産後の尿もれはいつ治る?原因・骨盤底筋トレーニングと受診の目安

くしゃみをした拍子に漏れてしまう、赤ちゃんを抱き上げたときに不安になる——産後にこうした変化を感じても、「そのうち治る」と言われて相談できずにいる方は少なくありません。産後の尿もれは自然に軽くなることが多い一方、放置すると長く続くこともあり、対処の仕方で経過が変わります。本ページでは、産後の尿もれのタイプの見分け方と、骨盤底筋トレーニングでどこまで期待できるか、そして受診を検討すべき時期をご案内します。

この記事で分かること

  • 産後の尿もれの多くは「腹圧性尿失禁」で、咳・くしゃみ・重い物を持つといった腹圧がかかる場面で起こります
  • 骨盤底筋トレーニングは、この腹圧性尿失禁に対して最も根拠のある方法です。コクラン・レビュー(2018年、31試験・1,817人)では、治癒率が対照群の6%に対し56%と報告されています
  • 「急に強い尿意が来て間に合わない」タイプが混ざっている場合は別の対処が必要です。こちらは薬物療法が選択肢になります
  • 産後3〜6か月経っても変化がない場合は、一度ご相談ください。自然経過を待つ期間の目安になります
  • 産後の発熱・排尿時の痛み・血尿がある場合は、様子を見ずに受診してください

産後の尿もれはなぜ起こるのか

産後の尿もれは、妊娠と出産という2つの過程で骨盤底に負担がかかることによって生じます。仕組みを知っておくと、対処の方向が理解しやすくなります。

骨盤底筋は、膀胱・子宮・直腸を下から支えているハンモック状の筋肉群です。妊娠中は子宮が大きくなるにつれて骨盤底に持続的な重みがかかり、出産時にはさらに強い伸展が加わります。この結果、尿道を閉じる力が一時的に弱まり、腹圧がかかった瞬間に尿が漏れやすくなります。

重要なのは、これが「筋肉の状態の変化」であって、避けられない体質の問題ではないという点です。筋肉の機能低下が原因であるため、適切なトレーニングによって回復が期待できます。実際、産後の尿もれは時間の経過とともに軽くなる方が多いことが知られています。

一方で、そのまま長く続く方もいらっしゃいます。妊娠・出産の回数、分娩の経過、体重などが影響すると考えられていますが、個人差が大きいため、経過を見ながら判断していくことになります。

2つのタイプの見分け方

「尿もれ」とひとくくりにされがちですが、産後に起こる尿もれには性質の異なる2つのタイプがあり、対処法が変わります。まずご自身がどちらに近いかを確認してください。

項目腹圧性尿失禁切迫性尿失禁(過活動膀胱)
漏れる場面咳・くしゃみ・笑ったとき、重い物を持ったとき、走ったとき急に強い尿意が来て、トイレまで我慢できないとき
尿意の有無尿意を感じないまま漏れます強い尿意を感じてから漏れます
漏れる量少量のことが多いです量が多くなることがあります
産後に多いか産後に多く見られます産後に限らず起こります
第一選択の対処骨盤底筋トレーニング行動療法と薬物療法
薬の選択肢日本では選択肢が限られます保険適用の内服薬があります

両方が混ざる「混合型」もあります。咳で漏れることもあれば、間に合わずに漏れることもあるという場合は、両方の要素があると考えられます。この場合、骨盤底筋トレーニングを続けながら、切迫性の部分に薬物療法を検討することがあります。

この見分けが実務的に重要なのは、対処の入口がまったく違うからです。腹圧性が中心であれば、まず取り組むべきは骨盤底筋トレーニングです。一方、切迫性の要素が強い場合は、過活動膀胱の薬という選択肢が加わります。

骨盤底筋トレーニングにどこまで期待できるか

「骨盤底筋を鍛えましょう」という助言はよく聞くものの、実際にどの程度期待できるのかは伝わりにくい部分です。数値で確認しておきます。

コクラン・レビュー(2018年10月、女性の尿失禁に対する骨盤底筋トレーニング、31試験・14か国1,817人)では、以下の結果が報告されています。

指標トレーニング群対照群効果の大きさ
腹圧性尿失禁の治癒56%6%リスク比 8.38(95%信頼区間 3.68〜19.07)
腹圧性尿失禁の治癒または改善74%11%リスク比 6.33(95%信頼区間 3.88〜10.33)
24時間あたりの尿漏れ回数1回少ない

腹圧性尿失禁の治癒に関するエビデンスの質は「高い」と評価されており、全体としても「中等度」の質とされています。一方で、切迫性尿失禁や混合型を対象とした研究は限られており、この数値がそのまま当てはまるわけではありません。

この結果が示しているのは、腹圧性尿失禁に対して骨盤底筋トレーニングは根拠のある方法だということです。産後の尿もれの多くが腹圧性であることを考えると、まず取り組む価値が高い方法と言えます。

トレーニングの実際のやり方

効果が期待できる方法である一方、正しく行えていないケースも少なくありません。基本の考え方を整理します。

手順内容
① 筋肉の場所を意識する排尿を途中で止めるときに使う筋肉、おならを我慢するときに締める筋肉が骨盤底筋です。まずこの感覚をつかみます
② ゆっくり締める5秒ほどかけて締め、同じくらいの時間をかけてゆるめます。息を止めないよう注意します
③ 速く締める1秒程度で素早く締めてゆるめる動きも組み合わせます
④ 姿勢を変えて行う仰向け→座位→立位と、慣れるにつれて負荷の高い姿勢に移していきます
⑤ 継続する数日で判断できるものではありません。数週間から数か月の単位で続けることが前提です

よくある誤りは、お腹やお尻、太ももに力が入ってしまうことです。これらの筋肉に力が入ると骨盤底筋は締まりにくくなります。お腹に手を当てて、お腹が硬くならないことを確認しながら行ってください。

排尿を実際に途中で止める練習は、繰り返さないでください。筋肉の場所を確認する目的で一度試すのは構いませんが、習慣的に行うと排尿の仕組みに悪影響が及ぶ可能性があります。

いつまで様子を見てよいのか

産後の尿もれは自然に軽くなることが多いため、「そのうち治る」と言われることがあります。ただし、期限を決めずに待ち続けると、相談の機会を逃してしまいます。

時期目安
産後〜3か月骨盤底筋トレーニングに取り組みながら経過を見る時期です
産後3〜6か月で変化がない一度ご相談ください。トレーニングの方法が合っていない可能性や、切迫性の要素が混ざっている可能性があります
産後1年以上続いている自然経過での改善は期待しにくい段階です。治療の選択肢を含めてご相談ください
発熱・排尿時の痛み・血尿がある時期にかかわらず、すぐに受診してください。尿路感染症などの可能性があります

産後は自分の体のことが後回しになりがちな時期です。尿もれパッドで対処しながら何年も過ごしてしまう方も少なくありませんが、取り組む時期が早いほど、生活への影響が小さいうちに対処できます。

こんな状態が続いていませんか【セルフチェック】

薬物療法を検討する段階かどうかの目安として、以下の項目をご確認ください。

□ 咳・くしゃみ・笑ったときに漏れることがある
□ 子どもを抱き上げるとき、走るときに漏れることがある
□ ★急に強い尿意が来て、トイレまで我慢できないことがある
□ 尿もれパッドや尿とりライナーを日常的に使っている
□ 骨盤底筋トレーニングを試したが、正しくできているか自信がない
□ 産後3か月以上経つが、症状に変化がない
□ 尿もれが心配で、運動や外出を控えている
□ 尿の悩みを誰にも相談できていない

3つ以上当てはまる場合は、一度医師にご相談ください。薬物療法を含めた相談をご検討ください。特に3つ目の★項目(急な尿意)に当てはまる場合は、切迫性の要素が混ざっている可能性があり、骨盤底筋トレーニングだけでは対応しきれないことがあります。

5つ目の項目に当てはまる場合も、ご相談をおすすめします。骨盤底筋トレーニングは方法によって結果が変わるため、やり方の確認だけでも意味があります。

過活動膀胱かも?でも泌尿器科の受診はハードルが高いと悩んでいる方は、「おうち病院 オンライン診療」という選択肢

産後は外出そのものが負担になる時期です。子どもを預けて泌尿器科や婦人科に行くという段取りが、そのまま受診をあきらめる理由になってしまいます。

おうち病院では、オンライン内科で保険適用の診察を受けられます。2026年8月時点で過活動膀胱に特化した外来は開設していませんが、一般内科として症状のご相談に対応しています。

ただし、産後の尿もれについては先にお伝えしておくべき点があります。腹圧性尿失禁が中心の場合、日本では薬物療法の選択肢が限られており、骨盤底筋トレーニングが対処の中心になります。「薬で解決する」という期待には応えにくい領域です。一方で、切迫性の要素が混ざっている場合は薬物療法が選択肢になり、この見極めのためのご相談には対応できます。

おうち病院の特徴

✅ 自宅から受診できる

診察室に行かずにスマートフォン・PCから問診・診察が完了します。月経前後・月経中症状の悩みを対面で話すことへの心理的なハードルも軽減できます。

時間通りに診察が始まる

予約した時間に診察が開始するため、仕事の合間にも受診を計画的に組み込むことができます。
・平日・土日祝日も朝8時〜夜22時まで診察可能

✅ 女性医師が丁寧に診察

診察時間は15分を確保しています。漏れる場面(咳・くしゃみのときか、急な尿意のときか)、出産からの経過、これまで試したことを共有いただくと、タイプの見極めが進みます。

受診場所と薬の受け取り場所を分けられる

受診はスマートフォン・PCから自宅や外出先で行い、処方薬は自分が指定した薬局で受け取れます。
・処方せんは全国8,200店舗の薬局から選択し自動送信され、受け取り可能
・自宅配送「おくすりおうち便」を利用すれば、薬局に行く手間なし

受診費用の目安(保険適用・3割負担の場合)

費用項目金額
診察料(保険適用・初診)1,000〜1,200円
システム利用手数料1,100円
合計目安約1,900〜2,400円
※自宅への配送をご希望の場合は追加900円にて「おくすりおうち便」をご利用いただけます。
※薬代は別途。薬局での自己負担額は薬剤・保険の種類により異なります。

おうち病院 オンライン診療への受診の流れ

  1. おうち病院のトップページから内科を選択し受診予約
  2. 事前問診票に回答(漏れる場面・出産からの経過・分娩の経過・排尿回数・これまで試したこと)
  3. ビデオ通話で医師と診察(約15分・クイックな対応の場合には5分程度で完了)
  4. 処方薬を薬局に受け取りに行く、または自宅に配送してもらう
  5. 経過を見ながら調整 — 漢方薬は1〜3か月の継続で判断するため、定期的に経過を確認します

オンライン診療で対応できないケースについて: 発熱・排尿時痛・血尿がある場合、骨盤臓器脱が疑われる場合(下腹部に何かが下りてくる感じがある場合)は、内診や尿検査が必要なため、婦人科・泌尿器科での対面受診をご案内します。

あわせてお読みください

尿もれのタイプによって、次に読むべき内容が変わります。ご自身の状況に近いものからお読みください。

よくある質問(FAQ)

Q. 産後の尿もれはいつ治りますか?

A.多くの方は時間の経過とともに軽くなりますが、個人差が大きく、一律の目安を示すことは難しいのが実情です。産後3〜6か月経っても変化がない場合は、一度ご相談ください。トレーニングの方法が合っていない可能性や、別のタイプが混ざっている可能性があります。

Q. 骨盤底筋トレーニングはどのくらいで効果が出ますか?

A.数日で判断できるものではありません。数週間から数か月の単位で継続することが前提です。コクラン・レビュー(2018年、31試験・1,817人)では、腹圧性尿失禁の治癒率が対照群6%に対しトレーニング群56%と報告されており、続ける価値のある方法です。

Q. 骨盤底筋トレーニングが正しくできているかわかりません。

A.お腹・お尻・太ももに力が入っていないかをご確認ください。お腹に手を当てて、お腹が硬くならないことを確かめながら行うのが目安です。うまく感覚がつかめない場合は、医師や理学療法士にご相談ください。方法の確認だけでも意味があります。

Q. 産後の尿もれに薬は使えますか?

A.漏れるタイプによって異なります。咳やくしゃみで漏れる腹圧性尿失禁については、日本では薬物療法の選択肢が限られており、骨盤底筋トレーニングが中心になります。一方、急な尿意で漏れる切迫性の要素がある場合は、保険適用の内服薬が選択肢になります。

Q. 授乳中でも尿もれの薬は飲めますか?

A.薬剤によって扱いが異なります。過活動膀胱の治療薬のうちミラベグロンは授乳婦が禁忌とされています。授乳中であることは必ず医師にお伝えください。薬の選択に直結します。

Q. 尿もれパッドを使い続けても大丈夫ですか?

A.生活の質を保つ手段としては有用ですが、原因への対処にはなりません。パッドを使いながら骨盤底筋トレーニングを続け、変化がなければ相談する、という形をおすすめします。パッドの使用が長期化している場合こそ、一度ご相談いただく価値があります。

Q. 産後すぐに骨盤底筋トレーニングを始めてよいですか?

A.一般には産後早期から始められるとされていますが、分娩の経過(会陰の傷の状態、帝王切開の有無など)によって開始時期の判断が変わります。産後健診の際に、担当の医師や助産師にご確認ください。

参考文献・出典

おうち病院の特化型外来

診療科目

その他一般科として、内科、小児科、皮膚科、循環器内科を受診いただくことが可能です。

診療科目(自費)