅いといった不眠につながることがあります。
- 不安やイライラを伴う不眠では、抑肝散・柴胡加竜骨牡蛎湯・加味帰脾湯・酸棗仁湯・半夏厚朴湯などが、一緒に出ている症状に合わせて使われることがあります。
- 漢方薬の効果には個人差があり、不眠に対する効果は質の高い研究で十分に確かめられているとはいえません。
- 気分の落ち込みや興味の低下が2週間以上続く、朝早く目が覚めてしまうといった場合は、うつ病などが隠れていることがあり、医師への相談が勧められます。
- 寝る時間・起きる時間をそろえる、寝床で考えごとをしないなど、自宅での睡眠習慣の見直しも大切です(厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。
目次
不安・イライラと不眠はつながっている
不安やイライラと不眠は、互いに影響し合う関係にあります。強いストレスや心配ごとがあると、心と体が緊張した状態(過覚醒)が続き、布団に入っても眠りに切り替わりにくくなります。そして眠れない夜が続くと、日中の疲れや「今夜も眠れないのでは」という不安が強まり、さらに眠りにくくなるという悪循環に入りやすくなります。
この悪循環を断つには、眠れないことだけでなく、その背景にある不安やイライラにも目を向けることが役立ちます。漢方薬は、不眠と一緒に出ている気分や体の症状に合わせて選ぶ薬のため、こうしたタイプの不眠で検討されることがあります。一方で、不安が強い場合には、睡眠薬や抗不安薬、認知行動療法など、ほかの治療が合うこともあります。
眠れないタイプ別の早見表
同じ「眠れない」でも、どの時間帯に困っているかによって、考えられる背景や相談するときのポイントが変わります。ご自身に近い行をご覧ください。
| 眠れないタイプ | どんな状態か | 不安・イライラとの関係で考えられること |
|---|---|---|
| 寝つけない(入眠困難) | 布団に入ってから眠るまでに30分〜1時間以上かかる | 考えごと・緊張・イライラで頭がさえてしまう |
| 夜中に目が覚める(中途覚醒) | 夜中に何度も目が覚め、そのあと眠りにくい | 心配ごとで眠りが浅くなる、動悸・ほてりで目が覚める |
| 朝早く目が覚める(早朝覚醒) | 予定より2時間以上早く目が覚め、もう眠れない | 気分の落ち込みと関係することがある。続く場合は受診を |
| 眠りが浅い(熟眠障害) | 時間は眠っているのに、ぐっすり眠った感じがしない | 疲れや緊張が抜けない、夢が多い |
いくつかのタイプが重なっていることも珍しくありません。医師に相談するときは、どのタイプに近いか、それがどのくらいの頻度で、いつから続いているかを伝えると、治療を選ぶ手がかりになります。朝早く目が覚める状態が続き、気分の落ち込みもある場合は、次の節の「受診を考えたいサイン」もあわせてご確認ください。
一緒に出ている症状から見た、漢方薬の使い分けの例
不安やイライラを伴う不眠で使われることがある漢方薬を、一緒に出ている症状ごとに整理しました。これはご自身で薬を選ぶための表ではなく、医師に相談するときに「こういう考え方で選ばれている」と知っておくための参考です。
| 一緒に出ている症状 | 使われることがある処方 | 添付文書の効能・効果(要約) |
|---|---|---|
| イライラ・怒りっぽい・緊張して眠れない | 抑肝散(よくかんさん) | 体質が虚弱で神経がたかぶるものの、神経症・不眠症など |
| 不安・動悸があって眠れない | 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | 動悸・不眠・いらだちなどの精神症状を伴う諸症(書き方は製品によって異なる) |
| 疲れやすく、不安や気がかりで眠れない | 加味帰脾湯(かみきひとう) | 体質が虚弱で血色の悪い人の、貧血・不眠症・精神不安・神経症 |
| 心身が疲れているのに眠れない | 酸棗仁湯(さんそうにんとう) | 心身が疲れ弱って眠れないもの |
| 気分がふさぎ、のどにつかえ感がある | 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) | 気分がふさいで、のど・食道に異物感がある方の、不安神経症・不眠症など |
同じ症状でも、体力や胃腸の強さ、冷えやほてりなどの体質によって、選ばれる処方が変わることがあります。また、抑肝散・加味帰脾湯・酸棗仁湯には甘草が含まれており、複数を一緒に飲むと偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇など)が起こりやすくなります。なお、不眠に対する漢方薬の効果は、海外の系統的レビューで「質の高い試験が少なく、効果を支持するには証拠が不十分」とされており、効果には個人差があることを前提にご検討ください。漢方の選び方の考え方は「不眠の漢方はどう選ぶ?「証」の考え方とオンライン診療での相談」で解説しています。
うつ病・不安症が隠れていることもある——受診を考えたいサイン
不安やイライラを伴う不眠の中には、うつ病や不安症(不安障害)、適応障害などが背景にあるものもあります。その場合は、不眠だけでなく、心の病気への治療が必要になります。次のようなサインがある場合は、漢方薬や市販薬で様子を見続けず、医師に相談してください。
- 気分の落ち込み、何をしても楽しめない状態が2週間以上続いている
- 朝早く目が覚めて、そのまま眠れない日が続く
- 食欲が落ちた、体重が減った
- 仕事や家事に手がつかない、集中できない
- 強い不安や動悸、息苦しさが突然起こることがある
- お酒を飲まないと眠れない、飲む量が増えている
- 死にたい気持ちがある、消えてしまいたいと思う
最後の項目に当てはまる場合は、すぐに身近な人や相談窓口に伝えてください。命の危険が差し迫っているときは119番に連絡してください。うつ病と不眠の関係は「うつ病と不眠の解説」でも解説しています。受診先は、精神科・心療内科が目安です。
自宅でできること
不安やイライラで眠れないときは、薬に加えて、睡眠の習慣を整えることも役立ちます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保すること、朝目覚めたときの「休養がとれた感覚(睡眠休養感)」を大切にすることを勧めています。次のような工夫から、できそうなものを試してみてください。
| やりがちなこと | なぜ眠りに影響するか | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 眠れないまま布団の中で考えごとを続ける | 「布団=考えごとをする場所」と体が覚えてしまう | 15〜20分ほど眠れなければ一度布団を出て、眠くなってから戻る |
| 寝る直前までスマートフォンで調べものをする | 光と情報で頭がさえてしまう | 寝る1時間前からは画面を見る時間を減らす |
| 眠れない分を朝寝坊や昼寝で取り戻す | 体内時計がずれ、夜にさらに眠りにくくなる | 起きる時間をそろえ、朝に日光を浴びる |
| お酒で眠ろうとする | 寝つきはよくても、夜中に目が覚めやすくなる | 寝酒を控え、ぬるめのお風呂やストレッチで緊張をほぐす |
| 夕方以降にコーヒー・お茶・エナジードリンクを飲む | カフェインで目がさえる | 夕方以降はカフェインを控える |
こんな状態が続いていませんか【セルフチェック】
不安やイライラによる不眠は、「気の持ちよう」と我慢してしまいがちです。当てはまる項目を数えてみてください。
□ 布団に入ると、考えごとや心配ごとが止まらない
□ イライラや緊張で、寝つくまでに30分以上かかる日が多い
□ 夜中に目が覚めると、そのあと眠れない
□ 眠れない状態が週3回以上、1か月以上続いている
□ 日中もイライラしやすい、疲れが抜けない
□ 眠るためにお酒や市販薬に頼ることが増えた
□ 眠れないことを、まだ一度も医師に相談したことがない
2つ以上当てはまる場合は、一度医師にご相談ください。眠れないタイプと一緒に出ている症状を整理することで、漢方薬・睡眠薬・生活習慣の見直しのどれが合うかを一緒に考えられます。なお、気分の落ち込みが2週間以上続いている、死にたい気持ちがあるといった場合は、当てはまる数にかかわらず、すぐに医師や相談窓口に相談してください。
「不安やイライラまで相談していいのか迷う」という方にも、、「おうち病院 オンライン不眠症外来」という選択肢
不安やイライラを伴う不眠は、「病院に行くほどではない」と思って相談が遅れがちです。オンライン診療では、医師がビデオ通話で眠れないタイプや一緒に出ている症状を伺い、漢方薬・睡眠薬を含めて保険診療で処方を検討します。一方で、心の病気が疑われる場合や、専門的な治療が必要な場合は、精神科・心療内科での対面の診療が適しています。ここでは、おうち病院のオンライン診療でできることと、対面受診をお願いするケースをご案内します。
おうち病院の特徴
おうち病院の不眠症外来では、スマートフォンのビデオ通話で医師が問診し、必要に応じて保険診療で薬を処方します。おうち病院 不眠症外来の特徴は、次のとおりです。
✅ 自宅から受診できる
病院に足を運ばず、自宅から、スマートフォンやパソコンで受診でき、待合室で待つ必要はありません。
✅予約制で時間通りに診察が始まる
予約した時間に診察が開始するため、仕事の合間にも受診を計画的に組み込めます。
・平日・土日祝日も朝8時〜夜22時まで診察可能
✅ 女性医師が15分かけて丁寧に診察
おうち病院では診察時間を15分確保しています。医師は事前に問診票を読み込んで診察に臨むため、「処方睡眠薬それぞれの効果の違い」「自分に合う漢方薬の提案」「どの処方薬が合っているか」なども落ち着いて確認できます。
✅受診場所と薬の受け取り場所を分けられる
受診はスマートフォン・PCから自宅や外出先で行い、処方薬は自分が指定した薬局で受け取れます。
・処方せんは自動送信され、全国8,200店舗の薬局で受け取り可能
・自宅配送「おくすりおうち便」を利用すれば、薬局に行く手間なし
〔おうち病院の処方方針 -複数症状を抱える場合は漢方との併用処方も-〕
また、不眠に加えて、イライラ・不安・疲れやすさ・ほてりなど、ほかの症状もいくつか抱えている方には、体質や症状に合わせた漢方薬の処方もご提案しています。漢方薬は、睡眠薬と組み合わせて使うこともできます。主に次の漢方薬の中から、医師が診察のうえで選びます。(抑肝散(よくかんさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など)
〔おうち病院の処方方針 -依存性の低い薬剤を中心とした処方-〕
おうち病院では、患者さんの安全を考慮し、依存性の高いベンゾジアゼピン系睡眠薬(ユーロジン、ドラール、ハルシオンなど)の処方は原則行わない方針をとっています。代わりに、クービビック(ダリドレキサント)、ボルズィ(ボルノレキサント)、ロゼレム(ラメルテオン)やデエビゴ(レンボレキサント)など、依存性の低い薬剤を中心に処方しています。
受診の流れ:
- おうち病院の不眠症外来ページから予約
- 事前問診票に回答(不眠の状況・睡眠パターン・生活習慣・現在の薬・日常への影響・試した市販品など)
- ビデオ通話で医師と診察(約15分・クイックな対応の場合には5分程度で完了)
- 処方薬を薬局に受け取りに行く、または自宅に配送してもらう
- 定期フォロー — 月1回以上の診察で経過確認・薬の調整
⚠ オンライン診療ではなく、対面での受診をお願いするケース
次のような場合は、検査や専門的な治療が必要になることがあるため、対面での受診をご案内しています。
- 複数の睡眠薬・抗不安薬を長く飲んでいて、量の調整に専門的な管理が必要
- 睡眠薬を飲んだあとに記憶のない行動をした、強いふらつきで転んだ
- 大きないびきや、睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
- 気分の落ち込みが強い、死にたい気持ちがある
- お酒と一緒でないと眠れない
これらに当てはまる場合の受診先は、処方を受けている医療機関、睡眠外来、精神科・心療内科が目安です。死にたい気持ちが強いときや、自分を傷つけてしまいそうなときは、命の危険が差し迫っていれば119番に連絡し、それ以外のときは身近な人や相談窓口(厚生労働省「まもろうよ こころ」)に連絡してください。
受診費用の目安(保険適用)
不眠の診察は保険診療の対象です。費用は、保険診療の自己負担と、保険が適用されない診療手数料に分かれます。3割負担の場合の目安は次のとおりで、薬代は別にかかります。
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 診察料(保険適用・初診) | 1,000〜1,200円 |
| システム利用手数料 | 1,100円 |
| 合計目安 | 約1,900〜2,400円 |
※薬代は別途。薬局での自己負担額は薬剤・保険の種類により異なります。
あわせてお読みください
不眠と漢方の記事は、知りたいことに合わせていくつかに分かれています。ご自身の状況に近いものからお読みください。
- 不眠と漢方の全体像を知りたい方へ → 不眠症に漢方薬は使える?睡眠薬との違いと代表的な処方
- 睡眠薬の副作用が心配な方へ → 睡眠薬の副作用が心配な方へ|漢方薬との併用・切り替えの考え方
- 生理前・更年期に眠れない方へ → 生理前・更年期に眠れない女性へ|不眠と漢方薬の考え方
- 漢方の選び方を知りたい方へ → 不眠の漢方はどう選ぶ?「証」の考え方とオンライン診療での相談
- 気分の落ち込みと不眠が気になる方へ → うつ病と不眠の解説
よくある質問(FAQ)
Q. 睡眠薬と漢方薬は併用できますか?
A. 医師の判断で一緒に処方されることがあります。睡眠薬で眠りを確保しながら、漢方薬で不安やイライラなど一緒に出ている症状を整える使い方です。自己判断で組み合わせず、飲んでいる薬をすべて医師・薬剤師に伝えてください。
Q. 依存性のない睡眠薬はありますか?
A. まったく心配のない睡眠薬はありません。ただし、依存や急にやめたときの反跳性不眠への注意の度合いは種類によって異なります。不安がある場合は、医師と相談して種類の見直しを検討できます。
Q. 睡眠薬の代わりに漢方薬を飲めば、睡眠薬をやめられますか?
A. 不眠の原因や一緒に出ている症状によっては、漢方薬を加えながら睡眠薬を減らせる場合があります。ただし、誰でも置き換えられるわけではなく、効果がはっきり確かめられた方法でもありません。医師と相談しながら段階的に進めてください。
Q. 睡眠薬を急にやめるとどうなりますか?
A. 薬の種類によっては、前より眠れなくなる反跳性不眠や、不安・焦燥などの離脱症状が出ることがあります。自己判断でやめず、医師と相談して少しずつ減らしてください。
Q. 漢方薬なら飲み合わせを気にしなくていいですか?
A. いいえ。甘草を含む漢方薬を複数飲むと偽アルドステロン症が起こりやすくなるなど、注意が必要な組み合わせがあります。市販薬やサプリメントも含めて、飲んでいるものはすべて医師・薬剤師に伝えてください。
Q. 睡眠薬の副作用が気になるとき、どこに相談すればいいですか?
A. まずは睡眠薬を処方した医師に相談してください。かかりつけで相談しにくい場合は、不眠症外来・精神科・心療内科・内科などで相談でき、オンライン診療を使う方法もあります。
Q. オンライン診療で睡眠薬の見直しを相談できますか?
A. 飲んでいる薬や症状を伺い、見直しや漢方薬の併用を相談できます。初診のオンライン診療では向精神薬に指定された睡眠薬は処方できないなどの決まりがあり、状況によっては対面での受診をご案内します。
参考文献・出典
この記事は、次の資料をもとに作成しています。医療情報は改訂されることがあるため、最新の内容は各資料でご確認ください。
- 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ 編「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン 2013年」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- Yeung WF, et al. Chinese herbal medicine for insomnia: a systematic review of randomized controlled trials. Sleep Medicine Reviews. 2012;16(6):497-507.
- Leach MJ, Page AT. Herbal medicine for insomnia: a systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2015;24:1-12.
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」令和4年2月改定
- 厚生労働省「オンライン診療について 国民・患者の皆様へ」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
