生理前・更年期に眠れない女性へ|不眠と漢方薬の考え方

「生理前になると、なぜか寝つけない」「40代後半から、夜中に汗をかいて目が覚めるようになった」——女性の不眠には、月経周期や更年期など、体の変化と重なって起こるものがあります。結論からお伝えすると、生理前や更年期の不眠には女性ホルモンの変化が関係していることがあり、漢方薬は、その時期の不調に合わせて選ばれる選択肢の一つです。ただし、更年期のほてりが強い場合のホルモン補充療法など、ほかの治療が合うこともあります。本ページでは、時期ごとの不眠の特徴、使われることがある漢方薬、ほかの選択肢、飲み合わせの注意をご案内します。

この記事の要点

  • 日本産科婦人科学会は、月経前症候群(PMS)のこころの症状として「不眠・眠気」を、更年期障害の症状として「眠れない」を挙げています。
  • PMSの治療では、加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・抑肝散などの漢方薬、低用量ピル、SSRI(抗うつ薬の一種)が選択肢として紹介されています。
  • 更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬(当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸など)、睡眠薬などの向精神薬があり、症状に合わせて選びます。
  • 漢方薬にも副作用や飲み合わせの注意があり、ピル・ホルモン治療中、妊娠中・授乳中の方は、必ず医師・薬剤師に伝えてから使ってください。
  • 生理前の不眠は月経が始まると軽くなるのが特徴です。月経周期と関係なく眠れない状態が続く場合は、ほかの原因も含めて医師に相談してください。

不安・イライラと不眠はつながっている

不安やイライラと不眠は、互いに影響し合う関係にあります。強いストレスや心配ごとがあると、心と体が緊張した状態(過覚醒)が続き、布団に入っても眠りに切り替わりにくくなります。そして眠れない夜が続くと、日中の疲れや「今夜も眠れないのでは」という不安が強まり、さらに眠りにくくなるという悪循環に入りやすくなります。

この悪循環を断つには、眠れないことだけでなく、その背景にある不安やイライラにも目を向けることが役立ちます。漢方薬は、不眠と一緒に出ている気分や体の症状に合わせて選ぶ薬のため、こうしたタイプの不眠で検討されることがあります。一方で、不安が強い場合には、睡眠薬や抗不安薬、認知行動療法など、ほかの治療が合うこともあります。

女性の不眠は、月経周期や更年期と関係することがある

女性の体は、月経周期や年齢によって女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の量が大きく変わり、それが眠りにも影響することがあります。月経前は、体温が高めになることや、気分の変化が重なって寝つきが悪くなったり、逆に日中に強い眠気が出たりします。更年期は、ほてりや寝汗で夜中に目が覚める、気分の落ち込みやイライラで眠れないといった形で現れることがあります。

時期ごとの特徴を表にまとめました。ご自身に近い時期をご覧ください。

時期眠りに出やすい変化一緒に出やすい症状
月経前(PMS)寝つけない、眠りが浅い、または日中に強い眠気イライラ、気分の落ち込み、むくみ、乳房の張り、頭痛
産後・授乳期授乳や夜泣きで細切れの睡眠になる疲れ、気分の落ち込み(産後うつに注意)
更年期(閉経前後の約10年間)夜中に目が覚める、寝汗やほてりで眠れないほてり・のぼせ・発汗、動悸、イライラ、気分の落ち込み

日本産科婦人科学会は、閉経をはさんだ前後5年ずつ、あわせて10年間を「更年期」としており、日本人の平均的な閉経年齢は50歳前後です。生理前の不眠は月経が始まると軽くなるのが特徴で、月経周期に関係なく眠れない状態が続く場合は、別の原因も考える必要があります。

生理前(PMS)に眠れないとき

生理前に眠れない、または日中に眠くてたまらないといった症状は、月経前症候群(PMS)の一つとして現れることがあります。日本産科婦人科学会は、PMSのこころの症状として「不眠・眠気(睡眠障害)」を挙げ、治療の選択肢として漢方薬、低用量ピル、SSRIを紹介しています。症状の重さや、避妊の希望、ほかの症状との組み合わせによって、合う治療が変わります。

PMSで紹介されている漢方薬には、加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・抑肝散があります。このうち、効能・効果に不眠症を含むのは抑肝散で、イライラや緊張が強く眠れない場合に使われることがあります。加味逍遙散は、精神不安や肩こり・疲れやすさを伴う月経の不調の治療として使われる薬です。生理前の不調に使われる漢方薬の全体像は「月経困難症・PMSの漢方の解説」で詳しく解説しています。

更年期に眠れないとき

更年期の不眠は、ほてりや寝汗で夜中に目が覚めるタイプと、気分の落ち込みやイライラで眠れないタイプが重なっていることがよくあります。日本産科婦人科学会は、更年期障害の治療として、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などの向精神薬を挙げています。どの治療が合うかは、どの症状がいちばんつらいかによって変わります。

いちばんつらい症状主な選択肢相談先の目安
ほてり・のぼせ・寝汗で目が覚めるホルモン補充療法(HRT)、漢方薬婦人科・女性外来
イライラ・不安・気分の変化で眠れない漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬婦人科、心療内科・精神科
眠れないこと自体がいちばんつらい睡眠薬、漢方薬、睡眠習慣の見直し内科・不眠症外来、婦人科
気分の落ち込みが2週間以上続くうつ病の治療心療内科・精神科

更年期障害で使われる代表的な漢方薬として、日本産科婦人科学会は当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸を挙げています。ホルモン補充療法は、日本女性医学学会の「ホルモン補充療法ガイドライン 2025年度版」に沿って、効果と注意点を確かめながら婦人科で行う治療です。更年期の不眠の全体像は「更年期の不眠の解説」、更年期の漢方薬は「更年期の漢方の解説」をご覧ください。

女性の不眠で使われることがある漢方薬の例

女性の不眠で使われることがある漢方薬を、添付文書の効能・効果とあわせて整理しました。添付文書の効能・効果に不眠の記載がある薬を中心にまとめています。

処方名添付文書の効能・効果(要約)効能・効果に不眠の記載女性の不眠で使われることが多い場面
抑肝散(よくかんさん)体質が虚弱で神経がたかぶるものの、神経症・不眠症などあり(不眠症)生理前のイライラ・緊張で眠れない
加味帰脾湯(かみきひとう)体質が虚弱で血色の悪い人の、貧血・不眠症・精神不安・神経症あり(不眠症)疲れやすく、不安で眠れない
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)動悸・不眠・いらだちなどの精神症状を伴う諸症(製品によっては効能に「更年期神経症」を含む)あり(不眠を伴う諸症)更年期の動悸・不安で眠れない
酸棗仁湯(さんそうにんとう)心身が疲れ弱って眠れないものあり(眠れないもの)疲れているのに眠れない、眠りが浅い

なお、PMSや更年期障害で使われる加味逍遙散は、添付文書の効能・効果に「不眠症」はなく、更年期障害や月経不順などの治療薬です。月経や更年期に伴う不調の治療の結果として眠りが変わることはありますが、不眠そのものの治療薬ではありません。同じ処方名でも、製品によって効能・効果の書き方や含まれる生薬が異なることがあります。どの薬が合うかは、月経周期との関係、ほてりや冷え、体力、胃腸の強さなどをもとに医師が判断します。なお、不眠に対する漢方薬の効果は、質の高い研究で十分に確かめられているとはいえず、効果には個人差があります。不眠全般で使われる漢方薬の一覧は「不眠症に漢方薬は使える?睡眠薬との違いと代表的な処方」にまとめています。

ピル・ほかの薬との飲み合わせ

低用量ピルやホルモン治療を受けている方、ほかの病気で薬を飲んでいる方は、漢方薬を始める前に、飲んでいる薬をすべて医師・薬剤師に伝えてください。漢方薬どうしの重複にも注意が必要で、加味逍遙散・抑肝散・加味帰脾湯・酸棗仁湯はいずれも甘草を含むため、組み合わせると甘草の量が増え、偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・手足の力が入りにくい)が起こりやすくなります。

PMSや月経痛に対して、生理前に漢方薬を複数組み合わせているケースもあります。市販の漢方薬を自分で足すと、気づかないうちに甘草が重なることがあるため、お薬手帳や薬の箱を持って相談すると確認がスムーズです。ピルと漢方薬の個別の飲み合わせは、処方を受けた医師・薬剤師にご確認ください。

⚠ 加味帰脾湯・加味逍遙散に含まれる山梔子(さんしし)は、長く(多くは5年以上)飲み続けると、腸の病気(腸間膜静脈硬化症)が起こることがあると報告されています。長く続ける場合は、定期的に医師と見直してください。

妊娠中・授乳中の注意

妊娠中や授乳中に眠れないときも、漢方薬なら安心と自己判断で飲むのは避けてください。漢方薬に含まれる生薬の中には、妊娠中・授乳中に注意が必要なものがあります。たとえば、大黄(だいおう)を含む製品の添付文書には、子宮を収縮させる作用や、成分が母乳に移ることへの注意が書かれています。

妊娠中はかかりつけの産婦人科に、授乳中は処方を受ける医師・薬剤師に、必ず妊娠・授乳中であることを伝えてください。産後の不眠に気分の落ち込みが重なる場合は、産後うつの可能性もあるため、早めに相談することが大切です。

こんな状態が続いていませんか【セルフチェック】

女性の不眠は、「この時期だから仕方ない」と我慢されがちです。当てはまる項目を数えてみてください。

□ 生理前の1〜2週間になると、寝つけない・眠りが浅い
□ 生理前の眠れなさやイライラで、仕事や家事に影響が出ている
□ ほてりや寝汗で、夜中に目が覚めることが週3回以上ある
□ 40代以降、眠れない日が増えた
□ 眠れないことに加えて、イライラや気分の落ち込みがある
□ 市販の漢方薬やサプリを試したが、あまり変わらない
□ 眠れないことを、まだ一度も医師に相談したことがない

2つ以上当てはまる場合は、一度医師にご相談ください。月経周期や更年期との関係を整理することで、漢方薬・ホルモン治療・睡眠薬などのどれが合うかを一緒に考えられます。なお、気分の落ち込みが2週間以上続いている、不正出血があるといった場合は、当てはまる数にかかわらず受診をご検討ください。

「生理前や更年期の眠れなさを相談したい」という方にも、「おうち病院 オンライン不眠症外来」という選択肢

生理前や更年期の不眠は、「時期的なもの」と思って相談のタイミングを逃しやすい悩みです。オンライン診療では、医師がビデオ通話で月経周期との関係や一緒に出ている症状を伺い、漢方薬・睡眠薬を含めて保険診療で処方を検討します。一方で、内診や血液検査、ホルモン補充療法の開始など、対面での診療が必要な場合もあります。ここでは、おうち病院のオンライン診療でできることと、対面受診をお願いするケースをご案内します。

おうち病院の特徴

おうち病院の不眠症外来では、スマートフォンのビデオ通話で医師が問診し、必要に応じて保険診療で薬を処方します。おうち病院 不眠症外来の特徴は、次のとおりです。

✅ 自宅から受診できる

病院に足を運ばず、自宅から、スマートフォンやパソコンで受診でき、待合室で待つ必要はありません。

✅予約制で時間通りに診察が始まる

予約した時間に診察が開始するため、仕事の合間にも受診を計画的に組み込めます。
・平日・土日祝日も朝8時〜夜22時まで診察可能

✅ 女性医師が15分かけて丁寧に診察

おうち病院では診察時間を15分確保しています。医師は事前に問診票を読み込んで診察に臨むため、「処方睡眠薬それぞれの効果の違い」「自分に合う漢方薬の提案」「どの処方薬が合っているか」なども落ち着いて確認できます。

✅受診場所と薬の受け取り場所を分けられる

受診はスマートフォン・PCから自宅や外出先で行い、処方薬は自分が指定した薬局で受け取れます。
・処方せんは自動送信され、全国8,200店舗の薬局で受け取り可能
・自宅配送「おくすりおうち便」を利用すれば、薬局に行く手間なし

〔おうち病院の処方方針 -複数症状を抱える場合は漢方との併用処方も-〕

また、不眠に加えて、イライラ・不安・疲れやすさ・ほてりなど、ほかの症状もいくつか抱えている方には、体質や症状に合わせた漢方薬の処方もご提案しています。漢方薬は、睡眠薬と組み合わせて使うこともできます。主に次の漢方薬の中から、医師が診察のうえで選びます。(抑肝散(よくかんさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など)

〔おうち病院の処方方針 -依存性の低い薬剤を中心とした処方-〕

おうち病院では、患者さんの安全を考慮し、依存性の高いベンゾジアゼピン系睡眠薬(ユーロジン、ドラール、ハルシオンなど)の処方は原則行わない方針をとっています。代わりに、クービビック(ダリドレキサント)、ボルズィ(ボルノレキサント)、ロゼレム(ラメルテオン)やデエビゴ(レンボレキサント)など、依存性の低い薬剤を中心に処方しています。

眠れないことに加えて、月経や更年期の症状そのものも相談したい場合は、専門の外来を使う方法もあります。PMSや月経痛そのものの相談は月経困難症・PMS外来、更年期の症状全般の相談は総合内科でも受け付けています。

受診の流れ:

  1. おうち病院の不眠症外来ページから予約
  2. 事前問診票に回答(不眠の状況・睡眠パターン・生活習慣・現在の薬・日常への影響・試した市販品など)
  3. ビデオ通話で医師と診察(約15分・クイックな対応の場合には5分程度で完了)
  4. 処方薬を薬局に受け取りに行く、または自宅に配送してもらう
  5. 定期フォロー — 月1回以上の診察で経過確認・薬の調整

⚠ オンライン診療ではなく、対面での受診をお願いするケース

次のような場合は、内診や検査が必要になることがあるため、対面での受診をご案内しています。

  • 不正出血がある、月経の量や周期が急に変わった
  • ほてりや動悸が強く、甲状腺の病気など別の原因を調べる必要がある
  • ホルモン補充療法を始めたい・見直したい
  • 妊娠中、または妊娠の可能性がある
  • 気分の落ち込みが強い、死にたい気持ちがある

これらに当てはまる場合の受診先は、婦人科・女性外来、内科、心療内科・精神科が目安です。死にたい気持ちが強いときや、自分を傷つけてしまいそうなときは、命の危険が差し迫っていれば119番に連絡し、それ以外のときは身近な人や相談窓口(厚生労働省「まもろうよ こころ」)に連絡してください

[おうち病院 不眠症外来を受診する →]

受診費用の目安(保険適用)

不眠の診察は保険診療の対象です。費用は、保険診療の自己負担と、保険が適用されない診療手数料に分かれます。3割負担の場合の目安は次のとおりで、薬代は別にかかります。

費用項目金額
診察料(保険適用・初診)1,000〜1,200円
システム利用手数料1,100円
合計目安約1,900〜2,400円
※自宅への配送をご希望の場合は追加900円にて「おくすりおうち便」をご利用いただけます。
※薬代は別途。薬局での自己負担額は薬剤・保険の種類により異なります。

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不眠と漢方の記事は、知りたいことに合わせていくつかに分かれています。ご自身の状況に近いものからお読みください。

よくある質問(FAQ)

Q. 更年期で眠れないときに使われる漢方薬はありますか?

A. 更年期障害では、当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸などが代表的な漢方薬として挙げられており、不眠が目立つ場合は抑肝散・加味帰脾湯・柴胡加竜骨牡蛎湯なども検討されることがあります。ほてりが強い場合はホルモン補充療法が合うこともあるため、医師と相談して選んでください。

Q. 生理前に眠れないのはPMSですか?

A. 生理前の1〜2週間に眠れなくなり、月経が始まると軽くなる場合は、PMSの症状の一つの可能性があります。月経周期と関係なく眠れない状態が続く場合は、ほかの原因も考えられるため、医師にご相談ください。

Q. PMSの不眠に、漢方薬以外の治療はありますか?

A. 低用量ピルでホルモンの変動を抑える方法や、SSRI(抗うつ薬の一種)で気分の症状を和らげる方法があります。症状の重さや避妊の希望などによって合う治療が変わるため、医師と相談してください。

Q. ピルを飲んでいても漢方薬を飲めますか?

A. 組み合わせて処方されることもありますが、個別の飲み合わせは医師・薬剤師が確認します。ピルやホルモン治療を受けていることを、必ず伝えてから相談してください。

Q. 授乳中に眠れないとき、漢方薬を飲んでもいいですか?

A. 漢方薬にも、成分が母乳に移ることへの注意が書かれた生薬(大黄など)があります。自己判断で飲まず、授乳中であることを医師・薬剤師に伝えてから相談してください。

Q. 更年期の不眠は何科に相談すればいいですか?

A. ほてりや寝汗など更年期の症状が中心なら婦人科・女性外来、眠れないことがいちばんつらい場合は内科や不眠症外来、気分の落ち込みが強い場合は心療内科・精神科が目安です。迷う場合は、まず婦人科か内科で相談できます。

Q. 生理前や更年期の不眠は、オンライン診療で相談できますか?

A. 月経周期との関係や一緒に出ている症状を伺い、漢方薬・睡眠薬を含めて保険診療で処方を検討できます。不正出血がある場合やホルモン補充療法を始めたい場合など、対面での診療が必要なときはご案内します。

参考文献・出典

この記事は、次の資料をもとに作成しています。医療情報は改訂されることがあるため、最新の内容は各資料でご確認ください。

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診療科目

その他一般科として、小児科、皮膚科、循環器内科を受診いただくことが可能です。

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